[記者手帳]
BTSの本当の成功の秘訣は“慰め”と“希望”
4月のことです。セウォル号惨事6周年を控え、セウォル号犠牲者遺族にインタビューをする途中、彼らの口から意外な名前を聞きました。2014年のセウォル号惨事から200日ほど経った頃、「若い人たち」が遺族を訪ねてきたそうです。遺族たちの説明によると、彼らは礼儀を尽くして焼香をし、遺族を慰めただけでなく、家族協議会宛に1億ウォンを寄付したと言います。遺族たちを訪れたのは、当時デビュー2年目のアイドルグループ、防弾少年団(BTS)でした。所属会社ビックヒットエンターテインメントのバン・シヒョク代表も当時彼らに付き添ったそうです。
セウォル号惨事と関連し、政権レベルの文化系ブラックリストが作成され、各種の不利益が加えられた状況にもかかわらず、所信を持って行動した彼らが「本当にありがたかった」と、遺族たちは当時を振り返りました。遺族たちがその日以来、「彼らの未来のために切に祈り、応援」してきたのもそのためです。悲しみのどん底にいた遺族たちを訪れ、心を尽くして慰めてくれた人たちが、他の誰よりも愛される歌手になることを願うのは、当然のことだったかもしれません。
こんにちは。文化部で大衆音楽を担当しているキム・ギョンウクです。昨年の夏、このコーナーで混成グループ「SSAK3(サクスリー)」(イ・ヒョリ、ユ・ジェソク、RAIN)の人気の秘訣についてお話しましたが、今回はBTSについてお話ししたいと思います。
今年は「BTSの年」だったといっても過言ではありません。最近彼らが打ち立てた「最初」、「最高」、「最短」の記録は、関連記事を書く記者としても実に計り知れないほどです。セウォル号惨事の遺族の願いが叶ったわけです。デビュー当初から周囲の状況に気を取られるよりは、自分たちの道を黙々と歩んできた彼らが、韓国大衆音楽の歴史を塗り替えるまでにかかった時間はわずか7年に過ぎません。
彼らが最近成し遂げた各種記録の中で、代表的な成果は米ビルボードのシングルチャート(「ホット100」)1位です。彼ら以前にこのチャートでトップに輝いた韓国のアーティストはいませんでした。今年9月、英語で書かれた「Dynamite」で1位になり、先月30日(現地時間)には韓国語の歌詞の「Life Goes On」でも1位を獲得しました。もう彼らにとって、どの言語で歌うかはそれほど重要な問題ではないかもしれません。「ホット100」はポップの本場、米国で最も人気のある歌を示す指標です。このチャートで韓国語の曲が1位になったのは、ビルボードチャート62年の歴史上今回が初めてです。非英語圏の曲がチャートデビューしてすぐに1位になったのも「Life Goes On」が唯一です。
BTSは新しいアルバムと収録曲で、それぞれビルボードの2大メインチャートを同時に席巻する珍記録も打ち立てました。「Life Goes On」がタイトル曲として収録されたアルバム『BE』は、アルバムチャートである「ビルボード200」で、デビューと同時に1位になりました。これまで「ホット100」と「ビルボード200」でリリースと同時に1位になった歌手は米国ポップスターのテイラー・スウィフトとBTSだけです。
BTSはどうやってこんな成果を上げることができたのでしょうか。独歩的音楽とパフォーマンス、ファンダム「ARMY」の力などさまざまな要因があると思いますが、私は彼らが世界に伝えた“慰め”と“希望”を挙げたいと思います。彼らがデビュー初期の時から行動で見せてくれた、まさにその価値なのです。「ホット100」1位になった「Dynamite」と「Life Goes On」は、どちらもコロナ禍を生きる人たちへの励ましと慰めのメッセージを込めた曲です。「Dynamite」が明るく軽快なトーンの「ヒーリングソング」なら、「Life Goes On」は叙情的な雰囲気で「それでも人生は続く」というメッセージを伝えてくれます。
米国の時事週刊誌「TIME」の評価も同様です。TIME誌は10日(現地時間)、BTSを「今年のエンターテイナー」に選び、その理由をこう挙げました。「彼らは苦しみと冷笑があふれる時期に親切、連結、包容というメッセージを真摯に送り、ファンダムは彼らの前向きなメッセージを世界に伝えた」
いまや視線は米国最高権威の大衆音楽授賞式である「グラミー賞」に注がれています。BTSは「Dynamite」で「最優秀ポップ・デュオ/グループパフォーマンス賞」にノミネートされています。韓国のアーティストがこの授賞式の候補に上がったのもBTSが初めてです。授賞式は来月31日に開かれ、多くの専門家が彼らの受賞を予想しています。もちろん一方では、BTSがグラミーの壁を越えるのは容易ではないという見通しもあります。変化に鈍感で年配の白人男性中心の保守的な授賞式という理由からです。ただし、一つ確かなことはあります。グラミー賞は賞に過ぎないという事実です。グラミー賞の受賞可否にかかわらず、彼らの歌に励まされ、慰められた人たちにとって、BTSはすでに“最高のスター”ですから。
キム・ギョンウク文化部大衆文化チーム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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