チョン・グァンフン牧師を育てたファン・ギョアン元代表と保守政党

2020-08-21 09:19:39 | 韓国を知ろう
[ニュース分析]政治と宗教、別れる時が来た
登録:2020-08-22 07:11 修正:2020-08-22 07:22

[土曜版] ピョ・チャンウォンの汝矣島プロファイリング 
(15)政治と宗教の間違った出会い 
 
チョン・グァンフン牧師と手を握った保守勢力 
性的少数者、イスラム、差別禁止法を攻撃目標として扇動 
「共通の利益」のために互いに利用 
 
大型教会の行事に与野党の議員たちが 
大挙参加するのは見慣れた光景に 
政治と宗教の癒着、もう変えねば

      

昨年3月20日、当時の自由韓国党のファン・ギョアン代表(右)がソウル鍾路区の韓国基督教総連合会で開かれた元老らとの面談に参加し、チャン・グァンフン代表会長に挨拶をしている/聯合ニュース

 2020年8月15日は、大韓民国の歴史において最も奇妙かつ不幸な光復節の中の一つとして記録される可能性が高い。チョン・グァンフン牧師という理解するのが難しい人物に代表される一部のプロテスタント勢力と、キム・ムンス氏、ミン・ギョンウク氏、キム・ジンテ氏、チャ・ミョンジン氏などの前職の保守政党の国会議員はもちろん、極右保守団体やユーチューバー、論客が総出動し、全国から貸切バスなどを利用し押し寄せた保守派の市民たちがソウルの光化門(クァンファムン)広場を満杯にし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ウイルスを無差別的に広めたからだ。

 その波紋と後遺症は桁外れだ。大邱(テグ)の新天地、ソウル梨泰院(イテウォン)の集団感染の危機をようやく乗り越え、注意深く日常を探っていた大韓民国が、自らの機能の相当部分を止め、凍りついてしまった。社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンス)の2段階引き上げにより、カラオケやインターネットカフェなどの“ハイリスク群”の業種の営業が禁止され、結婚式を含む全ての50人以上の室内集会も禁止された。各種学校の2学期の登校など学事日程も、支障が生じるのが不可避になった。一部のメディアでは「ドジョウ1匹(チョン・グァンフン牧師)が大韓民国を泥水にした」という批判的表現も使われたりした。

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チョン・グァンフン牧師を育てたファン・ギョアン元代表と保守政党

 実は、チョン・グァンフン牧師という人は、一人ではこのように国を揺るがす影響力や力量、業績、地位などを一つも備えていなかった。むしろ、学歴詐称疑惑や公開の場でのセクハラ、性差別発言などにより、大衆的な嘲弄や戯画化の対象に過ぎなかった。そして2007年の大統領選挙の際に「李明博(イ・ミョンバク)長老に投票しなければ、いのちの書から消す」という発言をして本格的に政治の第一線に飛び込み、政治と宗教を繋ぐ役割を自任していたと見られる。以後、選挙法違反で拘束され有罪判決を受け、韓国基督教総連合会(韓基総)の会長の座を巡る争いで、民事と刑事の裁判を行った

 大韓民国には、政治と権力の力を借りて教勢を拡張しようとする大型教会中心のプロテスタント勢力と、宗教の力と影響力を借りて支持率を高め、選挙に勝利しようとしていた政治勢力があった。チョン・グァンフン牧師は、その間を仲栽し繋げば、大きな利益と影響力が生じるという点を看破したものと見られる。大韓民国の保守政治勢力は、1948年の政府樹立以後、長期間政権を担い、「北朝鮮の脅威」「アカ」「従北左派勢力のうごめき」などの赤狩りの「マッカーシズム」を伝家の宝刀のように振り回し、危機を脱してきた。大型教会中心の保守プロテスタント勢力もやはり、「信仰を口実に金を稼ぐ」「教会を私有化し世襲する」という批判や教会内での性暴行疑惑などが明らかになるたびに、「従北左派の陰謀」「反キリスト教勢力の攻撃」などを前面に出し、危機を脱してきた。二つの勢力の間に「共通の利益」と「共通の敵」があるのだ。そして、互いを必要とした。

 保守プロテスタント勢力は、最近になり性的少数者(同性愛)、イスラム出身の外国人、差別禁止法の三つを攻撃目標に追加し、信者を扇動してきた。宗教家への課税の廃止という現実的な利益は裏に隠した。それに合わせて「教会の道具」になると手を差し出した人が、当時の自由韓国党のファン・ギョアン代表だった。ファン元代表は2019年3月20日に韓基総を訪問し、チョン・グァンフン牧師に会った席でチョン氏が「総選挙で自由韓国党が200議席を取れば、この国を正しく立て直し、第2の建国ができる基盤が用意される」という政治介入の発言をしたのに対し、満足な表情で聞いているだけだった。以後、光化門で開かれた反政府集会の壇上にチョン・グァンフン牧師とファン・ギョアン元代表が共に上がり手を取り、互いを支持し応援する姿が、何度もメディアと放送で公開された。保守キリスト教界の代表者として公式の地位と政治的影響力を渇望していたチョン・グァンフン牧師に翼が生えたのだ。

      

当時の自由韓国党のファン・ギョアン代表(右2番目)が昨年11月20日、大統領府の噴水台近くで開かれた「文在寅下野汎国民闘争本部」主催の集会を訪れ、総括代表であるチョン・グァンフン牧師(右)の演説を聞いている/聯合ニュース

 チョン・グァンフン牧師は2019年、大統領府前での集会で「今、大韓民国は、文在寅は、すでに神が廃棄処分にしました…大韓民国は誰の中心に戻るのか。チョン・グァンフン牧師の中心に戻ることになっている。気分が悪くてもできない。…私は神の玉座をしっかり捉えて生きている。神よ、動くな。神よ、神よ、ふざけたらひどい目に合わせるぞ。私はこのように、神と親しいのだ。仲良しだ」という神性への冒涜発言まではばかることなく吐き出す状況に至った。とうとう、全世界を荒しているCOVID-19への感染の脅威を防ごうとする当局の努力まであざ笑い、「野外集会の現場ではCOVID-19に感染しない。‥‥COVID-19にかかっても愛国だ。かかった病気も治る」などの妄言を続け、信者を惑わし、フェイク・ニュースを広めた。「文在寅打倒」「民主党攻撃」という共通の目的に傾倒した保守政党は、チョン・グァンフン牧師や極右プロテスタント勢力との距離を広げようとする努力を全く行わなかった。COVID-19事態に対する政府の防疫努力も蔑み、結果的にチョン・グァンフン牧師のでたらめ主張に力を加える役割を果たした。挙句の果てに「2020年8月15日のCOVID-19集団感染および伝播事態」が発生したのだ。

 「怪僧ラスプーチン」は、腐敗したロシアのロマノフ王朝の没落を急速に進めた人物に選ばれる。貧しい農民の息子に生まれ、学校でも素行不良などで追い出された彼は、あちらこちらを歩き回り、飲酒や暴力、窃盗、性犯罪など様々な乱れた生活を日常的に行い、「放蕩な人」だという意味の「ラスプーチン」と呼ばれた。そうしているうちに神の啓示を受けたとし、苦しむ人々に秘密の治療をして過ごしていたが、効き目があるという噂が広まり、ロシア皇室が尋ねるようになった。血友病の症状で苦しんでいた皇太子がラスプーチンに会ってから痛みが緩和するようになると、すぐにアレクサンドラ皇后の絶対的な信頼を得ることになった。その影響力を利用し、税金で私利私欲を満たし、これに抗議する市民に銃撃を加えるなど、国政を壟断するようになる。結局、民心が離反し、帝国は急激に没落することになった。

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進歩政治にも手を伸ばす保守プロテスタント

 1960~70年代の朴正煕(パク・チョンヒ)政権下での政教癒着とプロテスタント教団の紊乱化の背景には、チェ・テミン牧師がいた。日帝強占期に巡査だった彼は、解放後に仏教青年会の会長および僧侶になり、自ら仏教・キリスト教・天道教を総合した永世教という宗教を創始し、似非教主になる。そうしているうちに、いつのまにかキリスト教の牧師を自任し、ラスプーチンに似た「神秘の治癒能力」を掲げ、当時母親を失った悲しみに陥っていた朴正煕大統領の家族、特に次女の朴槿恵(パク・クネ)に近づき信頼を得る。彼はその影響力を前面に出し、大韓救国宣教会を設立し、プロテスタント界を親政権派に改造する作業を行い、救国奉仕団、セマウム奉仕団などを設立し、総裁の地位に就き、各種の人事と利権に介入し、莫大な不正蓄財を行った。30年ほど後、チェ・テミン牧師の娘のチェ・ソウォン(改名前はチェ・スンシル)氏は再び朴槿恵大統領の側近の役割を果たし、国政壟断を日常的に行い、保守政権の没落を加速化させる契機となる。ラスプーチンとチェ・テミン牧師、チェ・ソウォン氏は、政権勢力の歓心を買った後、「陰の実力者」の役割を果たし、国政を壟断したとすれば、チョン・グァンフン牧師は、野党権力と野合し、利益を追求し、社会不安と無秩序を助長していると見ることができる。しかし、現在の野党勢力が富と権力を長く独占してきた伝統的な大韓民国の保守勢力を代表していた歴史的脈絡から見るならば、軌を一にする。

 過去にはカトリック正義具現司祭団、韓国基督教教会協議会、実践仏教全国僧伽会など進歩的な宗教団体は進歩的な政党と近く、保守のプロテスタント・カトリック・仏教団体と聖職者は保守政党と近い二分構図が明確だった。しかし、朴槿恵政権の弾劾と保守政治の没落以後、このような区分は大きく変わり、不明確になった。チョン・グァンフン牧師と韓基総などの極右プロテスタント団体と聖職者は、一方では、ファン・ギョアン元自由韓国党代表など親朴槿恵派の保守政治家との連帯と協力を行い、他方では、独自のキリスト教政党を立ち上げ、活動を広げていった。反面、多数の大型教会の牧師など保守的なプロテスタント牧師は、与野党および保守、進歩を問わず、政党や政治家らと接触を広げ、宗教家への課税の反対や差別禁止法の立法阻止などの政治活動を展開してきた。

 国会で大型教会の牧師が主催する祈祷会などに大勢の与野党の有力国会議員が参加し、有名な大型教会の主要行事や礼拝に大勢の与野党の有力議員が参加する光景は、すでに日常となった。廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が制定を推進するなど民主党の代表政策の中の一つだった差別禁止法に対し、民主党所属の議員が公開の場で反対の意向を表明したり、保守的な関係者を招待し反対シンポジウムを開く現象が現れた背景にも、このような保守プロテスタント界の「民主党攻略」があることを、容易に推測することができる。一部の民主党議員は、宗教家への課税立法にも積極的あるいは消極的に反対しており、その結果、原案から大きく後退した立法が行われたりした。

 国立公園の入場料や寺刹文化財の指定など、国会を相手にした請願が多いのは仏教も同じだ。プロテスタントの政治力に押され、寺院の名称から取られた地下鉄の駅名が変更される危機に瀕するなどの不利益を避けるためにも、政治権力との連帯と協力が必要だった。カトリックや円仏教なども程度の差があるだけで、本質的には似た状況で似た態度を示してきた。国会になぜ、あれほど宗教家が頻繁かつ多く出入りし、宗教行事がなぜあまりに多いのかの答えを探してみるならば、到達する結論だ。亡くなった有力政治家の追悼式などでは、故人の宗教と関係なく3~4団体の宗教儀式が交互に進められる本当に奇妙な姿も、たびたび目撃される。

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政治において宗教は「イベント会場」であり「票田」

 各種の選挙のたびに各政党と候補者は、ほとんど全ての主な宗教施設を訪れ、宗教儀式に参加し、礼を尽くす。すでに報道されたが、主流キリスト教界が異端に指定した「新天地」の行事に国会議員らが祝辞や祝典などを送ることまで発生した。信者数が多く影響力が強ければ異端も気にしない姿を示したのだ。第20代国会で4年間議員活動を行い見つけた事実の一つは、大韓民国の政治では宗教は決して信仰と信頼の領域ではなく、票と支持を得る“会場”であり、“票田”だということだった。結局、このような“宗教的モラルハザード”が、朴槿恵とチェ・テミン牧師およびチェ・スンシル氏、ファン・ギョアン元代表とチョン・グァンフン牧師のような「政治と宗教の間の誤った出会い」の環境的要因だと推測できる。

 政教分離は現代の民主国家の必須要件の中の一つだ。原始社会の祭政一致、中世時代の神聖国家など、政治と宗教が混じり合う時、例外なく両方とも腐り、堕落し、滅亡に至った。政治家個人がいかなる宗教やいかなる信仰を持っていても、その自由は保障されなければならない。しかし、公的領域である政治が、特定の宗教団体や宗教家の影響を受け、彼らの利益のために活用されるならば、それ自体が利益衝突であり、不正腐敗だ。

 反対に、ただ神と教理に基づき永遠の真理と平和を追求しなければならない宗教が、現実政治に影響を及ぼし、介入し、一方の側に立つならば、それ自体が、求道と救い、信仰の純粋性を失った堕落だ。ラスプーチンとチェ・テミン牧師、チェ・スンシル氏、そしてチョン・グァンフン牧師の例で見るように、政治と宗教が野合すれば、結局、両方共に堕落し、政治は名分と公正性など大義を失うことになり、宗教は信仰と哲学、そして救いを忘れることになる。何より、国は混乱することになり、国民は苦痛を受けることになる。政治と宗教、もう別れる時が来た。

ピョ・チャンウォン:前職の国会議員であり「犯罪プロファイラー」であるピョ・チャンウォン博士が、議員として見聞きし経験した事実と、メディアや政府、大衆などの政治環境、政治家の言動の動機と意図などを総合・分析し読者に報告する。韓国政治の病理現象を解剖し、問題の原因を追跡し代案を提示することで、国民のための国会と政治に発展する契機になればという願いを込めている。隔週連載。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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国情院は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がキム第1副部長ら幹部指導部に自分の権限を一部委任して統治しているという事実も公開した。

2020-08-21 09:19:39 | 歴史に照らして整合性を!
国家情報院「金正恩委員長、キム・ヨジョン第1副部長に権限の一部を移譲」
登録:2020-08-21 06:30 修正:2020-08-21 07:37


「事実上のナンバーツー」国会情報委に報告

      

北朝鮮の金正恩国務委員長の実妹、キム・ヨジョン労働党第1副部長/聯合ニュース

 国家情報院(国情院)が20日、北朝鮮のキム・ヨジョン朝鮮労働党第1副部長が事実上、北朝鮮のナンバーツーの役割を果たしていると、国会情報委員会に報告した。国情院は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がキム第1副部長ら幹部指導部に自分の権限を一部委任して統治しているという事実も公開した。

 情報委の未来統合党幹事を務めるハ・テギョン議員は同日のブリーフィングで「(金委員長が)対韓・対米戦略をキム・ヨジョンに委任した。また報告過程で過去には金正恩が政務のすべてを取り仕切ったが、今はキム・ヨジョンが中間集約して金正恩に伝え、金正恩が指示を出すとそれを各機関に知らせる役割を担っている」とし、「事実上、ナンバーツーの役割を果たしている」と述べた。国情院は同日、経済分野はパク・ボンジュ党副委員長とキム・ドクフン首相、軍事分野はチェ・ブイル党軍事部長と戦略兵器開発を担当するリ・ビョンチョル党中央軍事委副委員長に権限が分散されたと、情報委に報告した。

 ただし、国情院は、キム・ヨジョン第1副部長に後継構図が決まったり、金委員長の健康悪化で権限の分散が行われたわけではないと見ている。キム第1副部長の談話を住民に暗記させるなど、キム第1副部長の政治的地位が強化されたものの、後継者に内定したと見る根拠はないというのが国情院の見解だ。

 また、国情院は北朝鮮の水害が深刻なレベルであることも確認した。情報委の共に民主党の幹事を務めるキム・ビョンギ議員は「集中豪雨で江原道と黄海南道・北道で深刻な被害を受けたという。特に、金正恩政権の発足後最大の被害を記録した2016年より浸水被害が大きく増加したと、国情院が説明した」と伝えた。さらに国情院は「寧辺(ヨンビョン)の5メガワット級の原子炉は稼働中止状態で、再処理施設を稼働している兆候も見られない。北朝鮮軍の夏季訓練量も25~65%減少した」と報告した。寧辺の核施設の浸水の可能性については「浸水などの動向報告がなかった。豊渓里(プンゲリ)と東倉里(トンチャンリ)にも変わった動きは見られない」と述べたという。北朝鮮が昨年公開した新型潜水艦の進水について、国情院は「既存のロミオ級を改造し、建造が完了したようだが、いつ進水するのかについては動向が把握できていない」と報告したと、キム議員は伝えた。
チョン・ファンボン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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韓国キリスト教教会協議会(教会協、NCCK)は17日、「教会が韓国社会を深刻な危険に陥れた」という謝罪文をイ・ホンジョン総務の名義で発表した。

2020-08-20 06:25:15 | いったいどうしていたのか?
韓国の教会たち、
新型コロナ第2次拡散の発信源とされるチョン牧師と「線引き」

登録:2020-08-19 02:22 修正:2020-08-19 09:31


サラン第一教会が新型コロナの第2次大流行の震源地と名指しされると 
プロテスタント教団、先を争い声明発表「分離」政策に乗り出す 
7月10日の政府による会合禁止に反発したのとは対照的 

          
「チョン・グァンフンだけでなく感染者激増教会とは無関係」線引き
17日、新型コロナ確定判定を受けたチョン・グァンフン牧師が、城北区保健所の車両への移動中にマスクを下ろして電話している/聯合ニュース

          

 チョン・グァンフン牧師が設立したサラン第一教会に関係する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が400人を超えるなど、プロテスタントが「新型コロナ第2次大流行」の震源地として浮上したことから、プロテスタント教会は一斉に低姿勢を取り始めた。今年2月、大邱(テグ)での新天地イエス教会から発した大流行では「新天地はプロテスタント教会とは全く別の異端」として責任を逃れていたプロテスタント教会は、教会から発する感染者が急増し、国民的な怒りを買ったことで態度を変えつつある。政府は「社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)」をレベル2へと引き上げ、オンライン礼拝のみを認めることとしたが、汝矣島(ヨイド)純福音教会、所望教会、永楽教会、オンヌリ教会などの代表的な大規模教会は18日、先手を打って政府の公式発表前に自らオンライン礼拝への転換を打ち出した。

 プロテスタント教会は、政府が「教会を中心としてCOVID-19が拡散している」とし、先月10日に教会の小規模会合を禁止した際には「憲法が保障する宗教の自由を侵害する」と強く反発したが、今回は態度を180度転換した。当時は、保守的な韓国教会連合(韓教連)や韓国キリスト教牧会者協議会だけでなく、30の会員教団の連合体である韓国教会総連合(韓教総)も「撤回しない場合、法的に対応する」と政府に迫った。彼らの主導により、大統領府請願掲示板には、小規模会合禁止措置の取り消しを求める請願が登場し、プロテスタント信者約42万人が署名した。その結果、政府は2週間後の先月24日に同措置を撤回した。しかしその後、サラン第一教会の他にも京畿道龍仁(ヨンイン)のウリ第一教会、高陽(コヤン)のキップム153教会、盤石教会、ソウル陽川区(ヤンチョング)のトェセギム教会、京畿道金浦(キンポ)のチュニメセム教会などを通じた感染者が急増したことで、政府の憂慮は現実のものとなった。

       

        チョン・グァンフン牧師/聯合ニュース

 すると韓国キリスト教教会協議会(教会協、NCCK)は17日、「教会が韓国社会を深刻な危険に陥れた」という謝罪文をイ・ホンジョン総務の名義で発表した。進歩派の教会協は政府の防疫指針に協力的だったため、こうした謝罪は特別なものではないが、中道・保守団体の態度の変化は注目に値する。

 特に目につくのは、一時はそれなりに共生してきたチョン・グァンフン牧師およびサラン第一教会と「距離を取った」ことだ。チョン牧師が所属する韓国基督教総連合会(韓基総)が、大半の教団の脱退により有名無実化している中、韓基総に代わる連合機関として登場した韓教総は18日に声明を出し、「チョン牧師のサラン第一教会は、本来の宗教活動を超えて政治集団化している」とし「早急に教会本来の姿に戻り、COVID-19検診と防疫に協力せよ」と要求した。韓国キリスト教牧会者協議会はさらに一歩踏み込んでいる。同協議会は同日の声明で「社会的な怒りを買っているチョン牧師に対し、より確実な処分を求める」とし、チョン牧師の処罰要求の先頭に立った。同協議会は「昨年8月、長老会統合、合同、白石、高神、合神、メソジスト、聖潔、バプテストなど主要8教団の異端対策委員長協議会は、主な公教団に対し、チョン牧師を『異端擁護者』とみなすよう要請しており、(チョン牧師の)以前の所属教団である大韓イエス教長老会総会、白石大神教団はチョン牧師を免職処分としているが、処分以前に独立の教団を作って出て行ったため、除名処分を下している」と言及した。さらに「神聖な福音を理念に従属させ、教会を政治集団へと転落させたチョン氏に対し、今年9月に予定される主要公教団総会において、相応の措置を下すことを強く求める」と述べた。

 キリスト教大韓聖潔教会やナザレ聖潔教会、イエス教大韓聖潔教会などから成る聖潔教会連合会も同日、共同声明を出し、チョン・グァンフン牧師に対する公教団の確実な措置を求めた。このようなプロテスタント教会の態度の変化は、韓国の教会に対する国民的な非難が集中したことから、チョン牧師を異端とし「我々はチョン牧師や韓基総とは違う」と、先を争って差別化を図っているとみることができる。

      

今月15日午後、ソウル鍾路区の東和免税店前で開かれた政府および与党を糾弾する集会で、サラン第一教会のチョン・グァンフン牧師が発言している/聯合ニュース

 韓教総の幹部を務めるある牧師は「チョン牧師が代表(現在は職務停止状態)を務める韓基総は、異端牧師を合流させ、政治屋や商売人のような行動で一貫しており、既存の教団がほとんど脱退して、現在は韓国の信者の3%にも満たないほど代表性を喪失した状態であるにもかかわらず、チョン牧師が韓国の教会を代表するかのような振る舞いをすることで、その疑いを韓国の教会全体が被ることは無念な部分が大きい」と述べた。続いて「韓教総や地域教団連合体に所属する教会のほとんどは、政府の防疫指針を徹底的に守っているが、現在感染者を量産している教会は、他の教団や政府の協力要請にも応じないケースが多い」と付け加えた。チョン牧師のサラン第一教会などは、政府の防疫指針を完全に無視してきており、126人の累計感染者を量産した龍仁のウリ第一教会も、京畿道キリスト教総連合会や龍仁キリスト教連合会に加入せず、独自に行動する教会だという。

 一言でいえば、プロテスタントの主流派教団と連合機関が、国民的な怒りから逃れるためにチョン牧師を異端と規定し、「分離」に乗り出したかたちだ。教会のこのような動きが、国民の信頼を回復する契機となるか注目される。
チョ・ヒョン宗教専門記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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民生向上に専念せず、熱烈な支持層の方ばかりを向いて国民の上に君臨しているという印象を与えている。もう一つは野党の変数だ。

2020-08-19 07:34:17 | 韓国文化
[寄稿]たった100日で世論が変わった理由/シン・ジヌク
登録:2020-08-19 02:24 修正:2020-08-19 06:19


 総選挙で与党が180議席の巨大権力を得てからわずか100日あまり、世論が急変している。リアルメーターの調査では、大統領の国政遂行に対する否定的評価が肯定的評価を大きく上回り、韓国ギャラップの調査でも、肯定的評価は30%台にまで落ちている。政党支持率でも未来統合党が共に民主党を追い越すか、猛追している。

 支持率の数値よりも重要な質の変化がある。流動的な無党派層と20、50代だけでなく、与党の核となる支持基盤だった30、40代と若い女性層が大挙離脱したのだ。これは「チョ・グク事態」が最高潮に達した瞬間にも起きなかった現象だ。このすべてが、2016年の弾劾政局後初の事態だ。

 いったい何が起こったのか。不動産価格の暴騰、パク・ウォンスン市長事件などの「悪材料」が続いたためだという説明がある。多数の議席ばかりを頼って野党との協治を拒否するなど、独走だという指摘もある。すべて一理ある。しかし、十分ではない。不動産価格の暴騰は深刻な問題だが、総選挙後に生じた現象ではない。与野党の協治もいいが、かつては協治を行わなかったからといって、支持率が急落することはなかった。それでは、なぜ今、世論は揺れているのか。

 二つの力がかみ合って生まれた結果だと思う。一つは与党の変数だ。巨大な権力を握っていながら、民生向上に専念せず、熱烈な支持層の方ばかりを向いて国民の上に君臨しているという印象を与えている。もう一つは野党の変数だ。保守野党は、議題、言説、闘争方式を変え、支持層の拡大を試みている。この二つの光景が並んで広がる空間において、民意は大きく揺れている。与党は現実から目をそむけたり、自己防衛ばかりに走ったりするのではなく、何が間違っているのかを問い、傾聴しなければならない。

 まず、関心度と同意基盤の狭い政策が過度に浮かびあがっている。例えば「韓国版ニューディール」は幅広い支持を得る潜在力があるが、デジタル・ニューディールなどの各種産業育成策は多くの国民の利害関心事ではない。検察改革政策は、もともとの認知度は高いが、支持層は限定的な議題だ。メディアリサーチやRnサーチなどによる最近の調査でも、法務部長官の行動を肯定的にとらえる回答者はおよそ30%だ。開かれたウリ党も、2004年の総選挙に勝利して以降は政治改革に没頭し、熱烈な支持層を除いてすべて失っている。

 行政首都の移転や親日派の国立墓地からの排除のように、当面の民生危機とは距離のある問題が突出していることも支持率の下落を加速させている。このような政策はきわめて論争的であるばかりでなく、より大きな問題は、コロナ危機と不動産問題で民意が厳しい今、ずれた論議が与党から提起され続けているということだ。仕事を失った、住宅価格が高すぎる、人々はこう叫んでいるのに、為政者たちは首都を移そうとか、墓を移そうとか言っている。国民は尊重されていないという憤りを抱くようになるのだ。

 もちろん政府・与党はいくつもの重要な民生・福祉改革案を推進している。しかし問題は、新たな制度が定着して恩恵を受けられるようになるまでには、かなりの時間がかかるということだ。例えば、病気の時に休めるようにする傷病手当制を導入するため、政府は2021年に委託研究を、2022年に低所得層を対象とするモデル事業を実施する計画であり、全国民雇用保険制は2025年に完成すると見込んでいる。

 このような政策は非常に重要だが、多くの国民がこれらの政策を今は実感できていない。現政権が政策的努力を傾け、その政治的結実は次期政権が手にする可能性が高いのだ。そのため、不安定な国民階層の当面する状況に、より積極的に対応しつつ、政治的支持も拡大できる方策を考えなければならない。

 公共医療の強化がその一例だ。韓国の公共病床の数は全体の10%に過ぎない。オーストラリアは69.5%、フランスは62.5%、ドイツは40.6%だ。韓国ギャラップの6月の調査によると、医療サービスに対する公的責任と国公立医療機関の拡大は、実に94%の回答者が支持している。コロナが再び拡散している今、病床がないという恐ろしいニュースが聞こえてくる。このような時に政府が公共医療の拡大を強力に推進すれば、国民の大きな反響を得られるのではないか。

 米国の政治学者シャッツシュナイダーは「新たな政策が新たな政治を生み出す」という有名な命題を残した。政策は古い問題に対する処方であるばかりでなく、新たな政治を切り開くための戦略でもある。総選挙前に与党はコロナ対応という国民的関心事に集中し、大きな勝利を収めた。総選挙後にも、国民の暮らしに密着する政策で心をつかんでこそ、より長期的な改革も実現できるはずだ。
//ハンギョレ新聞社

シン・ジヌク|中央大学社会学科教授
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/958269.html
韓国語原文入力:2020-08-18:12
訳D.K
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本書はそのような経験と立場を持つ作家が、戦争と記憶、そしてアイデンティティの問題について、小説では語りつくせなかった話を表現した卓越したエッセイであり、文化批評書だ。

2020-08-18 08:02:40 | 歴史に照らして整合性を!
[書評]記憶と歴史は公正か
登録:2020-08-15 11:14 修正:2020-08-16 07:51


『何も消えない:ベトナム戦争の記憶』 
ヴィエト・タン・ウェン著、プ・ヒリョン訳/トボム刊行(2019)

            
『何も消えない:ベトナム戦争の記憶』ヴィエト・タン・ウェン著、プ・ヒリョン訳/トボム刊行(2019)//ハンギョレ新聞社

  ヴィエト・タン・ウェンは1971年にベトナムで生まれた。ウェンの両親は戦争で敗北した南ベトナムの人だったため、サイゴンが陥落した1975年、ボートピープルになって海上をさ迷い、米国に定着した。両親が難民キャンプにいる間、彼は米国人の家庭に預けられ、米国の文化と言語を習得して育った。のちに彼は自分の経験を描いた小説『シンパサイザー』(The Sympathizer)を出版し、2016年にピュリッツァー賞を受賞した。本書『何も消えない:ベトナム戦争の記憶』(Nothing Ever Dies: Vietnam and the Memory of War)の最初の一節で、ウェンは「私はベトナムで生まれたが、米国で育った。私は米国が犯した行動には失望したが、米国の言い訳を信じたがるベトナム人だ」と語る。本書はそのような経験と立場を持つ作家が、戦争と記憶、そしてアイデンティティの問題について、小説では語りつくせなかった話を表現した卓越したエッセイであり、文化批評書だ。

 誰しも消したくても消えない記憶、消せない記憶がある。私たちはそれを傷と呼ぶ。資本主義はこのような傷さえも商品にすることができ、実際に記憶を販売して歴史を利用する総体的な記憶産業が存在する。「記憶の産業化は資本主義社会の一部分として、戦争の産業化と並んで進む」ものであり、「戦争兵器の火力」は「記憶の火力」と一致する。すべての戦争または紛争の敗者は無視され、消され、削除される。米国に敗北を与えたベトナム戦争でさえ、ハリウッド映画、ドラマ、ドキュメンタリーなど「記憶(関連)産業」はこの戦争に正当性を与え、米国が永遠に潔白な国だという想像の記憶を提供する。

 記憶と歴史は公正なのか。「傷を癒す記念碑」という評価を受けたマヤ・リンのベトナム参戦兵士追悼碑には、約5万8000人の戦没者名簿がびっしりと刻まれており、この追悼碑の長さは137メートルに及ぶ。写真家フィリップ・ジョーンズ・グリフィスは「同じ間隔でベトナム人犠牲者の名前が刻まれた同様の追悼碑を建てたならば、おそらく15キロメートルにのぼるだろう」と、この記念碑が沈黙しているもうひとつの犠牲者について語った。朝鮮戦争では300万人の韓国人が死んだが、米国/米国人にとって朝鮮戦争は「忘れられた戦争」だった。これは、朝鮮戦争に対する彼らの記憶が公正ではないという意味でもある。米国、いや、手に血のついた者たち、言い換えれば強者たちは、いかなる戦争も、いかなる殺人も公正に記憶しない。これを公正に記憶しないのは、私たち韓国人も同じだ。

 ウェンはベトナムでの経験を語る。ベトナム1A高速道路で、ホイアンに向かって走りダナンを通過した直後に分かれる脇道には「ハミ虐殺犠牲者慰霊塔」が立っている。この追悼碑は2000年12月、韓国のベトナム参戦戦友福祉会の寄付金で建てられたもので、旧暦1968年1月24日に死んだ、いや殺された135人の名前が刻まれている。この追悼碑で最年長の犠牲者は1880年生まれの女性で、最年少の3人の犠牲者は1968年に死んだとだけ書かれている。もしかすると、生まれることのなかった子どもだったのかも知れない。彼らの名前には「Vō Danh」という文字が刻まれている。無名という意味だ。しかしこの追悼碑は、誰が彼らを殺したのかを語ることはできない。沈黙しているが、何も消えない。
チョン・ソンウォン|「黄海文化」編集長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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