イスラエルばかりに肩入れ…
米民主党にとって大統領選挙の悪材料となった中東
中東でイスラエルとイランの衝突が日増しに深刻化しつつあることで、米大統領選挙では珍しく外交政策が注目されている。イスラエルのネタニヤフ首相と完全に歩調を合わせる共和党とは異なり、イスラエルを支持しつつも批判的な有権者の顔色をうかかがわなければならない民主党は、難しいかじ取りを迫られている。このような状況にあって、中東危機の高まりは民主党にとって悪材料になると評価される。
ホワイトハウスは1日(現地時間)、ハリス副大統領がバイデン大統領とともにホワイトハウス内でイランのミサイル攻撃と米国の対応をモニタリングする様子を公開した。国家安保を扱える候補であることをアピールするための布石とみられる。
その後、ハリス副大統領は記者会見を行い、イスラエルの安全保障に対する確固たる支持を約束した。大規模な民間人の被害を伴ったイスラエル軍のハマスやヒズボラに対する攻撃の際とは異なり、イランがイスラエルを攻撃したということで、断固たる外交行動を取れたとみられる。
しかし、基本的に中東危機の高まりは民主党にとっては悪材料だ。バイデン政権は昨年10月のハマスのイスラエルに対する攻撃以降、一貫してイスラエルを支持してきたが、ガザ地区で多くの民間人が犠牲になってからは、民主党内の進歩派、ムスリム、若い有権者から激しく非難されてきた。
その後、バイデン大統領はイスラエルのガザ地区攻撃を穏健に批判し、ハリス副大統領も候補になってからは同情的な口調だ。だが、「イスラエルを支援しつつ、同時にイスラエルの攻撃による民間人の被害を防ぐ」という矛盾した態度の限界は明らかだ。
民主党には、激戦州のアラブ系米国人を振り向かせる大義名分が必要だった。それが休戦協定だ。ハリス副大統領は、11月の大統領選の前にガザ地区での休戦協定が締結され、アラブ系米国人の怒りがおさまることを期待した。しかし、中東情勢の悪化で可能性は次第に薄れつつある。これも民主党にとって悪材料だ。
トランプ前大統領は批判していれば済む立場だ。イランのミサイル攻撃についても、トゥルース・ソーシャルのアカウントに「この戦争は完全に防止できた。絶対に起きてはならなかった。私が大統領だったなら起きていなかっただろう」と記している。
この日行われた副大統領候補同士のテレビ討論会でも、共和党候補のバンス上院議員は中東紛争について、「トランプは効果的な抑止力によって安定をもたらした」と援護した。一方、民主党候補であるミネソタ州のウォルズ知事は、トランプ前大統領は在任中にイランとの核合意から脱退したとして、「気まぐれなリーダーシップのせいでイランは以前より核兵器(保有)に近づいている」と批判した。
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