ブログ:新しい「農」のかたちリンクで、7月から8月まで、山下一仁著「農協の大罪」リンクという著書を扱ってきた。
今回は、戦後の歴史の中で、農協はどのような位置でどのような役割を果たしてきたか。そしてどんな弊害をもたらしてきたのかをあらためてまとめてみた。
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◆第一弾
農協シリーズ第1弾 「農協(=農業会の看板の塗替え)」の誕生秘話 リンク
<戦前>
「産業組合」:組合員のために肥料などを購入する“購買事業”、農作物を販売する“販売事業”、組合員への融資を行なう“金融事業”などを行う。
「農会」:地主・篤農家によって“農業技術の普及”や農政レベルの“土地改良”を担いながら、地主階級の利益を代弁するための政治活動を進める組織。
→第2次大戦中に、この2つの組織は統一され「農業会」となる。
(食糧管理法に基づく)農作物の一元集荷、農業資材の一元配給、貯金による国債の消化などを行なう、“国策代行機関”として機能した。
<戦後>
戦後に「農業会」はGHQによって解散される。戦後GHQと政府によって「農地解放」が行われた際、再び農地が特定の誰かに集積しないよう、予防措置として作られた。GHQは政府から独立した組織を形成しようと試みたが、食管法維持のため、政府の強い影響の及ぶ組織とならざるを得なかった。それが「農協」。“農業会の看板を塗り替えただけ”と揶揄される。
「農業の近代化の推進」…というのを大義名分に、実際には組合員を消費者と見立てて、農業機械と農薬・化学肥料を売りまくった。加えて、圃場整備事業(農業土木)で地元のゼネコンを儲けさせてきた。
今や農業生産に関する割合は低く、「金融機関」「巨大総合商社」「圧力団体」などの顔ばかりが際立っている。
◆第二弾
農協シリーズ第2弾 「日本の農業の現状」 リンク
ミニマムアクセス米は2001年から交渉が続いているWTOドーハラウンドで、さらに5%上乗せし、120万トン以上に拡大する方向で交渉を進めている。
【何故か?】
800%近い関税の削減を最小限にとどめ、高い関税を維持したいから。すなわち、国内の高い米価を維持したいから。
【高い米価は誰のため、何のために必要なのか?】
それは農協にとって米価が高ければ販売手数料も高くなるし、肥料や農薬も高く売れ、また、手数料も稼げるから。
【高い米価は何で維持されているのか?】
水田の4割で米を作らないという減反によって。これは市場への供給制限をしたり高い価格を維持したりする行為。
政府は毎年2000億円、累計で7兆円にも上る補助金を出して農家を減反に参加させている。補助金を負担するのは納税者でり、納税者の負担によって高米価を実現し、消費者の負担を高めているというナンセンスなことをやっている。
→結果、ますます米の消費が減り、高価格を維持するために減反面積を増やす…という負のスパイラルを続けてきたのが、日本の米農家衰退の直接原因である。
◆第三弾
農協シリーズ第3弾 誰が日本の農業を衰退させたのか? リンク
日本の農業を衰退させたのは減反ともう一つ、農地の転用である。
農振法で農用地区域の転用は法律で禁止されている。
しかし、実際には、農業委員会によって見直しが行われ、農家から転用計画が出される度に見直されていっているのが現状。
これにより、せっかく圃場整備した農地も、宅地や工場などに転用され、虫食い状態に。農地はどんどん減っていった。
転用されると、土地の値段は跳ね上がる。個人農家は、いつか地価が上がって儲けられると考え、片手間で農業をやって土地を手放さない。これが、やる気のある農業者への農地の集約を遅らせ、日本の農業を停滞させた。
加えて、度重なる転用によって農地が減って行くということは、直接的に農業が衰退して行くことを意味している。
このように、日本の農業を直接的に衰退させてきた農協は犯罪的。
◆第四弾
農協シリーズ第4弾 農協の大罪 リンク
農協は、金融業としても巨大な組織を持つ。
政府から農協組合員に支払う米代は莫大な資金となるが、全て農林中金に集中する。また政府からの莫大な補助金も、農林中金を経由する。
兼業農家の農業外所得や、農地を転用して得た組合員の資金の多くも農協系金融機関に集中する。
農協系金融機関は、これらの莫大な資金を運用して金を儲ける、という構造が成立する。
しかし、日本のバブルで踊った農協系金融機関は、大穴を空けることになる。
それで懲りたのかと思いきや、再び世界バブルで踊ってまたもや立ち直れないほどの大穴を空けた。
◆第五弾
農協シリーズ第5弾 農政トライアングルとは何か? リンク
農政トライアングルとは、自民党が票を集め、農水省が予算を取り、農協が自分達に有利な政策を通してもらうための上部構造。
利権構造から生まれた政策が日本農業をダメにしているが、実際に衰退したことでこのトライアングルも崩れつつある。
◆第六弾
農協シリーズ第6弾…農業で生きようとしているまともな農家のための政策を! リンク
兼業農家の優遇は、政治的に有利だから行っているだけであり、結果的に日本農業界の衰退に繋がる政策ばかりになっている。
本当に「食料自給率向上」「農業の振興」を考えているのなら、まともな農家のための政策をきちんと打たなければならない。それができるよう、根本的な方針転換をするなら農協は生き残れるだろうが、それできない限り農協は潰れるしかないのではないだろうか。
この本で気になるのは、山下氏の出身である農水省へのツッコミが甘いところ。
農水省は、一般農家はそっちのけで予算獲得の縄張り争いに明け暮れ、結局、日本の農業の自滅に手を貸した、という意味で犯罪的だと思われる。こちらももっと総括しなくてはならないのではないだろうか。
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