不思議の国のアリス、十五少年漂流記、怪盗アルセーヌ・ルパン、ハックルベリーフィン、宝島、岩窟王、アイバンホー、三銃士、彼は図書室の本棚にいろいろな本の背名を眺め、それらが読まれるまではあたかも他人の家がそこに建っているようなズシリとした感覚を覚えた、またそれらをすでに読んだ上級生がはるかかなたの大人のように思えた、しかし読後に少年らしい感動や憧れからは何故か遠い感想を持った、それらの物語は日本でも外国でもどこか異次元の出来事のように映った、偉人伝の中にもその赤貧洗うが如し、と言うような記述は、実際は彼の周囲にさえありえないものだった、つまり彼は少年期の読書によって、その教育的効果とは別に、ただあるがままの自分の境涯にリアルな確信を持ったというに留まった、
実際、これらのフィクションは彼を想像と冒険の世界に誘うというよりは、相変わらず苦痛で荷が重い学校生活を思い出させて憂鬱になるという結果しか生まなかった、
実際、これらのフィクションは彼を想像と冒険の世界に誘うというよりは、相変わらず苦痛で荷が重い学校生活を思い出させて憂鬱になるという結果しか生まなかった、