えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

:「ナンセンスギャグ漫画集 珍・妙の巻」 諸星大二郎

2010年03月11日 | 読書
吉田日出子の歌に酔っている間、「なおざりダンジョン」(こやま基夫)の新刊と
諸星大二郎の新刊が同時に出るとは思わなかったです。
しかも今回はナンセンスものに絞った選集で。
今回は雑誌が見つからなくて読めなかったり(「蒼ざめた機械」「星に願いを」など)、
別の本に掲載されている都合(「猫本」「猫本2」とか)でばらばらに収録されていた
昨今のまんがを一冊に収録した作品です。もちろん、昨年3月に雑誌「ユリイカ」にて収録
された雑誌投稿初受賞作「硬貨を入れてからボタンを押してください」も写植を貼られてば
っちり収録されています。

今回の収録は70年代から80年代にかけて集中的に描かれたものを中心にナンセンスのひとく
くりをされていますが、だいたいのお話の「のり」というか、諸星大二郎という漫画家の
特徴的な濃い線がコミカルなタッチで抑えられている分、プロットの作り方に集中して
読むことができるという点が特徴です。たとえば「妙」に収録されている「禍れんだあ!」
という短編では、カレンダーといっしょにうっかり壁紙まではがしてしまい、モノが雪崩れて
すっかりぐちゃぐちゃになったところで心配した下宿の人々が押しかけてくる。
カレンダーをはがしそこねたと言いかねてウソをついてしまう主人公だが、そのウソが
現実になってしまい…と文章にすると味気ないのですが、諸星大二郎はいともあっさりと
ぐちゃぐちゃになった部屋と下宿とトラブルをひとまとめにして7ページに納めています。

以前、「栞と紙魚子」がドラマになった際の本人のインタビューに、のほほんとした
自侭なテンポで答えていた口調そのままを漫画にしたような、知らん顔で人を食ったような
間の外し方が多くの漫画のオチにあらわれているのです。
おーざっぱにオチをつけたのだろうなーという作品もなきにしもあらずなのですが、
そこはまたご愛嬌。というかご愛嬌が7割。いいんです、読めれば。

次はSFか「幽」の選集が出てくれると嬉しいです。

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