消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(131) 新しい金融危機への期待(131) 金融危機の12段階

2009-04-12 07:14:27 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)
  

(1) "the Emergency Economic Stabilization Act of 2008"。文字通り邦訳すれば、「緊急経済安定化法案」となるはずだが、日本のジャーナリズムでは、各自が異なった訳語を当てている。読売は、「緊急経済安定化法案」と「金融安定化法案」の二通りを併用し、朝日は、「緊急経済安定化法案」と「金融救済法案」を使っている。毎日、日経、時事、NHKは「金融安定化法案」で通している。米国のジャーナリズムでは「米国金融制度救済」(a bailout of the U.S. financial system)という表現が一般的に使われている。この名称は、財務省の最初のものでは、「財務省が住宅ローン関連資産を買い取るための法案」(Legislative Proposal for Treasury Authority to Purchase Mortgage-Relatede Assets)、それを短くした「不良資産救済法」(Troubled Asset Relief Act of 2008)であった。〇八年九月一九日にポールソン財務長官が声明で使ったTARP(Troubled Asset Relief Program) とか"bailout plan"という言葉が一般的に使われている。ブッシュ大統領は、"bailout"という用語より"rescue"を使って欲しいとしていた(New York Times, Sept. 28, 2008: Oct.2, 2008)。"bailout"には揶揄的な意味が含まれているからではないだろうか。本論では、EESAと表現する(詳しくは、鳥居[20081007])。

(2) 「ジングル・メール」とは、住宅の鍵を封筒に入れて、それを不動産ローンを供与してくれた銀行に送りつける、つまり、住宅を返還するという意味である。日本と異なり、米国ではローンは人に付くのではなく、担保に出した住宅に付くために、鍵を返却してしまえば、ローンの受け手は借金返済から免れる(BBC[20080212])。

(3) ピムコ(PIMCO)のアナリスト、ビル・グロス(Bill Gross)によれば、"Shadow banking system"という表現を最初に使ったのは、同じピムコのポール・マッコーレー(Paul McCulley)であった(Gross[20071127])。ピムコ(Pacific Investment Management Company LLC)は、 債券専門の運用会社として一九七一年に、カリフォルニア州にて設立された。安定した高いパフォーマンスが信頼を集め、設立以来三〇年を経て、世界最大級の債券運用会社に成長した。米国をはじめ、東京、シドニー、シンガポール、ロンドン、ミュンヘンに拠点を設け、グローバルにビジネスを展開し、世界中の投資家の資金を運用している(http://www.smam-jp.com/image/wn/about_pimco.html)。