光州での虐殺目撃者
「彼らは市民軍ではないと止めたのに…軍人が国民を撃つなんて」
チュナム村虐殺目撃者キム・ジョンファさん
「構え!」
無線機を持った将校がミニバスを見ながら命令した。1980年5月23日午前、光州(クァンジュ)から和順(ファスン)に行く途中にあるチュナム村前の道路を、17人乗りの小型バスが通っていた。
将校が短く太い声で「射撃開始」を指示した。
豆を炒るような銃声が聞こえた。道路の両脇に待ち伏せしていた戒厳軍が、ミニバスに向かって発砲した。パンクしたバスが道路の反対側の端で横に倒れた。兵士らは再び2~3分間、集中射撃を浴びせた。それから「バン、バン、バン」という音が聞こえた。「確認射殺」をしているようだった。
チュナム村の近くで花卉(かき)農園を営んでいたキム・ジョンファさん(74)は集団虐殺を目撃した証人だ。慶尚南道馬山(マサン)出身の彼は、1977年12月、軍隊同期の勧めで光州に移り住んだ。事件が発生する直前、キムさんはビニールハウスを訪れた大尉階級章をつけた空輸部隊将校1人と無線兵に会った。大尉は彼に「不審な者たちが通るのを見なかったか」と尋ねた。
キムさんが「ああ、そんなの私にはわかりませんよ」と答えると、彼は「故郷は慶尚道なのか」と尋ねた。自分も「同じ故郷」だという将校に向かって、キムさんは「あの人たちは(市民軍ではなく)家に帰る人たちです」と叫びながら止めたが無駄だった。
この日のミニバス銃撃事件の発生時刻は午前8時10分から20分だ。キムさんは「『朝ごはんにしよう』という小学校教師の妻に『出勤しないのか』と聞いたら、『休校令が出された』と言われたので、時間を正確に覚えている」と語った。
兵士らは、ミニバスの中から遺体を引き出し、道路の向かい側の排水路に投げた。キムさんは5月25日、空輸部隊の大尉に「遺体が投げだされるのを見た。怖くて暮らせない。遺体を確認し、家族が処理できるようにしてほしい」と訴えた。最初は聞く耳を持たなかった大尉はキムさんに兵士10人を警護に付け、「早く(遺体を)処理するよう」指示した。
仮埋葬の現場は悲惨だった。5~10センチほど土とむしろをかぶせて埋葬した遺体10柱(女性2人)は腐敗臭がひどく、うじ虫がわいていた。ほとんどの遺体には数発から数十発の銃傷が残っていた。
キムさんは近くに住んでいた後輩のCさんと共に排水路に行き、持ち物から3人の連絡先を見つけた。1人の女性の遺体からイルシン紡織の社員証が出てきた。キムさんは5月27日、新軍部の鎮圧作戦が終わった後、同社を訪ね、彼女の死亡事実を伝えた。故郷の和順に向かう途中に死亡したイルシン紡織の女性労働者、コ・ヨンジャさん(当時26歳)は、キムさんが知らせたおかげで、遺体だけは家族のもとに戻った。キムさんは「工場が稼働中止になって、家に帰る途中でそんな目に遭ったのだから、さぞかし無念だっただろう」と話した。コさんはミニバスを運転していたキム・ユンスさん(当時27歳)と1983年に霊魂結婚式(死後結婚)を挙げた。光州民主化運動当時、チュナム村バス集団銃撃虐殺事件は少なくとも5件(5・18真相究明調査委員会発表)発生し、少なくとも17人が死亡(戦闘教育司令部状況日誌)したが、これまで遺体が見つかったのはコ・ヨンジャさんやキム・ユンスさんら12柱だけだ。
錦南路で花屋も経営していたキムさんは、戒厳軍のむごい虐殺現場を目撃して憤った。5月21日、旧労働庁付近で被弾して倒れたある青年(キム・ヨンピョさん、当時22歳)の遺体も担架で運んだ。死を覚悟したのか、青年のズボンの後ろポケットには住所と個人情報が書かれたメモ用紙が入っていた。キムさんは「無念の魂の供養になればと思い、つぼみの花を棺にたくさん入れた」と話した。棺と共に青年の両親を乗せて潭陽(タミャン)に向かっていたキムさんのトラックは、旧光州刑務所前で戒厳軍の銃撃を受けた。結局、青年の遺体はその日、無等山(ムドゥンサン)に臨時に埋葬され、後日望月洞(マンウォルドン)墓地に移された。
正義感が強いのは血筋なのかもしれない。今月10日、光州市北区竜頭洞(ヨンドゥドン)のスマートファーム農園で会ったキムさんは「兵士が国民を銃で殺すなんて、そんなむごいことがあっていいのか」と語った。1979年10月に釜山(プサン)・馬山(マサン)で起きた釜馬抗争の象徴的人物である故キム・ジョンチョルさん(1955-97)は、彼の弟だ。1975年に高麗大学法学部に入学した弟は休学後、馬山の実家に帰ってきたが、釜馬抗争に参加し、拷問の後遺症に長く苦しんだ。がん闘病の末、42歳の若さで亡くなった。キムさんは弟の生涯をまとめた『キム・ジョンチョル、彼の時代そして友人たち』(非売品)という本を記者に渡し、「残酷な蛮行を犯した光州民主化運動の加害者たちは厳しい審判を受けるべきだ」と語った。
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