2007年4月6日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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服部さんの「和声学あれこれ」ももう8回目となります。皆さんにはどの様に受け止められているのでしょうか?つまらない?難しい?参考になる?よろしければ率直なご感想などお寄せ下さい。また、4月22日(日)にはミューズサロン講座で『初級者のための和声基礎講座』~第1回和声の成立ちと主要3和音~が開かれます。こちらは3回シリーズでお願いしています。ご興味のある方は是非ご参加ください。不明な点などは直接質問も出来ますよ。さあ、では今日の服部さんのお話です。(山下)

和声学あれこれ(8)「安定・不安定・・・限定進行音」

主要三和音のI,IV,Vの性格を説明する時、よく「Iの主和音は安定感があり、IVの下属和音はやや不安定、Vの属和音は不安定であり、故にIVは I又はVへ、VはIへ進行(解決)して安定する」と解説がなされていますが、ではいったい何が不安定なのでしょうか?
今回はこのことについて私見を述べてみましょう。

いつものようにハ長調やイ短調で作例しますので、時間のある方は色々な調に置き換えて確認することをお勧めします。
さて、図1のハ長調やイ短調の属和音(V)は図2のト長調とホ長調の主和音と何が違うのでしょうか。そうなのです、この和音は全く同じ響きで、前後のないこの一種類だけでは安定も不安定もありません。しかし、或る調の中で響きますと途端に安定感や不安定感が醸し出されてきます。それは何故でしょうか。それは様々な和音が連なって時間と共に流れていく過程で、即ち前後の響きの中で相対的な各々の和音の性格が決定されていくからです。それが冒頭の説明なのです。ではなぜ属和音と称される和音が一番不安定と云われるのでしょう。それはその調の属音をベースにした和音に導音(シ・短調ならソ#)が含まれているからです。図1

このシまたはソ#即ち、音階の最後の音は音階の最初の音即ちドまたはラの主音へ心理的に進行(半音進行する力)を秘めていると、昔から感じられていました。
それで主音へ導く音というわけで導音と名付けられました。 
従って、導音を含む和音は主音を含む和音へ進行すると非常に安定感が得られるが故に導音を含む和音は不安定であるという考え方が定着しました。図3
さらにこの不安定感を助長するために第7音(根音から短7度)のファまたはレも付け加えるようになりました。ファ(レ)は半音下ってミ(ド)に、進行する感じをもっています。図4
属七の誕生です。いまでは更に根音から数えて9音目のラ♭(ファ)の属九の和音も使われます。ラ♭(ファ)も半音下ってソ(ミ)へ進行します。図5
これらの動きを制限された音のことを「限定進行音」英語でトライトーンといいます。  
但し、何にでも例外というのがあり、これらの限定進行音が内声にある場合は必ずしもそのような進行をしなくても良い事になっています。しかし外声ではいまのところ必ず守りましょう。図7

さてもうひとつ、限定進行ではありませんが、ベースにある属音のソ(ミ)は四度上行(五度下行)して主音に進行することを「強進行」といい、これも安定感のある動きです。図4・5
また、下属和音のベース音ファ(レ)が四度下行(五度上行)して主音に進行することを弱進行または変進行といい、これらも大事な和音進行です。図6
限定進行音の含まれる和音は属和音系(図8)に多いので編曲や作曲する時には特に注意を払いましょう。次回は「和音連結の定石・・・・カデンツ」についてです
                                   服部修司


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