それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

相対性理論のミス・パラレルワールドの解説

2010-12-28 16:48:00 | コラム的な何か
みなさん、特段興味はないと思いますが、今日は相対性理論の「ミス・パラレルワールド」の構造を少し分解してみたいと思います。

この曲は僕が今年イチオシの曲のひとつでしたが、どういう構造になっているのか分解しながら、その魅力に迫りたいと思います。



1、コードとスケール


ではまず、ミス・パラレルワールドのコードを耳コピしてみたので、それを見てみましょう。

イントロ
G♭M7 A♭ B♭m

Aメロ
E♭m9 Fm7 G♭ B♭m

Bメロ
A B E A B G#

サビ
BM7 C# D#m

適当に耳コピしたので、普通に間違っているかもしれません。


*イントロのコードは、ベース音からすれば違うと思う方もいると思いますが、あれはベースのラインの問題で、コード自体はこの3つの展開であっていると思います。

*M7とか9とかは、ここでは厳密には考えていません。



ここから次のようなことが分かります。

まず、イントロのキーはD♭。それ自体は特別ではありません。

押さえておきたいのは、イントロのコードの展開で、これがIV⇒V⇒VI。

いわゆる、ポップスやロックでよく出てくる展開なのですが、非常に味が強い。ベタな感じになりやすい展開です。

この曲の特徴は、転調しながらこれが繰り返される点です。味が強いコード進行をとにかく押してくる。

さらに、イントロで耳を引くのがペンタトニックのスケール。いわゆる五音音階です。東アジアっぽい音の響きです。

相対性理論は、とにかくこのペンタトニックをやたら使います。それがこのバンドの特徴です。



次にAメロですが、ここでのキーもD♭。

コードの進行は、II⇒III⇒IV。普通です。味が強いイントロの展開を維持しながら、一旦おさめる進行という感じでしょうか。



興味深いのはBメロで、Aメロから上に2度転調してE♭になります。

2度上の転調はいわば浮遊感が強い効果を持ちます。

味の強いイントロから、それを維持しつつ、少し抑えたAメロ。このストレートな展開を2度の転調で浮遊させます。

浮遊させることで、サビへ展開する力をためます。

すなわち、サビに展開したときに、浮遊している間にたまった力を一気に解放し、聴き手に溜飲を下げさせる狙いです。

浮遊している間もコードはIV⇒V⇒VI。

先に言っちゃいますが、サビもこの展開で、イントロ=Bメロ=サビ、ということになります。

浮遊しながら、調違いで同じ進行をすることによって勢いを維持し、サビにつながりやすいようにします。




ここから、サビで上に短3度転調転調してF#。そして、コードはまたIV⇒V⇒VI。

短3度上の転調は非常によく使われるもので、きれいです。

テンションが一気に上がる展開と言えるでしょう。

さらに、サビのメロディ「パラレル、パラレル、パラレル・・・・ワールド」は見事なペンタトニック。

そこにほぼ一貫した味の強いコード進行。

まさに相対性理論らしさ全開です。



2、リズム

「ミス・パラレルワールド」のリズムは、全体に少しバックビートが強め。

ちょっとファンクっぽいです。

イントロはまさにそういう感じで、Aメロはその展開を抑えます。

Bメロは完全にバックビートが弱く、浮遊感全開。

サビはファンクっぽいバックビートの強いリズムでがんがん押してきます。



3、歌詞

最後に歌詞を分析してみましょう。

Aメロの最初はこうです。

「秘密の組織が来て 8時のニュースが大変 都会に危機が迫る 巨大な危機が迫る」

わずかに韻を踏みつつ、内容は完全にファンタジーです。

聴き手はまず「秘密の組織って?」と思うでしょう。

次がポイントで、Aメロはさらにこうなります。

「暇ならわたしと来て こわれた世界を体験 時代の危機が迫る 希代の事態となる」

暇ならわたしと来て、で聴き手はちょっと惹きつけられます。どういうわけか、来るように呼びかけられてしまったわけですから。


Bメロでは、浮遊感に合わせて場面が大転換。

「放課後 ふとよぎるテレパシー(シンパシー) 
わたし 遠い未来にあなたとまた出会う」

浮遊感が「テレパシー」という語句とぴったり合っています。

そのあと、「あなたとまた出会う」と来るので、また聴き手は呼びかけられているわけですが、さっきの「わたしと来て」よりも、「また出会う」は運命に引き寄せられる印象が強い。

運命といった何か巨大な流れを連想をさせつつ、次のサビの怒涛の展開を待つ音の状態が、パラレルな関係にあるように見えます。


サビは、

「東京都心は パラレル パラレル パラレル パラレル パラレル パラレル ワールド」

とにかくパラレルを繰り返しまくります。同じ言葉を何度も繰り返すことには非常にインパクトがあるだけでなく、

パラレルの音の響きと3つのコードの繰り返しが混じって、ぐるぐる回っている感じを聴き手に与え、タイムスリップするようなファンタジー感を生じさせているように思えます。



4、結論

この曲の特徴は強い味のコード進行です。この味の強さはアニメっぽいです。

そして、歌詞の内容もファンタジー。

かなり二次元感が強いと言えます。それにボーカルのアニメ声が混ざるから、もはやこの曲全体がアニメと言っても過言ではない。

そういう意味で日本のポップカルチャーらしいし、それを求める大衆がいるので需要もある。

しかし、これだけ濃い構造にもかかわらず、転調とリズムのメリハリが巧みなので、聴き手を飽きさせないようになっています。ここがポイントです。

架空のインタビュー年末スペシャル:自分総ざらい

2010-12-27 19:39:16 | 日記

―――― この世界に入ったきっかけを教えてください。

M:
幼稚園に入った頃から、「自分」と「家」と「世界」の間の違和感がすごくあって、小学校に入ると、その違和感がいよいよ大きくなってきて、特に「自分」と「世界」の間の違和感は恐ろしいほどの大きさになってて。

そういうことを感じている子供って、おそらくかなりいると思うんだけど、たぶん僕はそれが言うほど大きくなかったから、学校に行くのを止めるとかは言いださなかったんだと思うんです。

ところが、中学に入って思春期がはじまるといよいよ、頼りの「自分」にまで違和感が出てくるようになって、もう自分の居る場所が分からなくなってくるところに、音楽が登場してきた。

高校に入って、音楽というものだけじゃ、もうその違和感をどうにも出来なくなってきたとき、社会科学っていうのが登場して、僕はどうにか違和感に負けることなく生活してこれたのだと思うんです。

大学で研究がいよいよ本格的に始まって、研究で生活していくかどうかの岐路の時に、もう一度、小さい頃から感じてきた「違和感」をどうしたものか考えるようになって。

社会科学の研究が自分にとってものすごくしっくりきたのは、間違いなく自分と「自分」に対する違和感と、「世界」に対する違和感の秘密を解き明かせそうだったからだし、同時に、「研究」という行為がその違和感からの最良の逃避方法だって、幼稚園の頃から身に染みて知っていたんで。

幼稚園の頃から、とにかく家で思索にふける、というか、何かを作ったりしていて、それは間違いなく、違和感のある「世界」からの逃避であって、同時に、自分が自分であることを確かめる唯一の方途だったとのだと思うんです。

だから、ちょっと外に出ると色々なことが刺激になるというか、おそらく自分にとっては外の世界は違和感だらけだから、考えることばかりになってしまう。

そういう外に出る行為というのは刺激的すぎて、自分の精神がハイになるのをコントロールできなくなることがよくあって、ハイになりすぎると今度はローになりすぎるわけで、その兼ね合い、バランスということに気を配りながら生きているというか・・・。

おそらく、僕はそういうバランスをとる生活全体を研究生活と呼んでいるのだと思います。



―――― 一見すると、非常に孤独に見えますが。

M:
孤独というものは、「孤独ではない状態」、つまり誰か一緒にいて心のつながりがある状態の反対のことを指していると思うんです。

一番の孤独は、人の中にいるのに心のつながりが全く無い状態とよく言いますが、自分の研究生活はそういう状態ではなくて。

むしろ、人と話していて、自分の世界の話が全然通じなかった時の衝撃を周到に避けているというか。

自分のこれまでの人生を振り返ると、そういう衝撃だらけなんです。

差異を意図的に生み出そう、アイデンティティを維持しようという動きだけじゃなくて、本当に、話していてコミュニケーション不全になるというか。

だから、コミュニケーションが取れてしまうと、それでもういきなり「親友」のつもりになってしまうというバランスの悪さです。

そういうハイな状態もできるだけ避けようとは思っているのですが・・・。しかし、それも避けてしまうと、いよいよ孤独になってしまう(笑)

ジレンマなのは、本当に世界の「違和感」を感じなくなったとき、僕はおそらく研究の動機が無くなってしまうんじゃないかと思うんです。

つまり、孤独ではなくなって、自分が世界に受け入れられていると強く思いすぎると、おそらくかえって良くないっていう。そういう意味では、ちょっとだけ孤独を維持して行くべきなんだと思うんです。



―――― 今のプロジェクトも大詰めだそうですが。

M:
辛い時期に入って長いこと経ちました(笑)道筋ははっきりしているのですが、精神と体力の勝負といったところです。

毎回、プロジェクトごとに思うんですが、「これはすごい研究だなあ、読んで欲しいなあ」と思う自分と、「たぶん、誰も分からないだろうな」と思う自分と、「そんなに注目しないでほしいな」と思う自分と、色々矛盾しているんです。

だから「研究読みましたよ」って初対面の人から言われると、すごく怖くなる。え、なんで?って思ってしまう。そして、「伝わってる?本当に」って。同時に、「もうちょっと待ってくれ、全貌はまだなんだ」とかも思う。でも、話してもきりがないので、当たり障りのない話に逃げてしまう。

面倒です、自分。いずれにせよ、できるかぎりの力で公にするように頑張りたいと思っています。




―――― 今後の展望などお聞かせください。

M:
架空とはいえ、インタビュー項目がおかしい(笑)

自分にとって少しだけ不安なのは研究のことです。ひとつは、研究が完成してしまったらどうしようという不安と、もうひとつは、研究が完成しなかったらどうしようという不安です。

要するに、どうなって不安なわけです(笑)

自分のプロジェクトは一応、予定では一生分ちゃんと問い続けられるはずなんですが、だとすれば、結局、このふたつの不安はいつもあることになる。

ただ、やっぱり自分のプロジェクトは、非常に細かいプロジェクトの集積ですから、その集積がひとまとりになってもらいたい、という気持ちはいつもあります。

そうしないと、おそらく僕が今考えていることを誰も理解してくれなくなってしまう。

人のプロジェクトって、口頭で聞いても本質的にはなかなか理解できないんです。やっぱり、所詮は他人の頭のなかですから。

だから、どんどん書いていかなくてはならない。しかも、人から見れば何の意味もないようなデータの山から、証拠をどんどん集めながら。そういう作業が自分を支えていると思います。

刺激物フリーな生活を

2010-12-27 18:21:26 | 日記
午後、お茶を飲み過ぎると(2杯くらいで)一時的にかなりの鬱状態に陥るのはどうしてなのか。

昔から刺激物に弱い。

今日の話で最も面白かった話題のひとつが、「終わりなき日常を生きる」の意味反転、についてだったのだが、僕はまさにこの意味反転後の世代の代表だ。

Udon, Once Again

2010-12-27 17:42:14 | 日記
また、うどんを作った。

昨日は家の大掃除をしたのに、うどんを作った。

大掃除はとても楽しかった(ひとりだったけど)。

それを最初に汚すのは、やはり掃除をした人でなくてはならない。

別にそのためではないのだけれど、うどんを作ることにした。



おそらく、僕はうどんが好きなんだと思う。

前回、美味しくなかったと書いたが、やはり納得いってなかった。

自分でだって、きっと美味しいうどんが打てるはずだ。

材料の問題はあるだろう。しかし、うどんはやはり技。

そばと違って香りの勝負ではない。

そりゃもちろん、麦の良い香りってのはあるだろうけれど、むしろ食感とのどごし、噛めば噛むほどじわじわ出てくる甘さが、うどんの持ち味だ。

自分のイメージに到達したい。

そう思っていたら、いてもたってもいられなくなって、もう一度うどんを打つことになった。



前回の反省は以下の通り。

うどんの生地のなめらかさが足りていなかった。

原因として考えられるのは、①踏み方が悪かった、②熟成時間が足りなかった。

水の量はそれほど問題ではなかったと思うのだが。

さらに、茹で方が悪かった。

原因は、①鍋が小さかった。ゆえにお湯が少なかった。②切り方が雑で太かった。③伸ばし方が十分ではなかった。分厚かった。

そして、つゆが駄目だった。

味噌味よりも、醤油味。豚よりも鶏とカツオ。

このすべてを解消すれば、きっと美味しいうどんができるはずだ。

そう思い、うどんを打った。



今回のレシピは、小麦粉500g、水225g、塩25g。

二回の踏む工程のあと、丁寧に手でこねてみる。

出来てきた繊維を確かめるように、ゆっくりこねる。

まるめ終わったら、少し暖かいところで十分熟成させる。



そうこうしていると、Tさんからメールがあってお茶をしようという。

「うどんを作っているから来ませんか」とメールすると、「行きます」と返事が。

僕の無茶なメールに、ありがたい返信。

Tさんは、うどんを作っていると言ってたけど、まさか、うどんを粉から打っているとは思わなかったらしい。

少しだけ驚くTさんをしり目に、生地をのばしにかかる。

3mm程度まで薄く伸ばしたら、折りたたんで、できるだけ細く切る。

それでも結構太い。とはいえ、前回よりはるかに良く出来ている。繊維の感じもかなりなめらかだ。

一番大きな鍋に水をたっぷりはって、ちょっとだけお酢を入れる。こうすると、麺が崩れにくくなるとか。

沸いたら、麺を半分入れる(250グラム分)。これが限界だろう。

12分ほどで茹であがったので、お湯から出し水でしめる。

なめらかで、つやのある麺だ。

その間に温めておいた、鶏と鰹節とネギなどの出汁と併せて、Tさんとともに食べた。

合格点。

ようやく出た合格点。

まだ改良の余地はあるだろうが、これなら自分で打つ意味がある。

うどん、深い・・・。



その間中ずっと、Tさんと格闘技から音楽から何から何まで話す。

とにかく面白い。何でも打てば返ってくる頭の良い人。

僕の無茶苦茶な音楽の話でも文化の話でも何でも大丈夫。

この人はすごい。すごすぎる。

毎回、いろんなインスピレーションをもらう。

今回もとても勉強になった。

勝手に音楽ベストヒット2010(邦楽のみ)

2010-12-25 19:35:15 | コラム的な何か
みなさん、こんにちは。

クリスマスって、イブにカップルで過ごした場合、翌日(つまりクリスマス当日の夜)、ひとりで過ごしたり、家族と過ごしたりしてもいいものか迷う今日この頃です。

と言っても、今年の私には全く関係ありません。私はここにきて研究のエンジンがフル回転しています。

今日のタスクをかなりこなしたので、毎年恒例(ウソ)の「勝手に音楽ベストヒット」をお送りします。

今年も色々な曲を私は聴きました(どうでもいい)。そのなかから、各部門ごとに賞を授与していきたいと思います。

別に今年発売されたとは限りません。下手すると古い曲がセレクトされます。洋楽を入れると選ぶのがかなり面倒になるので、邦楽に限ります。要するに、僕が今年聴いた邦楽曲です。



では、早速最初の賞の発表に入りたいと思います。

■「なんかツボにはまっちゃって無限リピート」大賞

受賞は・・・・

「普通の恋」 菊地成孔 feat. 岩澤瞳  

です!

授賞理由:
菊地成孔のSpank Happyというプロジェクトが、渋谷系の発展型のようなシャレオツなサウンドに乗せて、かなり毒のあるラブソングを歌いあげました。

とにかく詞がいい。詞が秀逸。心に問題を抱えた男女が見事に描かれており、その視点と描写は非常に刺激的であり、かつ説得力のあるものでした。

曲はもうかなり前のものです。でも全く古くない。古くなる様子が全くない。またこういう曲を菊地さんが作ってくれることを期待しつつ・・・、次の賞に移ります。



■「おそらく次世代のポップス」大賞

受賞は・・・・

「ミス・パラレルワールド」 相対性理論

です!

授賞理由:
曲の構造は非常にシンプル。しかし、グルーブがしっかり出ています。このバンドは一見すると非常に雑な演奏だと思われがちですが、グルーブ感がいい。

曲によってはファンクやらレゲエやらが薄めて入っています。そのセンス。

さらに、その特長として指摘しなくてはいけないのが詞の世界。二次元、ファンタジー風の世界観は、ありそうでなかった。しかも、ボーカルのアニメ声のつぶやき歌唱とぴったり。

本作もまさにこうした良さにあふれた楽曲になっています。



■「ファンクはまだ死んでないよ、姉さん!」大賞

受賞は・・・・

「Quick Sand」 Osaka Monaurail

です!

授賞理由:
良いです。とにかく良いです。非常に古典的なファンク。しかし切れ味抜群。うまい、めちゃうまい。隙がない。日本のグループでこれだけのグルーブを出せるとはすごい。

これからもどんどん聴いてみたいグループです。



■「とても上手なカバー」大賞

受賞は・・・・

「日本の人」 Sakerock + 寺尾紗穂

です!

授賞理由:
HISの「日本の人」のカバーです。オリジナルは、細野晴臣、 忌野清志郎、坂本冬美(HIS)という超豪華なメンバーで演奏されていたわけですが、このサケロックと寺尾紗穂のカバーは全く負けていないと思います。

曲がサケロックのきわめて日本的な(のんびりした)ファンク(?)と非常に相性がいい。同時に、寺尾紗穂の声ともぴったり。

このカバー自体は2年くらい前ですが、これからも両者の活躍に期待したいです。



■「ミッシェルガンエレファントが解散しても、ゆらゆら帝国が無くなっても、Jロックは不滅です」大賞

受賞は・・・・

「新しい化学」 嘘つきバービー

です!

授賞理由:
ここには色々ノミネートされていたんですが、これが勝ちました。MO'SOME TONEBENDERとか、黒猫チェルシーとか、アンディモリとか、おーっと思ったんですが、僕は嘘つきバービーが好きです。

特にこの曲は秀逸。リズムはファンクっぽい感じだけど、ノイズの具合などなどやっぱり強烈なロック。歌詞もあり得ないくらいロック。メンバーはそれぞれ手練手管。3ピースの良さが本当に良く出ています。

抽象的な言い方になってしまいますが、パンクらしい青筋立てて出てくる破壊力ではなく、「ニコニコしながら、しなやかに出てくる、ものすごい破壊力」を持った恐ろしいグループです。これこそロック。ゆらゆら帝国にちょっとだけ似ています。



■「メガネ・ロック」大賞

受賞は・・・・

「ソラニン」 アジアン・カンフー・ジェネレーション

です!

メガネ・ロックっていうジャンルがあるとか無いとか言われていたそうですね。もう古い言い方なのでしょうか。ここに入っているのは、アジカンはもとより、大御所のくるり、ゴーイング・アンダーグラウンド、ビート・クルセイダーズ(解散してしまった!)などなどが入っています。

ですから、非常に非常に競争率が高い。

はっきり言って、くるりがノミネートしまくりです。くるりが優勝していると言ってもいい。しかし、あえてアジカンです。

なぜか。「ソラニン」はマンガですが、それが映画になって、その主題歌がこれ。原作の漫画が好きで、まさかその中に出てくる詞に曲がつくとは思わなかった。しかも、それがとてもいい。人によっては、「イメージと違う!」と言うでしょう。でも、あの(若干中途半端な)詞にこれだけ良い曲をつける彼らはすごいですよ。

原作のストーリーは、この曲が軸になって展開します。原作漫画はストーリー中、この曲で奇跡を起こしたりしないという点で非常に映画化に向いています(Beckとか、20世紀少年とかと違う点)。ただ、これレコード会社に送ったら、すぐにデビューできるんじゃないかと思ってしまうわけですが・・・。



あと、残すところふたつです。

■「日本のヒップホップは進化し続ける!」大賞

受賞は・・・・

「トーキョーショック」 ライムスター feat. COMA-CHI

です!

この曲はバックトラックが非常に変わっています。変な音が沢山使われています。骨の部分の音色は非常に軽い。そこに合わせてノイズをとてもうまく使っています。

トラックの東洋風のスケールは、この曲のテーマそのもの。「西洋が自慢されたいジャパン」です。

「日本と言えばこれでしょう」とアメリカ人やヨーロッパ人が思うことを思いっきり歌いあげることで、外側からの(若干無理解な)視線への皮肉とも取れるし、日本が知らない間に築き上げてきた、「日本人の知らない日本文化」の歌のようでもある。

「日本人が知らない日本文化」と言えば、そもそも日本のヒップホップというものが、おそらくアフリカ系アメリカ人から見れば珍妙な音楽なのであって、そのジャンル自体が持つ珍妙さと、歌詞の珍妙さがぴったり(?)

アーティストのライムスターはもちろん上手なのだけれども、フィーチャーされているCOMA-CHIが非常にいい。

この人はラップもできるし、歌もうまい。フローを作るのがとても上手で、とにかくリズム感がいい。貴重な女性ラッパーであります。



そして、最後の賞の発表です。

■「まさかの胸キュン。ラブソング」大賞

受賞は・・・・

「アイ」 秦 基博

です!

この世はラブソングだらけですよ。だから、選ぶのもどうかなと思ったんです。ベタだし、多すぎるし。しかし、あえてこれを選びましたょ。

だって良い曲なんだもん(涙)どストレートなメロディと歌詞です。きれいな歌声です。

あとポイントは、これが希望にあふれた感じの、広がりのある感じの曲であるところが非常に良かった。失恋ソングとか、失恋直前ソングとか、そういう名曲って結構あると思うんです、特に最近は。

この恋愛最中で、かつ幸福感に溢れた、晴れの日の朝、しかも結構朝早い感じのさわやかな歌はなかなか無い。くもりがない。こういう歌が似合う青年になりたかった(笑)でも、なれなかった(涙)

この曲は2010年の1月に発売だったんですが、ちょうど一年近く前の冬に僕はこれを寮で熱唱してましてね。その冬のにおい、寮の暖かい空気、外のちょっとだけ凛としまった空気を思い出しますね。いい思い出になってます、もう早。

いい曲(涙)



おまけ
■「ベスト・オブ・音楽番組」大賞

受賞は・・・・

「憂鬱と官能を教えた学校TV(スカパー・フジテレビ)」菊地成孔&大谷能生

です!

この番組はスカパーなどでしか見られない有料放送です。

初回3回をイギリスにいながらにして見ましたが、すごいです。こんなすごい音楽番組みたことがない。

彼らは音楽の構造を本気で教えてきます。いわば音楽の放送学校みたいなものですが、内容が秀逸。

スケールやコードの構造を基礎から教えるだけでなく、楽曲の構造を徹底的に分解。さらに歴史、哲学をはじめとする社会科学全般の情報まで面白おかしく伝えてきます。

坂本龍一の「スコラ」の玄人版と言ったら失礼かもしれませんが、内容が濃いです。濃すぎます。音楽を本気でやっている人にも、社会科学を勉強している人にも新しい発見がきっとあるはず。

スカパーが見られない人は、このTVのもとになっている、文庫本になったばかりの『憂鬱と官能を教えた学校』(菊地・大谷)を読みましょう。

今年は既出の坂本龍一「スコラ」(NHK)や「僕らの音楽」(フジテレビ)など、非常に豊かでした。

前者は複雑で多様な現代の音楽をまとめる非常に重要な坂本龍一のプロジェクトの一環でした。

後者はライブ感、アーティストの個性(そして実力)を生かした素晴らしい番組作りを行っていたと思います。

また音楽解説・紹介番組は他にも高いレベルのものがあったと思います。しかし、そのなかでも「憂鬱と官能・・・」は群を抜いてレベルが高い。おめでとうございました。





いかがだったでしょうか。最後まで読んだあなたは偉いとしか言いようがないです。

なんとも言えない選曲だったでしょうか。それともピンときたでしょうか。たぶん、ピンと来ていないと思う。少しだけピンと来た人もいると思う。

どっちでもいいです。でも、書いておくことに意義がある。それがブログ。

では、ごきげんよう。