犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

ダム問題>「緑のダム」効果に関するニュース

2012年10月10日 | ダム問題
――400mmを超す豪雨でも森林の保水力が増加する――

 ほどんどの河川工学者はといってはなんだが、当方は、最近まで、洪水とは地表面を流れて川へ溢れてくる水であると信じていた。降雨の当初は、地中へ浸透していくが、降雨が継続して地表の土壌が飽和状態になると降った雨の全量が地表を流れて川に到達し、これが洪水をもたらすものと考えていた。洪水の最大流量を計算する手法である、貯留関数法では地表の土壌の間隙が雨水で満たされ、飽和雨量に達した後は、降雨のすべてが地表を流れ出すと説明されている。

 それが間違いのようだ。ある水文学者によると「洪水時の川水の大部分は地下水である」※1 のだそうだ。つまり、豪雨が降ってもすべて地中へ浸透する。そして、どれだけの豪雨であっても、地表流は発生せず(道路など表面から浸透しないところは別だが。)、地中へ浸透し、降雨が強くなるにつれて土壌中に貯留される量も増えるという。これを証明する一つの研究成果が発表された。降雨が飽和雨量に達した後は、全量流出するとの仮定はまちがいだということだ。

 その研究成果発表に関する情報が、以下のブログで紹介されている。
http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/da6f3c16a35f2ede3b413981a3662a71

 毎日新聞 2012年09月25日 西部朝刊「緑のダム:効果、大雨時ほど鮮明 東大演習林で観測、400ミリ超でも貯留量増加」である。
 東京大学付属演習林(愛知県)の観測データの解析結果で「森が降った雨をためて洪水を緩和する『緑のダム』効果が、時間雨量30ミリ以上の強雨時に顕著に表れ、総雨量400ミリを超す大雨でも頭打ちにならない」ということが明らかになったとのことです。
 これを紹介する新聞記事は、以下のとおり。
http://mainichi.jp/area/news/20120925ddp041040009000c.html

※1:「地下水の世界」筑波大学教授 榧根勇(かやねいさむ)74~76ページの内容を以下に転載。
水文学のような地味な学問でも、ときたま新発見がある。「洪水時の川水の大部分は地下水である」という発見もその一つである。ただしこれは、特定の個人による発見ではない。地下水に限らず地球科学では、多くの研究成果の集積によって、徐々に透明度が増してきたという類の「発見」が多い。
ロバート・ホートンは、水に関する多彩で独創的な研究をしたことで知られる、アメリカ水文学の父とも言われている人である。アメリカ地球物理学連合のホートン賞は、彼の業績を称えて設けられた。
その彼が「考えた」概念の一つに地表流がある。これは後にホートン地表流と呼ばれるようになった。雨が降ってから洪水が発生するまでのメカニズムについて「考えて」みよう。土には雨を吸収する能力がある。この能力を浸透能という。浸透能は雨の降り始めのときに大きく、降雨時間の経過とともに小さくなる。降雨の強さ(単位時間に降る雨の量)が浸透能(単位時間に雨を吸収する能力)よりも小さければ、雨はすべて土に吸収されるので、ホートン地表流は発生しない。(中略)逆にいえば、浸透能よりも強い雨が降ったときだけホートン地表流が発生する。洪水はそのような地表流が川へ集まったものと考えられていた。(中略)
このホートンの「考え」に間違いはなかったので、洪水はそのようなメカニズムで発生するものと信じられてきた。ところが実際に「観測」してみると、湿潤温暖地域の森林流域では、豪雨時でもホートン地表流は発生しない。一般に、森林斜面の浸透能は豪雨時の降雨強度よりも大きいのである。
このことは、同位体による水循環の追跡によっても確かめられ、動かない事実となった。(中略)世界中のいろいろな森林流域で調査された結果によると、川水の大部分は、洪水のピーク時においても、地下水から供給された、水で占められていた。
もちろん山地森林流域内には、水面や湿地や道路など、雨水を地中に浸透させない部分もある。しかし、そのような非浸透性の地表面の面積比率は、合計しても普通は流域面積の10%にも満たない。計算結果から、地下水以外から供給された水は、非浸透性の地表面上に降った雨であることもわかった。
河川水の大部分は、一度は土や岩石の中を通過してくる。
2012.10.10,naka
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