北朝鮮が実際軍事挑発に踏み切った場合、南北間の一切の敵対行為を禁止した2年前の「9・19軍事合意」が有名無実化し、南北間の軍事的緊張が高まる見通しだ。

2020-06-15 13:20:56 | 南北は一つ
キム第1副部長「軍に行動権与える」…
敵対行為禁止した2年前の約束破るか

登録:2020-06-14 23:42 修正:2020-06-15 06:54

[軍事的緊張を高める北朝鮮] 
連絡事務所閉鎖後の軍事行動を示唆 
対南事業総括する実力者としての重みに 
労働新聞にも掲載され、現実化が有力紙される 
 
ビラを散布した場合、対応射撃する可能性が高く 
軍事境界線の侵入・GP復元の可能性も 
ミサイル発射するなら、短距離発射が有力

        

2019年3月2日、ベトナム・ハノイのホーチミン廟で、金正恩国務委員長に随行している金委員長の実妹のキム・ヨジョン労働党第1副部長//ハンギョレ新聞社

 韓国に対し非難攻勢を続けてきた北朝鮮が、韓国を敵と規定したのに続き、今回は軍事行動の可能性まで示唆した。北朝鮮が実際軍事挑発に踏み切った場合、南北間の一切の敵対行為を禁止した2年前の「9・19軍事合意」が有名無実化し、南北間の軍事的緊張が高まる見通しだ。

 北朝鮮のキム・ヨジョン労働党中央委員会第1副部長は13日の談話で、「次回の対敵行動の行使権はわが軍総参謀部に与えるつもりだ」とし、「わが軍隊も人民の怒りを和らげる何かを決心して断行すると信じている」と述べた。北朝鮮の総参謀部は、軍部隊の軍事作戦を担当する最高軍組織で、韓国の合同参謀本部(合参)に類似した役割を果たす。まもなく軍隊が乗り出して、韓国に対して武力を誇示する計画であることを示唆したのだ。

 今回の発言は、実際行動に移される可能性が高い。何より、キム第1副部長が最高権力者の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の実妹であるうえ、対南事業を総括する実力者という重みも加わっている。また、今回の談話が、全北朝鮮住民が読む「労働新聞」に掲載されたことからも、単なる脅しとは考えにくい。キム第1副部長は、北朝鮮軍がいつ行動に出るかは具体的に言及しなかったが、「南北共同連絡事務所が形もなく崩れる悲惨な光景を見ることになるだろう」と警告し、「その次の我々の計画」として「総参謀部」に言及した。南北連絡事務所の撤廃→軍事行動の手順を踏むことを暗示したのだ。

 北朝鮮軍が行動に出るなら、脱北団体が北朝鮮に向けてビラを飛ばす際、これらのビラに向かって射撃を行う方式で挑発する可能性が高い。北朝鮮にとっても、対北朝鮮ビラを銃で撃ち落とすための銃撃だと主張する名分があるため、メリットがある。北朝鮮は過去何度も北朝鮮に入ってくる対北朝鮮ビラに向けて高射銃などを発射し、韓国軍が対応射撃をしたことがある。さらに、銃弾が韓国居住地域に落ち、住民が緊急避難した前例もある。脱北民団体は依然としてビラ散布の強行を公言している。

 北朝鮮軍が軍事境界線(MDL)への侵入や銃撃、地雷埋設などに乗り出す可能性もある。朴槿恵(パク・クネ)政府時代の2015年8月には北朝鮮軍が密かに非武装地帯(DMZ)内の捜索路に木箱地雷を埋設し、韓国軍の副士官2人が重傷を負った事例もある。北朝鮮が9・19軍事合意によって撤去した非武装地帯内のGP(監視警戒所)を復元することも考えられる。

 北朝鮮が西海(黄海)北方限界線(NLL)近くの海岸砲と艦砲に設置したカバーをはずし、射撃を再開したり、艦艇を送って北方限界線を越えるなど、挑発的な行動をする可能性もある。この海域では、1999年6月の第1次延坪海戦からこれまで、度重なる交戦で韓国軍将兵54人が死亡した。

 ミサイルで挑発するなら、短距離を中心に発射する公算が大きい。最近の北朝鮮のメッセージが主に韓国を狙ったものであるため、射程距離が朝鮮半島を越えないミサイル発射に集中するものと見られる。グアムやハワイ、米国本土まで飛んでいく中長距離ミサイルの発射は、米国を刺激する可能性があるという判断から、当分は自制する可能性が高い。核実験も、豊渓里(プンゲリ)施設の復旧が必要な上、対米メッセージ用であるため、直ちには再開しない見通しだ。
パク・ビョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする