購買力平価為替レート基準での日本の平均賃金が韓国より低く、将来は就職のために他のアジア諸国に出ていく人々が増えるという記事が大きな反響を呼んだ。

2021-05-05 07:43:36 | これからの日本、外国人の目
 

[寄稿]日本は韓国より貧しくなったのか

登録:2021-05-03 20:20 修正:2021-05-04 06:49
 
        イ・ガングク|立命館大経済学部教授

 「なぜ日本は韓国より貧しくなったのか」。先日日本のメディアに掲載されたある記事のタイトルだ。近くて遠い国である日本は、韓国にとって常に追いつきたい対象であり、日本にとって韓国は一段格下の相手だっただろう。もはやそうではない。

 国際通貨基金によれば、市場為替レートに基づく1人当り名目国民所得は2020年に日本が4万146ドル、韓国は3万1497ドルで日本の方が高い。日本の物価上昇率が低いため、実質国民所得の差はさらに大きい。それでも1990年には日本の国民所得が韓国の約3.9倍であったから、日本が長期不況を経る間に韓国がとてつもなく急速に追撃してきたわけだ。

 だが、この数値は為替レートの変化に敏感で、開発途上国ではサービス価格が低いため、国際比較では通貨の実質購買力を示す購買力平価為替レートをよく使う。完ぺきな指標ではないが、これで比較すると韓国は日本よりもすでに国民所得が高くなっている。

 購買力平価為替レートで計算した1人当り実質国民所得は、2018年に韓国が4万1409ドル、日本が4万1001ドルであり、韓国と日本は逆転した。1990年にはこの基準での日本の国民所得が韓国の約2.6倍だったがすでに逆転し、2026年には差がさらに広がって韓国が約4万9千ドル、日本が4万4千ドルになる展望だ。現実でも韓国の物価や賃金、そして生活水準は日本より低くないと感じられる。

 最近、日本でもこうしたテーマの報道をたまに目にする。先日は購買力平価為替レート基準での日本の平均賃金が韓国より低く、将来は就職のために他のアジア諸国に出ていく人々が増えるという記事が大きな反響を呼んだ。こうした変化は、長期不況だけでなく2000年代以後の生産性上昇に比べ賃金上昇が遅れたという現実を反映している。

 また別の記事も、日本が国民所得で米国との差がますます大きくなっていて、韓国や台湾に追いつかれキャッチダウンしていると指摘する。多くの日本人にとっては気分が害することかもしれない。筆者は、これを克服するために必要なことは独創性ではなく、他国から優れた事例を学び古い制度と慣行を変えることだと強調する。

 新型コロナ防疫を見ても韓国の方が先進的だ。韓国も日本も西欧よりは状況がましで、世界的には成功的なケースだった。ブルームバーグの新型コロナ回復順位によれば、韓国は世界6位、日本は7位だ。しかし、日本は発病初期の大量検査に失敗し、政府支援金の支給も所得把握問題で遅くなった。ここのところ日本の一日の感染者数は人口比で韓国より4倍も高く、ワクチン接種も現在韓国が人口の約7%である一方、日本は約2%に過ぎない。

 もちろん国民所得の数字が示し得ない種々の差も存在する。高齢者の貧困と青年失業問題は韓国の方がより深刻だが、高齢化と財政問題では日本の方が深刻だ。暮らしの不安定さは韓国の方が大きいかも知れないが、社会の活力は韓国の方が高く見える。何よりも両国はお互いの社会を見て教訓を得られる隣国であることを忘れてはならない。例えば韓国は、日本から低成長と人口変化の準備だけでなく、大企業と中小企業の格差の小ささや、最近の労働市場改革に関して学ぶ点が多い。日本は情報通信など新産業の躍動性や労働者の賃金を上げるための努力に関して韓国から学ぶべきだろう。

 所得以上にさらに大事なことは、暮らしの質と幸福だろう。経済協力開発機構(OECD)の「より良い暮らし指標」は、住宅、仕事、共同体、健康、環境を含む11の指標を提示する。韓国は助けが必要な時に頼れる誰かがいるという共同体指標が先進国の中で最も低く、環境も同じだった。一方、日本は市民として政治に参加する程度が非常に低かったが、韓国は非常に高かった。暮らしに対する満足と仕事と暮らしの調和は、両国共に他の国よりもずっと低かった。

 一方、2017~2020世界価値観調査によれば、韓国と日本の暮らしの満足度の平均値は同じくらいだが、暮らしに十分満足している人々の割合は日本の方が高かった。また、2021世界幸福報告書は、2018~2020年の幸福順位が日本は56位、韓国は62位で、両国共に所得水準に比べて低いと報告している。両国双方に必要なことは、単に所得を比較することを越えて、成長の果実がすべての人の元に返ってきて、人々がどれくらい幸せに生きていけるかどうかに神経を傾けることだ。

 
//ハンギョレ新聞社
イ・ガングク|立命館大経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr

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