実績流量から決めた定数の適用範囲についての制約がわからない。マニュアル「中小河川計画の手引き(案)」にも記載がない。
仕方がないので、マニュアルの検討例と辰巳ダム計画の例を比較してみる。
「中小河川計画の手引き(案)」では、貯留関数法による基本高水検討例p.183では、定数を決める際の実績ピーク流量は306~626立方メートル毎秒であり、基本高水流出計算結果のピーク流量は773~1607立方メートル毎秒である。このうちの最大流出量の1607立方メートル毎秒を採用しているわけではなく、「流量確率を検討していないので、基本高水ピーク流量は流出計算結果からカバー率50パーセント程度(中央値)の値を採用する方針とする。」p.189として、1045立方メートル毎秒を採用している。
実績306~626立方メートル毎秒の3.4~1.7倍で平均2.2倍となる。
これに対して、辰巳ダム計画では、(基本高水ピーク流量1750の既設2ダムの調整後のピーク流量は1460)
実績220~352立方メートル毎秒の6.6~4.1倍で平均5.1倍となる。
実績の2倍程度の流量であれば許容できる精度におさまるということと理解していいのだろうか。辰巳ダム計画の5倍はどうなのだろうか。
辰巳ダム計画では、さらに科学的根拠をないがしろにして大胆に決めている。基本高水ピーク流量は、1750立方メートル毎秒であるが、これは、平成7年8月30日型降雨で計算して求めた1741立方メートル毎秒をまるめた数値である。この平成7年8月30日型の降雨にもとづいて、基本高水ピーク流量を決定しているのである。
この実績降雨は、2日雨量156.6mmであり、毎年発生する程度のよく有る雨である。犀川大橋基準点の直上流にある下菊橋測水所の実績最大流出量は、34立方メートル毎秒だった。あまりにも小さいので、定数の検証の対象外で、検証されていない。そして、この平成7年8月30日型の降雨を引き伸ばしたデータで、定数の検証した範囲をはるかに超えるところに位置する予測値を算定しているのである。つまり、実績流量は検証範囲のはるか下、予測値は検証範囲のはるか上なのである。
これを検証という科学的な手法にもとづいた技術といえるのだろうか。嘘とまではいえないが、作意を持った人が使えば、詐術か、魔術になりかねない。
平成7年8月30日に小さな雨があった。たまたま、過去に小さな雨があったので、将来、有史以来発生したことのないような大洪水が発生するというのである。むかし、聞いたおぼろげな逸話を思い出した。一枚の葉っぱが落ちて池に小さな波紋を起こして、そのゆらぎがつぎつぎに波及して最後には世界大戦争になった。
まるで、サイエンスフィクションの世界である。
2012.10.14,naka
仕方がないので、マニュアルの検討例と辰巳ダム計画の例を比較してみる。
「中小河川計画の手引き(案)」では、貯留関数法による基本高水検討例p.183では、定数を決める際の実績ピーク流量は306~626立方メートル毎秒であり、基本高水流出計算結果のピーク流量は773~1607立方メートル毎秒である。このうちの最大流出量の1607立方メートル毎秒を採用しているわけではなく、「流量確率を検討していないので、基本高水ピーク流量は流出計算結果からカバー率50パーセント程度(中央値)の値を採用する方針とする。」p.189として、1045立方メートル毎秒を採用している。
実績306~626立方メートル毎秒の3.4~1.7倍で平均2.2倍となる。
これに対して、辰巳ダム計画では、(基本高水ピーク流量1750の既設2ダムの調整後のピーク流量は1460)
実績220~352立方メートル毎秒の6.6~4.1倍で平均5.1倍となる。
実績の2倍程度の流量であれば許容できる精度におさまるということと理解していいのだろうか。辰巳ダム計画の5倍はどうなのだろうか。
辰巳ダム計画では、さらに科学的根拠をないがしろにして大胆に決めている。基本高水ピーク流量は、1750立方メートル毎秒であるが、これは、平成7年8月30日型降雨で計算して求めた1741立方メートル毎秒をまるめた数値である。この平成7年8月30日型の降雨にもとづいて、基本高水ピーク流量を決定しているのである。
この実績降雨は、2日雨量156.6mmであり、毎年発生する程度のよく有る雨である。犀川大橋基準点の直上流にある下菊橋測水所の実績最大流出量は、34立方メートル毎秒だった。あまりにも小さいので、定数の検証の対象外で、検証されていない。そして、この平成7年8月30日型の降雨を引き伸ばしたデータで、定数の検証した範囲をはるかに超えるところに位置する予測値を算定しているのである。つまり、実績流量は検証範囲のはるか下、予測値は検証範囲のはるか上なのである。
これを検証という科学的な手法にもとづいた技術といえるのだろうか。嘘とまではいえないが、作意を持った人が使えば、詐術か、魔術になりかねない。
平成7年8月30日に小さな雨があった。たまたま、過去に小さな雨があったので、将来、有史以来発生したことのないような大洪水が発生するというのである。むかし、聞いたおぼろげな逸話を思い出した。一枚の葉っぱが落ちて池に小さな波紋を起こして、そのゆらぎがつぎつぎに波及して最後には世界大戦争になった。
まるで、サイエンスフィクションの世界である。
2012.10.14,naka