消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(235) 新しい金融秩序への期待(180) システム崩壊を生み出したもの(13)

2009-10-28 04:13:08 | 野崎日記(新しい世界秩序)

質問23 これからも大変なことをしちゃってるアメリカの影響を絶対に受けるであろう日本にいる私たちですが、私は今まで自分だけがお金がないと思っていたのですが、皆も日本もお金がないことを知ることが出来ました。ほとんどないお金をなにに使えばよいのでしょうか。これから具体的になにをすればよいのでしょうか。私はまずは人間の価値観を変えることだと思います。マネーゲームはツマンナイッて思えばいいと思います。

本山先生

 まず人間の価値観を変える。ほんとうにそう思います。関西のテレビで森田実が電通の悪口を言って、長いこと干されたのです。いい笑顔というので昨日かNo.1になりました。万歳をいいました。そうなのです。顔を見るなりイヤな顔をするというあの連中でなく、ニコニコしている連中が大事なのであって、そういう人たちが愛されて評価される社会にもっていかなければならないのです。これは人間改造の問題です。京都人は、六本木ヒルは作りませんでした。うなぎの寝床、一見私ども、お金はありません。これが美意識なのです。ニコニコ、「きついこと言わはるわぁー」とかいって。京都人は人が悪いけど、がめつい顔した京都人はおりませんよ。アメリカ人の顔で円満な顔を見たことがありますか。みんな鷹のような顔をして、「人を殺してやろう」という顔をしています。日本の保守政党の代議士、あの顔をみてごらんなさい。あれが東大出だと思いますか。そういう連中たちを変えるためには、日本の昔の柔らかい日本人をもう一度作っていく。大事なことだと思います。

質問24 本山さんの話を聞いて頭にくるのを通り越して唖然としました。金融権力をやめさせない限り、まともな社会にはならないと思います。私たちはだけど抵抗できないのではないでしょうか。

本山先生

 だから抵抗しようじゃないですか。京品ホテルは守れませんでした。でもあの心は生きのびました。少なくとも閉鎖命令が出てから、少なくとも呑み屋さんは繁盛していた。皆さん、そう思いませんか? 全国チェーンの呑み屋さんはみな衰退している。その中で昔からおじいちゃん、おばあちゃんのやっている呑み屋さんはちょっと高いですけどおいしいのです。この文化を守りましょうよ。話が少し違うかもしれませんが、地元の金は地元で還元しましょう。京品ホテルの従業員たちの英雄的闘いはずっと継承していきましょう。ずっと語り継ぐべきだと思います。自主管理といえば、むかしヤシカというカメラメーカーがありまして、結構続いたことがあるのです。やりましょうよ、ぜひ。会社はのっとったらいいんやから。のっとるために株を持とう。これが私の提案なのです。労働者が株を持とう。がたがた言う経営者はほったらかせ。株式のすごさはそこにあるのだ。何で縁もゆかりもない金融機関が株をもたなければいけないのか。関連の人間たちが株を持とう、それが私のイソプなのです。『ESOP』という本がありますのでぜひお読みになってください。七年ほど前に書いた本です。

質問25 恐慌になる危険性はあるのでしょうか。

本山先生

 恐慌になる危険性はある。これが一番言いたかった事です。脅かすのではなく、なります。資本主義はいく度も危機を乗り越えてきました。なぜ乗り越えてきたのか。労働者の抵抗です。これ以上賃金を下げる事ができない、だから最低の需要というものがあったのです。そこで生産能力は最低の需要にあわせたところで反転していったのです。逆説的ですが、労働組合が強いから資本主義は破滅しなかったのです。今、誰が抵抗しているのですか。無茶苦茶、賃金が下がっている。どうやって飯を食うのですか。セクハラだと言わないでくださいよ。むくつけき男は雇われないのです。呑み屋さんに行っても女の子ばっかりです。男は店長だけです。そうすると男はヒモになる。離婚して、生活保護を受けている女性のヒモになる。だから私たちはすくなくとも労働組合に、ストライキを打つことのできる労働組合に頑張ってもらいたい。これ以上の人の切り方をしないようにしてほしい。そのために労働者は抵抗するのだと。昔の経営者は労働組合との対決で育ちました。労務担当重役が社長になったのです。その連中たちが今、一番同情してくれている。今の社長さんたちは例外なく経理畑です。人を見たらコストだと思っている。こいつ、いくらぐらいかかるかなと。それだけなんです。こんな経営者を首にしましょうよ。首にするためにはできるところから、とにかくできるところからストライキをやっていく。本当に大事なのです。

 ストライキをやるときに闘争資金が要る。闘争資金が要るからできたのが、労働金庫だったはずなのです。そういうものがなければダメだぞ、という形にもっていって、新しく作るのではなくて、昔に適応した社会の組織をもう一度復活させようと。無尽組織を復活させようと。こういうものがものすごく大事なのです。あるいは、私の住んでいる神戸でたくさんある生活協同組合。「一人は万人のために、万人は一人のために」。これがものすごく大事なのです。

 実は賀川豊彦という男が、川崎大争議をやりました。日本の歴史に残る大争議です(一九二一年、川崎、三菱造船争議。争議団一万三〇〇〇人)。闘争しているときに社長さんと仲良くなってしまって、そのときにつくられたのが神戸生協(灘神戸生協)なのです。私が最初に勤めたお坊ちゃん学校といわれた甲南大学。実はあのときに、御影岡本とか現在の高級住宅街ですが、関西の成金たちが大挙やってきたのです。神戸はまだ田舎であった。そのときに豪邸がいっぱい建った。住民の反対運動に火をつけられる。そういうときにどうしたらいいのか。まず病院を作ろう、学校をつくろう、昔は旧制中学、旧制高校、旧制大学、これをなくそう。中学・高校とひっつけようと。七年制中学の第一期が甲南中学です。そして甲南病院もつくりました。神戸生協も作りました。そこで、二人たちが死にました。あとをどうするか。灘の酒です。酒屋がお金を出して、経営しているのです。菊正、白鶴、白鹿。菊正は甲南大学。白鶴は天下の灘高。講道館の創始者でもあります。白鹿が甲陽。素敵でしょう。

*1ESOP―株価資本主義の克服 (SPRINGER EXECUTIVE EDUCATION SERIES―トップ・マネジメント教育叢書) (単行本) 2,520円 2003年12月刊

 ぼんぼん大学ではあります。私も経営者だったら自分の子どもを甲南大学に入れます。理由は、創業者・お金持ちは、大会社はちがいますよ、マナーの習得、ご飯の食べ方、喋り方、付き合い方、マージャンの仕方、ゴルフの仕方、やっぱり帝王教育があるのです。そういう意味で甲南大学は一番よろしい。私は残念ながら経営者とはちがいますから、いられませんでしたが。甲南大学は大好きです。おしめをいっぱい干している3DKの公団住宅に、ある大会社、といっても中小企業の社長の御曹司が来たときに、「先生、初めて公団住宅を見ました」。「どう思う?」「私の人生、間違っているかもしれません」。深刻に考えるようないい子でした。会社の二代目になっていますけど本当にいい子です。そういう意味でぼんぼん大学というのは価値があるのですね。私は実はそう思っております。そのあと京都大学に行ったら恐かったですよ。実は神戸では甲南出身者のほうが幅が利く。呑みに行くにもレストランに行くにも、経営者は、大体甲南出身者。ああいう大学を賀川豊彦が作ったのだということを覚えて置いてください。それを菊正宗が引き継いだのだと覚えていてください。関西の文化はなんと素敵でしょう。このイメージがあるから私は地域、地域というのです。できますよ。ちなみに御影は酒蔵の町です。私はジョギングで出ます。帰ってきたら真っ赤かです。利き酒、ただ、無料。東京でそんなのがありますか。

質問26 現在は十八世紀初頭の資本主義に戻った、という先生の現状認識に大変共感します。そのような歴史的な捉えかえしがぜひとも必要だと思いました。と同時に、このような現実がなぜ生み出されたかの原因について、とりわけ反対運動の現実についての考えをお聞かせください。

本山先生

 本当にきつい言い方でございます。イデオロギーとか理論とかいうものは、本当に意味がありません。がんばろうというときに人を引っ張っていけることが必要です。ドイツ語やフランス語や飛び出してきて、見るだけで神経質そうなインテリゲンチャはいらない。とにかく常民の心が判った上で、「怒りを持つよな、がんばろうよな」と一緒に安酒を飲んで、「美味いよな、この焼酎」とか、そういうものが運動の原点なのであります。それが日本の運動はインテリの運動であった。それが破壊してきた。正直そう思います。だからもっと農民運動の過去を調べて、どんな連中たちがリーダーになれたのかということをぜひ学んでください。お願いいたします。大塩平八郎というようなすごい人が大阪にはおりました。すごいですよ、ああいう人間を出してきているのですから。アチャラ語の横文字を立て文字に直して、翻訳がどうのこうのというツマラン、訓詁学はやめましょう。そのためにわれわれはどれだけ重大な歴史を失ってきた事か、と思います。

 話が長くなりましたが、日本の明治、大正デモクラシーのときに、官僚たちが利潤を分配制度を提唱しました。アメリカのようになってはいけない、日本は日本だと。そのためには、利潤の五十%は法律で労働者に渡せ、これは国会でも審議されたのですよ。すごかったですよ。戦後でも経済安定本部ができた。かなり大きな左翼集団だった。戦後の審議委員会、--東大ばっかりで気に入らないけど――ほとんどマルキストであった。大内兵衛をはじめとして。アメリカ帰りではなかった。こういったことを思い出してください。彼らが人の心をつかめたのです。それがいつの間にか戦後に--私は実は経済学ではなくて哲学をやりたかったのです。経済学が好きになったのは、海が好きでしょっちゅう泳いでいましたが、そのときに突然海が埋め立てられた。神戸の海というのは白砂青松、本当にきれいでしたよ。あれがなくなったのです、石油で。そのとき、子ども心ながら、闘っている男がいると。

 三井三池の向坂逸郎だと。何をやっているのか。経済学だ。俺も…という形で、闘える経済学はどうかなと思って入ったらアカの巣窟だった。それが京都大学だった。アカはアカでもチョッと私の嫌いなアカだったので困りましたが、それでも置いてくれたのですよ。これが東京大学だったら置いてくれなかったでしょうね。こいつはイデオロギー的に違うとなると、ポイ!ですから。そこに京大の柔軟性があったと思います。はっきり申しますが、私は正統派ではございません。トロツキストと言われていました。正統派からは蛇蝎のごとく嫌われました。それを置いてくれた大学だということを分かってください。

本山美彦

 最後にソマリアへの自衛隊派兵問題について述べます。ソマリアの海賊は、海外の親族たちからの送金が米国によって停止されたことから生まれたものです。ろくな産業も、きちんとした政府もないソマリアに住む人々にとって、海外からの送金が最大の収入源でありました。。年間五億ドルほどの海外からの送金は、ソマリアのGDPの四十%に相当していました。外国からの援助は年間六千ドルほどでした。ところが、九・一一事件後、アメリカはソマリアへの送金業務を行っていたアルバカラット銀行を閉鎖させた。これで、ソマリアへの海外に住む親族の送金はゼロになった。送金の窓口が強制的に閉鎖されたのだから、親族だけでなく、海外からのNPOの送金も全面的に閉ざされた。こうした、アメリカの得手勝手な政策への何らの批判なしに、武力勢力を派遣しているのである。必要なことは問答無用の武力行使ではなく、ソマリア人が生きていける環境を用意することであるはずです。ここのところを私たちは理解すべきなのです。世界のことを知らないことは罪です。

 本当にみなさんありがとうございました。レベルの高いご質問で、あとでまた質問をタイプしてくださるそうなのでよろしくお願いいたします。

野崎日記(234) 新しい金融秩序への期待(179) システム崩壊を生み出したもの(12)

2009-10-27 04:24:22 | 野崎日記(新しい世界秩序)

質問20 内需拡大がいわれているが、貧困状況を克服するためには雇用拡大が必要だと思う。地域生活圏作りだけで若者が救えるでしょうか。

本山先生

 いや、救っていかなければいけない。内需拡大ということばに踊らされてはダメです。内需拡大というのはトヨタにしても電機メーカーにしても三割が突然おかしくなった。これは何なのだろうか。自分たちの国内需要の二倍くらいのものをつくって、それを借金まみれのアメリカに売っていた。アメリカ人が借金をしても買うかというときは、安いから買うのであって、中国やベトナムで作らせたものは安いから売れるのであります。GMのように、社会福祉費用を取られてしまう、医療費を取られてしまうというところと、派遣社員を散々使って、安い製品を売っているところと勝負するとどうなるか。当たり前です。アメリカが買う能力がなくなったらガタンと購買力が落ちる。こういう会社をなくすことが内需拡大です。少なくともわれわれの内部でわれわれが必要とするものをどれだけ作り出せるかということが一番大事なのであります。

「国民負担率」の詐欺

 一つ例を出させてください。国民負担率という言葉があります。これから医療費が高くつくであろう。国民が負担する比率を少なくしよう、日本はこれから負担率が大きくなるからと。こんな大きな詐欺はありません。日本でいう国民負担率というのは、私たちから

 預かった税金、その税金を医療費に使ったものを国民負担率というのであります。私たちが税金をつかわずに、個人的に医療費を払ったら、それは国民負担率の対象にならないのです。私たちの税金の中から、トヨタとかキャノンとか、あの連中たちが経団連会長になってからどの程度、社会福祉関係に金を注いだであろうか。ものすごくカットしてきています。われわれの金だけで医療費をまかなえ。それを小さくすることが大事なのだ。われわれが個人的に払う医療費を増やすこと、これが国民負担率を下げるということなのです。こんな詐欺に多くの人間が引っかかっている。それを野党という野党が気付いていない。情けない。勉強していないのではないか、議員さんたちは。こういうことを一つ一つ解きほぐしていって、われわれは騙されているのだということをいろいろなところで、こういう学習会を開きながら、皆で共有していかなければならない。

日本の医療制度

日本の医療制度というのは、もっともわれわれが負担する率が高いのであります。オバマは少なくともアメリカの医療制度に切り込もうとしています。オバマの悪口を言いましたが、もしかしたら、オバマの医療改革というのはいいかもしれない。少なくともアメリカの企業が悲鳴を上げているのは、国民皆保険がないから、労働者をつなぎとめるために民間企業が医療費を払っているのだということです。この一点を重視しなければならない。ところが、そういう負の遺産をGMが負っているから、そうならないために、わが自動車産業はそれをやめましょうねと。全くさかさまの議論が展開されているのです。そういうことの意味も勉強していきましょう。関西にいたら分るのですが、東京の方に比べて、関西の人間として偉そうに言わせてもらうと、経営者が良いのです。労働組合を認知している。東京のように毛嫌いしていません。皆さん、関西の経営者の集まり、特に中小経営者の集まりをぜひご覧になってください。人工衛星までうち上げる、すごい活力のある連中たち。彼らは絶対人の首を切りませんから。そういう意味で私はこれからは関西の力が出てくると思います。

質問21 日本は失業者が失業保険を受けられない割合が、先進国中、最悪と知りました。

本山先生

 本当にそうなのです。雇用されている人の三分の一は雇用保険をうけとっていない、というか、初めから徴収されていない。それは大変です。法律的にきちんとしていかなければいけないのでありますが、とにかく社会保険は企業家の義務であるという当たり前のことをやりましょう。そのためには喧嘩しなければいけない。喧嘩するためには、喧嘩しても生きていけるという雰囲気をつくっておかなければならない。私たちがNPOをつくって若者たちに最低限の就職をさせていくというのは、いざというときに帰ってきていいよ、それまで闘え、首になったらまた支えるからということです。昔の労働者が強かったのは、田舎があったからです。ゴメーンと言って、田舎に帰ることが出来た、小さくなりながら。私も疎開で苦しかったです、馬と一緒に寝ました。でも少なくともまだ親族が田んぼを耕している、手伝わして、という場があったから、労働者の闘いが強かった。いまそれがない。だからその代わりにNPOを田舎につくっていこうというのが私の具体的な提案なのです。そうすることによって闘おうと。そういうことが大事なのであって、われわれが、今すべきことはそういうことなのです。宜しくお願いいたします。

質問22 日本興業銀行に住宅ローンの相談に行ったら対応が悪かった。かつての銀行は政府の後ろ楯で守られながら、いい給料をもらって威張っているといったイメージがあります。護送船団方式はよかったといわれるが、このようなイメージをどう考えるか。

本山先生
 

 当たり前です。日本興業銀行は、われわれを相手にしてくれる銀行ではない。あんな銀行は巨大企業に任せればいい。われわれに大事なのは信用組合。その認可権まで政府がもってしまった。かつては地方自治体がもっていたのです。これをとりもどさなければダメです。そのためにはわれわれが出資して、「そんなことを言ったら理事長、首にしますよ」というくらいの力をもたなければイカン。それが出来るのは信用組合なのです。日本興業銀行は政府そのものですから、恐ろしくてそんなことはわれわれにはできません。私が言っているのは私たちが影響力を発揮できるような地元の小さな銀行を応援しましょうということです。小さな銀行をあわせたら日本の全貯蓄がそこにあるということです。考えるだけで素敵ではないですか。

野崎日記(233) 新しい金融秩序への期待(178) システム崩壊を生み出したもの(11)

2009-10-26 04:03:54 | 野崎日記(新しい世界秩序)

質問15 副島隆彦さんの著書等についてどう思われますか。

本山先生

 知り合いです。アポロ十一号、九・一一。副島さんらしくあれは陰謀だということでありますけれども、まぁ、奇才というか、大事にしておきたい人です。『連鎖する大暴落』いまベストセラーになっていますね。あの若さで、あそこまで書けるのはすごいなぁということです。個人的に知っていますので、ここでやめておきます。次々と問題作を出す人であります。

質問16 ガイトナーら、アメリカの三悪人が紹介されたが、これを受け入れた日本側の三悪人はだれですか。

本山先生

 分かるでしょう。ある郵政民営化の旗をふった元大臣の母校に講演に行きました。彼がその高校の出身者だということを知らないで、悪口を言うと、ものすごくうけました。校長先生から「ご存知でしたか」と言われて、「知らなかったー」なのですが。そのときの高校生はものすごくたくさん京都大学をうけてくださいました。彼の陣容はお友達だけ、お友達陣容なのであります。財政諮問委員会を見ても全部お友達であります。個人攻撃になりますけど、私は京都大学に四十年おりますが、祇園で飲んだ事は一度もありません。何で彼らは新地でのめるのか。そういうお友達ばっかりつるんでいます。

質問17 ソ連邦が崩壊し、今、アメリカが破綻して、十八世紀原始資本主義に逆戻りしたということでしたが。

本山先生

 そう、この質問、ものすごくいい、嬉しい。いいですか、つづきます。「そうであるならば勤労者は原始労働者の魂をよみがえらして、ふんどしを締めなおして闘っていくべきだと思います。リーマンに潰された京品ホテルの労働者の闘いなんてお手本」。本当に嬉しい、そうです。昔の労働者は闘ったのだと。闘うしか家族を守れなかったのだと。この闘いが激しいからこそ修正資本主義に戻ったのです。今は闘いが無いから、労働組合は金が余って、余って。

 ストライキ斗争を伝承しよう。ストライキを起せと言ったって、ストライキの起し方を知らないのです。ストライキを起して自分が首になったときに、どういう裁判闘争を起していいかがわからない。そのためにもストライキをおこさなアカン。そのとき若い子に、ストライキはこうするのだぞとか、当局側とはここで摩擦を避けるのだぞとかを伝えていかなくてはいけない。今の労働組合の幹部は絶対ダメですよ。知識の伝承を全て切った。だから若い人たちは腹が立つけどストライキをおこせない。ここのところが問題なのです。暴れましょうよ。暴れて、暴れて、フランスを見習いましょうよ。ものすごいのだから。(会場拍手)。本当に頑張りましょう。嬉しいです、この質問は。

質問18 自分たちの手にお金を取り戻し、地域で流通されるようなシステムに戻ってゆくために、これから弊害となりそうなことはありますか。

本山先生


 法律の枠であります。NGO銀行を作ろうとしたときに、サラ金二法案ができました。わずかなお金でやっていこうというときに、五千万円以上の資本金がなくてはいけないという。サラ金は怪しからんが、サラ金をおさえることによって生まれてくる地域の芽がつぶれるのだ。そういうことを一生懸命勉強しなければならない。法律というものは諦めてはいけない。法律というものは、本当はあっても何の意味も無いものです。判例法なのです。法律があるときに、その法律に即して有罪になった、無罪になったということになるので、判例をつくるほうにいかなければいけないのです。

 裁判員制度導入の問題点

 日本も裁判員制度などといういい加減なものではなくて、陪審員制度をつくれと私は言っているのです。判例を作ることによってものすごく大きな力をつくることができる。素人集団で殺人罪にするかしないかをやれというのが今の裁判員制度。そんなことをやったらアメリカの思惑通りです。ロバート・レッドフォードのような格好いい弁護士が現れ、みんなが「そう、そう、素敵」となってきて、この弁護士に頼むとみんな無罪になる。裁判員制度はこれからそうなります。プロ集団が必死になってやり、そして素人集団と懸命につき合わせて判例をつくっていくという、陪審員制度を日本でもつくるべきだと私は思っております。陪審員制度の議論もしないで、裁判員制度を導入するとは何事かと私は思います。判例作りに頑張りましょう。判例を作るためには運動をしなくてはいけないのです。障害になったときに、その法律は修正しろと、判例を引き出してきたらいいのです。名古屋で自衛隊イラク派兵違憲だとやってくれたときの影響はものすごかったでしょう。ああいうものをわれわれはつくるべきだということです。とにかく頑張らなければイカンということです。

質問19 おろかな定額給付金には反対ですが、社会的に有意義な活動に寄付しようと思っています。本山先生の地域活動に受け皿になっていただけますか。

本山先生

 チョッとむずかしいですね。いま一番の問題は医療・介護でしょう。そこにこれだけのお金は注ぎますということをやらなければいけないので、みなさん、何か作りましょうよ。受け皿を作って、「みなさん、二万円はここに振り込んでください」と。こういう活動をやりますということをやれば、確かに違ってきます。具体的にはあちこち、公営住宅が空いている。そこを借り入れて、非正規の解雇された人たちを住まわすとか、私が結婚式を上げた公会堂。全国でもうボロボロになっている。使われないといって高い高いホテルに立て替える。なぜあんな事をやるかと思います。生田神社はこれからどうなるのでしょう。それはともかく公会堂を借り上げてこういう集会をやっていくとか、資金源にすればけっこうお金は使えるものです。二万円は大きいです。二万円で一万人いたら、二億円です。すごいことをしてくれているのです。間違っても高速道路に乗らないでください。

質問20 内需拡大がいわれているが、貧困状況を克服するためには雇用拡大が必要だと思う。地域生活圏作りだけで若者が救えるでしょうか。

本山先生

 いや、救っていかなければいけない。内需拡大ということばに踊らされてはダメです。内需拡大というのはトヨタにしても電機メーカーにしても三割が突然おかしくなった。これは何なのだろうか。自分たちの国内需要の二倍くらいのものをつくって、それを借金まみれのアメリカに売っていた。アメリカ人が借金をしても買うかというときは、安いから買うのであって、中国やベトナムで作らせたものは安いから売れるのであります。GMのように、社会福祉費用を取られてしまう、医療費を取られてしまうというところと、派遣社員を散々使って、安い製品を売っているところと勝負するとどうなるか。当たり前です。アメリカが買う能力がなくなったらガタンと購買力が落ちる。こういう会社をなくすことが内需拡大です。少なくともわれわれの内部でわれわれが必要とするものをどれだけ作り出せるかということが一番大事なのであります。

 「国民負担率」の詐欺

一つ例を出させてください。国民負担率という言葉があります。これから医療費が高くつくであろう。国民が負担する比率を少なくしよう、日本はこれから負担率が大きくなるからと。こんな大きな詐欺はありません。日本でいう国民負担率というのは、私たちから徴収した税金、その税金を医療費に使ったものを国民負担率というのであります。私たちが税金をつかわずに、個人的に医療費を払ったら、それは国民負担率の対象にならないのです。私たちの税金の中から、トヨタとかキャノンとか、あの連中たちが経団連会長になってからどの程度、社会福祉関係に金を注いだであろうか。ものすごくカットしてきています。われわれの金だけで医療費をまかなえ。それを小さくすることが大事なのだ。われわれが個人的に払う医療費を増やすこと、これが国民負担率を下げるということなのです。こんな詐欺に多くの人間が引っかかっている。それを野党という野党が気付いていない。情けない。勉強していないのではないか、議員さんたちは。こういうことを一つ一つ解きほぐしていって、われわれは騙されているのだということをいろいろなところで、こういう学習会を開きながら、皆で共有していかなければならない。

 日本の医療制度

 日本の医療制度というのは、もっともわれわれが負担する率が高いのであります。オバマは少なくともアメリカの医療制度に切り込もうとしています。オバマの悪口を言いましたが、もしかしたら、オバマの医療改革というのはいいかもしれない。少なくともアメリカの企業が悲鳴を上げているのは、国民皆保険がないから、労働者をつなぎとめるために民間企業が医療費を払っているのだということです。この一点を重視しなければならない。ところが、そういう負の遺産をGMが負っているから、そうならないために、わが自動車産業はそれをやめましょうねと。全くさかさまの議論が展開されているのです。そういうことの意味も勉強していきましょう。関西にいたら分るのですが、東京の方に比べて、関西の人間として偉そうに言わせてもらうと、経営者が良いのです。労働組合を認知している。東京のように毛嫌いしていません。皆さん、
ホテルに立て替える。なぜあんな事をやるかと思います。生田神社はこれからどうなるのでしょう。それはともかく公会堂を借り上げてこういう集会をやっていくとか、資金源にすればけっこうお金は使えるものです。2万円は大きいです。二万円で一万人いたら、二億円です。すごいことをしてくれているのです。間違っても高速道路に乗らないでください。

野崎日記(232) 新しい金融秩序への期待(177) システム崩壊を生み出したもの(10)

2009-10-21 12:03:17 | 野崎日記(新しい世界秩序)


質問5 AIGが軍力と権力を操っていては、戦争は止められないのではないか。

本山先生

 民間人を軍隊が登用するのではない、軍隊のOBを民間会社が登用するのです。軍隊が入ることは諜報力をもつのです。諜報力の力はすごい。なぜ日本の政治家がアメリカに対して文句を言えないかというと、下ネタを握られているからです。結局そういう形で権力というものは維持されていくのだということです。CIA及び軍隊、これはものすごい権力養成機構です。具体的に申しますとウェストポイント陸軍士官学校の研究成果。人間は目を合わせると殺せない。至近距離で銃弾戦をやるとみんな空砲を打つ。だからインベーダーゲームの戦争を開発するのです。ネバダ砂漠の地下室でイラク戦を操作していても、ギャーと死ぬ人間は映像に写らない。こういう戦争を開発していく。開発した民間会社は儲かるのです。そのときアドバイスするのは軍人なのです。現実に悲惨な姿をみたことがない。ベトナム戦争の教訓です。実は私はベトナム戦争を報道した大森実が大好きで、毎日新聞社を受けたのですが、落とされました。いまだに毎日新聞に対しては、記者が来ると説教するのです。とにかくベトナム戦争とは映像が違ってきたということを覚えて置いてください。

質問6 先生と同様に、米国の対日圧力を警告している関岡英之氏は「マスコミが郵政民営化などの米国の圧力を報じないのは、米国の保険会社の広告で逆らえないからだ」と主張していますが先生のお考えは?

本山先生

 米国の対日圧力について論じたのは関岡さんより私のほうが早かったはずです。なぜか関岡氏の本の方が売れました。ぜひ私の本を読んでください。『民営化される戦争』*1です。対日圧力の証拠です。

質問7 派遣さん、派遣切りについて。

本山先生

 実は、私の大学も図書館が全部派遣社員です。ある大手版元が派遣社員を送ってきている。給料が安く使えて同時に、送り込んでいる送り元の方は、大学を自分たちの販路にできる。いろいろなところに派遣社員がいます。なぜか。社会福祉、福利厚生費を出さなくてもいい。いつでも首を切る事ができる。ただそれだけためです。

 派遣法を叩き潰そう

 われわれは全力を合わせて派遣法を叩き潰すということを頑張りましょうよ。こんな法律を作るとは何事かと(会場拍手)。その派遣法を作った奴がいっぱい悪い事をしているわけでしょう。彼らが規制緩和の下で、公でやるべき仕事を、派遣を使って自分たちの企業がやっているわけでしょう。本当にひどいものです。私の身近にも介護で腰を痛めた人がいます。それを見るたびに会社に対して怒りを持ちます。すくなくとも派遣法は潰しましょうよ。今度投票をするときには派遣法賛成か反対かを、はっきりさせましょう。ある野党が賛成したのですからね。消費税をゼロとして国や地方の無駄遣いをなくして、国などの借金は減らせますか。繰り返してもうします。

 日本の財政赤字―アメリカの圧力

 日本の膨大な借金はわれわれが贅沢をしたからではありません。すくなくともアメリカのドルを支えるために膨大なお金が注がれたのです。アメリカのイラク戦争に加担するためにやったのだし、八百兆ドルを超える膨大な借金残高というのは、すべてアメリカの圧力です。ものすごい高層ビル、都市再開発。アメリカによって日本の内需拡大をやれ、「前川レポート」で内需拡大をやれといった。第三セクターができて、そこで膨大な形で建設事業をやって、全てそれが地方債・国債なのであります。すべてドルを守るために出されたのです。それを全てわれわれが贅沢したからだと言っている。なにを言っているかです。使い道を議論しろとはそういうことなのです。ものすごい借金。その借金はわれわれが作ったのではないのだ。われわれが作ってもいないのに、医療費を削減し老人医療費を高くし、私学助成は削減し、夜間中学はなくすという。全て財政赤字が理由になっている。財政赤字を理由に大阪では府職労組も市職労組も何もできなくなっている。絶対に、敵側の数字にごまかされてはイカン。われわれがやったのではないと言う原点に戻って議論しましょうということであります。(会場拍手)

質問8 ベイシック・インカムについて

本山先生 


 私の教え子が一生懸命に言っているのでコメントは差し控えます。人間は生きるためにメシを食うのであって、人間の生涯を保証するのが所得である。これは義務です。実は私はものすごく辛かった。子ども三人、みな東京の大学に入ったのですが、仕送りにヒーヒーしました。そのときは、いまのようにひどい時代ではありませんでした。50代の時にはある程度給料が高かった。だからいかせられた。だから私は絶対年功序列制を守れと言う。生活スタイルに応じて払うべきです。

 労働者はコストではない。企業にとっての資本なんだ。このことを思い知らせてやりましょうよ(会場拍手)。だから大企業が首を切ったら、そこから人を引き上げましょうよ。われわれが会社を作って、そこから目にもの見せるような技術をつくりましょうよ。そのかわり絶対われわれは首切らない。年功序列。生涯型賃金。これはつくるべきです。地方レベルでやれということはそういうことなのです。法律に期待していてもダメだ、自分たちの力でやってみようじゃないか、ということです。

質問9「北朝鮮」のミサイル発射情報に対する日本政府の対応をどう考えますか。今後どう進展すると予測されますか。平和を願う市民はどういう運動を展開すべきでしょうか。

本山先生

 いい質問をされました。私は北朝鮮ということばを使ってほしくない。朝鮮でいいのです。わざわざ「北」をつかわなければいけないのか。アメリカはNorth Koreaと South Koreaをつかっています。「北」だけをNorth Koreaにしていません。あのアメリカでさえですよ。どうして日本がNorth Koreaといわなければならないか。つい最近まで日本では台湾のことを「国府」といっておりました。中国の事を中共といっておりました。こういう情けない国民なのです。私の話を聞いた人は「北」ということばを使わないでください。

 すくなくともこれだけいじめられて、封鎖されて、ヒーヒーは言って、一つの国として生き延びる事ができるのかというときに。向こうの政権の事を見るよりも、国内における在日の人間のいじめられ方を見てください。可哀想過ぎます。こういったことに目を光らせてください。ミサイルのことはわかりません。もし、人工衛星を打ち上げるのであったら、どうして人工衛星の打ち上げにわれわれは反対しなければいけないのでしょうか。衛星でなかったということが判った瞬間に怒ればいいのであって、衛星だと言っているのだから信用するしかないでしょう。もっと言います。朝鮮が一度だってほかの国を攻めたことがあるのか。朝鮮がアメリカの軍事施設を偵察衛星で写した事があるのか。どうしてわれわれはアメリカの情報だけを鵜呑みにするのですか。どうして朝鮮だけがアメリカから偵察されてもわれわれはそれを侵犯だといわないのですか。私たちの意識が洗脳されているのです。二度と「北」ということばを使わないでください。

質問10 「ウソプライムローン」=サブプライムローンの買い手は?

本山先生

 一番大きな問題は何かと言いますと、マーケット至上主義者がやったことは、商品として市場価格がついたものを売ったのではない。どっちが有利かなーという形で買ったものではないということです。押し付けなのです。「ゴールドマン・サックスがあなたのために、こういう仕組み債をつくりましたよ」。ゴールドマン・サックスは日本人のスタッフが少ないから野村證券とか、住友銀行とかが提携して「お願いします」とやる。「あなたの会社は、これだけのお金で、何年間か余裕がありますよね、この仕組み債はあなたのためにお作りしたものです」「値段は?」「安心なものですか」「うちは金融工学の博士号を持つ人がズラーっと並んでいます。ノーベル賞の人もいます」と、言い値で買わされる。騙されたと判った瞬間に「引き取ってくれ」と言うが、引き取ってくれない。そこが問題になっている。マーケット、マーケットというけど、マーケットを使っていないのがマーケット至上主義者の詐欺なのです。われわれはこれから、それに対して集団訴訟をおこさなければアカン。にせものをドーンと売った連中に対して文句を言わせていただきます。実は日本にそういう弁護士団体があります。先日、同志社で百七十人もが集まってきました。私は基調講演で訴訟をおこそうと煽ってきました。心は自分の大学を救ってもらいたいからです。

質問11 公的資金を投入してもなんともならないと言われましたが、なぜですか。

本山先生

 癌をなおすべきときに癌細胞の摘出をせずに、朝鮮人参ばかり飲ませれられるようなものです。つまり栄養つけろ、栄養つけろという。癌をとりのぞかなければいけないのですよ。癌を取り除かなければ一切の効果はないということです。むずかしく言えば資産デフレとか、資産インフレとかの言葉があるのですが、要は病巣を取り除かずにお金だけ出していたらどうなるか、ということです。

質問12 なぜAIGを救わなければならないのですか。

本山先生

 AIGがひっくり返ったら世界恐慌は明日でも来ます。アキレス腱です。世
界にニセモノを売りまくった張本人ですから。AIGと投資銀行とが。そのうちの大一角、モノラインという金融保証の一番大きな一角、これが潰れるということは大変な事です。これが国有化されていることを知っておいてください。日本においてはAIG関連会社を今、誰が買うかということで大騒ぎしているのであります。水面下ではものすごく動いているはずなのに、あの保険のテレビ宣伝は一体何を考えているのかと私は思います。こういうことに関してみんなが情報の共有をしなければならない、本体は国有化されている、問題は国有化されていない日本の優良会社をどういう形で高く売るか、そして本体をいかに救うかという段階になってきているのであります。

質問13 かつての日本で、戦死について「天皇のため」「国のため」という「納得」がありました。今、イラクやアフガンへ志願する多国籍兵士は戦死に対し、どんな「納得」あるいは「理想」があるのでしょうか。

本山先生
 

 私はここを言いたかった。貧乏人が戦争に行くのだということです。戦争に行くことによって市民権が得られるのだということであります。分かりやすく言えば、自分の子どもをハーバード大学に行かせようとしても無理です。八百万円の授業料は払えません。いわんやアメリカの貧しい人たちはどうするのですか。はっきり申しますが、日本はまだマシです。ペーパーテストで通るから。もし私の先生から、子どもをどうぞよろしくと言われて、もし落として私自身が首になったらどうなりますか。日本では「すみません、〇・五点でダメでした」といえる。日本の大学入試制度はペーパーテストですから。ものすごく残酷なほど情実が働かないということでもあるのです。これがアメリカだったらどうなりますか。有名人の子弟がほとんどIVリーグ。これはおかしいと思いませんか。エリートたちの子どもはみんなエリートなのか。エリートたちの子どもたちは勉強ができるのか。しかも試験が三ヶ月ぐらいにわたる。その間に何のやりとりがあるのでしょうか。

 私はアメリカの大学に推薦状をいっぱい書きましたけど最後はお金でしたよ、この人は払えますかと。ダイッキライです、私はアメリカの大学が。日本のエリートを見てください。並居る人たち、だいたいハーバード卒業です。オックスフォード卒業です。そんな事は確率的にありえない。有名人で息子を京都大学卒業させた人がいるか。落としてきたのです。某大学もエリートの子どもがすごく多いでしょう。私の教え子が三年前に首を切られそうになって、どうしたらいいのかと相談に来る。どうしたらいいのかというときに私は子どもたちに言います。大会社に行っても君らは下っ端で使われるだけだ。公務員になるな。あそこは東大の法学部だけだ。経済学部であるだけでダメなのだ。しかも次官は五十五才になったら全部クビになっている。そんな過酷なレースに行くなと。田舎に私が紹介してあげる。福井県に行けと。小さな五人の会社で頑張れと。楽しいんだからと。親たちの思想も変えてもらわなければならない。親が「うちの子供の就職先は言えません、恥ずかしいから」。そんなの止めてくれよと言いたい。子どもはこういう仕事をしていると。ここでやっているのだと。それを自慢してほしい。日本人はおかしいです。なんで大会社の社員がそんなエリートなのですか。悲しい。こんな週刊誌を売るだけでも腹が立ちます。「エリート社員の…」、「エリート妻の…」。とにかく思想から変えなければ。それと、派遣法を潰す事であります。

質問14 広瀬隆さんの『赤い楯―ロスチャイルドの謎』をどう思うか。

本山先生

 正直に申します。『赤い楯』を読んだときに、こいつはニセモノだと思った。いや、彼はいいです。同じ年です。『金融権力』*2を書く動機は彼から与えられました。大体日本人は一発当てれば同じことを書いていく。何回も書いていく。本物は一つ当てたら全然別のことをやるのです。私も二度と『金融権力』を書きませんよ。広瀬さんのすごさというのは今のロシアの新しく興ってきた大財閥がなぜ興ってくるのかということを人脈的に、お金から考える。ロシアでルーブルがものすごくダメなときには、ユーロとかドルとか、国際通貨を扱う連中たちが最も儲かるようになっているのです。プーチンが利用している。こういったことを抉り出してくれている。そういう人たちが日本にはあまりにもいなくなっている。もっとズバリ申します。日本に地域研究者はいっぱいいます。ところが地域研究者は自分の対象地域を大讃美します。中国研究者は中国の悪口を言わない。ロシア研究者はロシアの悪口を言わない。アメリカ研究者はアメリカ万歳でひげまで生やしてくる。その中で広瀬さんだけは世界のことについて、ものすごくいちゃもんをつけている。えらいと思います。面識はありませんが私はフアンでございます。ぜひみなさん、広瀬隆さんを読んでください。

*1 『民営化される戦争 21世紀の民族紛争と企業』(ナカニシヤ出版 2004年刊)
*2『金融権力』(岩波書店 2007年)


野崎日記(231) 新しい金融秩序への期待(176) システム崩壊を生み出したもの(9)

2009-10-20 12:44:42 | 野崎日記(新しい世界秩序)


質疑・討論

 提出された質問用紙は三十枚以上でした。本山先生は短い時間に、本当に情熱的に答えてくださり、参加者皆を鼓舞してくださる熱意のこもった質疑討論になりました。


 本山先生

 熱心に書いていただいてありがとうございました。項目ごとに分けてお話しようと思ったのですが、案の定みなさんの質問が多岐にわたっていて、分けることが不可能なので重複をいとわず、お一人当たり十秒くらいで話をさせていただきます。ものすごく、たくさんきていますので、それだけでも三十分くらい、かかるのではないかと思います。

質問1 天下国家を論じるのではなく、自分たちの身近にあることから始めようというその趣旨に異論はないが、天下国家を論じることと身近な問題を、対立的に考えるような発想を超えていかなければ、本当の世直し、世界直しはできないと考えています。天下国家のみを論ずる立場の人びとと、ある意味シングルイシューのタコツボのような運動のみに固執するような運動ともに、私はホンモノたり得ないと考える。この両者の間の乖離、断絶を超えてゆくにはどうしたらよいのでしょうか。

本山先生

 私が天下国家のことはほっといて身近なところからやれ、ということについてお叱りであります。天下国家のことが判った上で身近な事をやれということなのですが、敢えて反論させていただきます。

常民のことばで

  日本の左翼運動、市民運動が失敗したのは、常民に分かることばを運動家たち、とくにインテリの連中たちが、出さなかったからだと私は思っています。すくなくともふつうの日常会話で心に響くものをつくりだす義務があるのだと。そのためには柳田國男は嫌いだけど、柳田國男が言っている常民のことばを出す、今、運動が停滞しているように言いますけど、あらゆる私たちの発することばが上滑りだからなのです。心にずんと響くことばがありましたら、ワッと来ます。そういうものです。私は安保世代ですけど、全共闘時代に「何や、最近の若者は…」と言っていましたら、ワッときたのです。

 「大学解体!」と非常に分りやすいことばに多くの人が反応した。それまではなんで学生たちに左の連中がいじめられるかと不満に思っていました。あれが日本全体に響いたというのはことばということのもつ意味、「大学解体!」という言葉のとてつもなく大きい意味をボーンと出したから運動が起こったのです。いま、匹敵する判りやすい言葉が無いという、そういう意味で私は必死になって言葉を作ろうと思っています。ことばが一番大事な時期にいま入っている。お叱はよくわかるのです。地元の運動をしている方が天下国家をご存じないと。しかしいま必要なのは人々に響くことばが大事なのであって、帝国主義批判とか、スターリニズム批判とか、そういう言葉は飽き飽きした、生きていくあえぎを、きちんとした歴史に残ることばできちんと表す事、それが一番大事なのです。レーニンが成功したのは「パンをよこせ」、この一言だったのです。そういうことが大事だということを訴えておきたいと思います。がんばるつもりでおります。

質問2 米国の赤字はどのくらいあるか。ちなみに日本は千百兆円と言われるが。

本山先生

 間違ってもらってはいけないのですが、国家が破産するとか、地方財政が破産するとか、大阪府の橋下知事がそういうことを言うのですが、国家にしても、地方自治体にしても破産はしません。税金という担保をもっているからです。民間は負債で倒産します。国家は破産しない、ということを言っておきます。だから国家がどの程度赤字かということで恐怖心を抱いてはいけないのです。どれだけ無駄遣いをしているかをチェックしていくことが大事なのであって、橋下府政のように「このままいったら民間だったら倒産するのに」と、賃金カット、組合運動カットという形で、福祉・医療全てをカットして言ってそれが八十八%の支持率を得るのです。だから私たちは、「国家財政が赤字で、だから云々」と言われたら、「だからなんだ」と言わなければなりません。くだらん会計の仕方にチェックしていくということのほうが大事です。大体ETC(自動車料金収受システム)で喜んでいてはダメです。ETCで、どんな連中たちが儲けたかと。彼らは天下り団体なのですよ。そういうことに対して怒りを持たなくてはアカン。すくなくとも多くの人たちの発想が間違っている。ごめんなさい、挑戦的なことを申しました。私は赤字財政がどれだけか、というのは嫌いなのです、その発想が。

質問3 オバマ政権の問題点はなにか。それにもかかわらず大きな支持を受けて当選したのはなぜか。

本山先生

 だから恐いのです。私は二百万人の人がワシントンに集まったというの
に恐怖心を抱きました。ヒトラーとどこが違うんだと。オバマを政権に就けようとしたのはルービンです。二〇〇六年四月です。二年以上前です。ハミルトン・プロジェクトというのをルービンが立ち上げました。現在十㌦紙幣を飾っている初代財務長官のハミルトンです。その内容がそのままオバマの演説に出ました。『毎日新聞』二月二十二日に私は書きましたが。聞いていて腹が立ってきましてね、ハミルトン・プロジェクトを読んでおりましたから。ハミルトン・プロジェクトは二〇〇六年四月に杮落としをやったのですが、最初の招待者演説をしたのがオバマであります。クリントン夫人ではありませんでした。その内容、オバマの大演説、日本のマスコミがこぞって褒めた演説です。自分の大事な演説をストーリー・テラーに委すか。それをすごい、すごいと。なにを言っているのか。ハミルトン・プロジェクトの内容そのままの引き写しでありました。あれは剽窃です。その連中たちがマスコミを使うことによって支持を得たんです。ここにファシズムの到来を見ます、私は。私の批判している橋下府政が八十八%の支持率。これは異常と思わなければいけないのです。すくなくとも半分を超える支持率など、ふつうはあり得ないことなのです。それがマスコミによって操作されているということ。大体、私は世論調査なんか受けたことがないです。ありますか。調査の仕方が一体どうなっているのですか。怪しいですよ。私はオバマは恐いです。正直を言って。あんなのに翻弄されてはダメです。

質問4 労働金庫など地元に預けなおせと言われるのはなぜですか。厚労次官が天下るような組織で信頼できるのか。こういう人事がなぜおこなわれるのか。

本山先生

 銀行が天下りポストだからですよ。とにかく官僚の五十五才定年制はやめてください。五十五才で定年になったら、天下り先を探すしかないのです。特殊法人をいっぱい作るのはいけないのです。労働金庫というのはもともと労働組合がストライキを起こすときの活動資金のためにある労働金庫なのです。これが全国統一されてしまって、ポストが天下り先の指定席だとは、何をいうかです。実は、一週間前に近畿労働金庫の理事長室にのり込んで文句を言ってきました。そこはたまたま大会社の大労組の委員長で、私の「ESOP」をいちばん最初に採用してくれた労働組合だったので、東京で喧嘩してこいといったのですが、どうなるか新聞を注目しているところです。


野崎日記(230) 新しい金融秩序への期待(175) システム崩壊を生み出したもの(8)

2009-10-10 07:12:57 | 野崎日記(新しい世界秩序)


アメリカの戦争は誰が担っているか。

  全世界のアメリカ軍が全世界に展開するとAIGは一緒についてきます。日本の企業に癌保険とか医療保険とかを売らせ無かった張本人です。自分たちだけ儲けてるわけです。名誉毀損になるから止めますが、AIGは国家です。イラクもアフガニスタンも情報担当がAIGの重役です。これが民営化される戦争なのです。つまりアメリカ軍で、ある程度の力を持ってきて、現地の将校たちと親しくなると権力と武力ですよ。人を殺せる力です。そのときにそこの軍・警察権力と結びついた連中を企業は迎えます。その迎えたOBを情報担当に迎えます。これが現在のアメリカ企業社会なのです。アフリカ各地でいろんな多国籍企業がやっています。現地の軍隊を頼らないです。

  アメリカが私兵・民兵をアメリカから連れてきて、戦ったらいい。何で民兵が武器を使えるのですか。その民兵を自分たちに巻き込もうとするのがアフリカの権力闘争なのです。アメリカは徴兵制ではありません。アメリカの大学に行かそうとしてもアメリカの大学には行かせられません。安くて五百万円、大体八百万円。こんなカネ、どうして出るんですか。誰が出せるんですか。そこですでに、アメリカ社会の病弊が分かると思うのです。日本では私はわずか七千五百円でした、授業料が、一年間ですよ。

  アメリカのそういう社会の中で、貧乏人がのし上がるには軍隊に入るしかないのですよ。軍隊に入って活躍した。三年間頑張った。ハーバード大学の奨学金がもらえた。就職まで世話をしてくれたとなる。だから軍隊に白人はほとんどいない。多くは黒人。もっと多数は南太平洋の若者たち。これがイラクで死んでいっているのであります。一人として白人の師弟はおりません。これがアメリカの戦争なのです。こういうことを考えたときに、アメリカが如何に病んでいる国かをお分かりいただけると思います。そしてGMが潰れたら、AIGはGMが潰れないという想定の元で、世界の連中たちに「GMの潰れたときには払ってあげます。でもGMは潰れないから五年間時期が過ぎたら丸儲けだ」と売りまくったのであります。ですからGMが潰れたらアメリカの国家が破産します。何が何でも潰さないだろう。でも、GMの株は一$くらいまで下がっています。

  トヨタの株とGMの株のことを考えてみてください。破綻の瀬戸際に来ています。それを切開するときにAIGの幹部を逮捕するとか、こういうことは二度と許さないとか、格付け会社をいじめて、どうやってこのいい加減な格付けをしたのかとか、ずっと掘り下げて司法が動けば、世界は落ち着きます。あぁ、そうだったのかと。一切司法が動かずに、今の自民党の政治家たちの疑惑事件に対して一切司法が動いていません。一人だけがやられている。ということがすすんできた中で人びとの疑心暗鬼はピークに達している。誰も信用しない。だからわれわれは、もう上のほうの事はいいやないか。いまさら頑張っても政治権力を取ることは不可能だろう。ごめんなさいね。結局カネで動き、マスコミで動くんであったら、だからわれわれは、われわれの守備範囲のもので、われわれと一緒にやってくれる人間は生きていける、飯が食っていけるじゃないか、という領域を作っていこうじゃないか。国家は嫌いだけれども、国家の中の国家を創り出してみせようではないか。いつか遠いときに政治権力が転がり込んでくるかもしれないけれども、すくなくともあと二、三十年くらいは、仲間とともに食っていける経済的背景をつくりだす。

  生きていける社会をつくりだす。そのためにはまずわれわれのお金を、地元の、われわれと一緒にやってくれる金融機関に預けなおす。そういう連中が集まって、どうしたらいいかと考える。まず若者の就職だ。そのときに巨大会社に行ってもしょうがない、小さい会社をいっぱい作っていこうではないか。連携を作っていこうではないか。こういう社会、つまり地域通貨論ですけど、地域通貨論を広めていって、全国、全世界にある地域通貨の試みの連中と一緒にやろう。



  実は七年前に『ESOP』*1という本を私は出しています。政府が注目してそれをやるそうです。私には全然声はかかりませんが。別の人を使っています。これを『朝日新聞』や『日経新聞』に載せています。私の本の文章の引用です。許さんですよ。ESOPを政府はやるそうです。彼らにやられたら、ろくなことはない。われわれは自分たちの中でやっていこうではないか。

  時間が無くて早口で突っ走りましたけど、流れが分かってくださったと思います。時期ともうしましたら、百年どころ違います。原始資本主義社会に戻っています。十八世紀初頭です、今の社会は。これで資本主義社会は潰れかけたのです。それで一生懸命労働組合を認め、いろんなところで社会福祉をやってきて、資本主義を延命してきたのが、今、元に戻ってしまったのです。いよいよ、われわれは失敗を繰り返さない。

 
当時やろうとしてきた地域分権、言葉はちょっとちがいますが、ローカルな生活圏を作り出してみせようと。そのためには農業と結びつこうと、そのためには中小企業と結びつこうと、われわれはものを買うときに、ブランド品は買わない。足で歩いてその辺の市場で買うと。そういう地道な事をやっていきましょうよ。とにかく若者を一刻も早く救済しなければならない。そのために政府をいじめて人を採ってくれなどという頼み事をやめましょう。

  自分らで就職先を作りましょう。可能だと思います、いまだからこそ。これだけの方が集まってくださっているのですから。湯浅さんではないが、反権力の本で相当印税が入ったはずなので、彼は相当頑張ってくれていますので、そういう連中と結びつきながら運動体にすればいい運動ができますよ。本当に頑張りましょう。最後はアジテーションで終わりましたけれども、休憩のあとにまた続きをしたいと思います。どうもありがとうございました。(大きな拍手)


野崎日記(229) 新しい金融秩序への期待(174) システム崩壊を生み出したもの(7)

2009-10-08 21:29:51 | 野崎日記(新しい世界秩序)

  結論からいきましょう。オバマ政権は人気がある。しかし、今申しましたように現在の危機を作ったのは証券化という、わけのわからない証券にある。M&Aである。そうした事に対して、がん細胞を取り除く努力を一つたりとしていない。お金を出しっぱなし。今はお金を流す事によって救済できるものではないのです。お金は余っているのです。あまったお金が人と人をつなぐ信用というところに流れてこないのです。抱え込んでしまっているのです。そういうときにいくらお金を注ぎ込んでも、抱え込んでいるものが増えるだけです。何しているのと。アメリカのオバマ政策に対して私は心のそこから憤りを持ちます。お金を出して救済できるのであれば、とうの昔に救済できているよ。オバマは何もしていないということが最初の出だしです。もっとびっくりしたのは口約束だけであるということです。

 たくさんのお金を出す出す、と言って、GDPの50%近くのお金を出す約束をしているのに、びっくりするのはバーナンキがこれまで、国債のお金を引き受けることを拒否していたということです。アメリカはどこからそのお金が出てくるのか。口約束で中央銀行がお金を出していなかった。つい先日、バーナンキが「国債の購入も考慮に」と報道されましたから、まだ買っていないのです。このお金はどうなるのか。誰がお金を出すのか。何でクリントン夫人が日本に最初に来たの? どうしてこのややこしいときに麻生さんが呼ばれたの? 世界で日本が最初だと。この流れから見て答えは明らかでしょう。こそこそ、「助けてー」と。密約です。沖縄の核持込と一緒です。外交文書に出ません。三十年後に出ます。しまった、騙されたと。おそらく、日本が国債を引き受けるのでありましょう。証拠はございません。中央銀行はお金を出していない。

 前日にガイトナーがものすごい金融安定化政策を発表したのですが、株がものすごい形で暴落した。何も解決していないではないか。AIGにお金を出しているのに、あのボーナスは何だと。サマーズにいたってはアメリカは社会主義ではなくて契約社会だから契約上の金は払うと言う。政府資金をポケットにポイポイしても、それは契約資金だからいいんだと。そういう連中がトップに座っているのです。こういったところから、経済的に何らかの解決されるとは百%考えられません。断言します。大変な事をアメリカは起こすであろうと。

 二番め。ニュー・ディール、とよく申しますが、当時の金で四十九億ドルしか実は使っておりません。今のように、最低五兆ドル使っただろうというようなすごいお金は、実はニュー・ディールは使っていません。もう一つ、ニュー・ディールは自前の技術でできた。いまアメリカには何がありますか。太陽光発電。技術ゼロでしょ。ドイツ・日本を使うしかない。鉄道、日本・フランスでしょう。自動車、日本でしょう。アメリカになにがあるのですか、今。アメリカが巨大な形でグリーン・ニュー・ディールというけど、海外の技術を動員しなければならない。口触りはいい。この二十年間の金融の自由化のおかげでアメリカの産業は軍需以外は全て壊滅した。みなさん、アメリカの産業でわれわれに魅力のあるものがありますか。ひとつでもおもちですか。ここまでやって、四百人のお金持ちを出しているだけです。圧倒的多数の人間は日本人よりももっと貧しい。世界一最貧国は実はアメリカなのです。真ん中の層、それ以下の所得層がどのくらいのパーセンテージでいるか。アメリカはダントツで一位なのです。ちなみにわが日本は二位です。自慢じゃないけど日本も貧乏なのです。トップばかり見ているのです。六本木ヒルズのほうばっかり見ているのです。こういういびつな格差社会になってしまったのだということです。格差社会という言葉を編み出したのは、私の同僚です。大きな怒りは西から来ます、日本は。

 三番め。にもかかわらず中国イジメを相変わらずやっているのだということです。次ぎがもっともいいたいことです。ロング・ターム・キャピタル・マネジメントという会社があります。これが一九九八年に破綻しました。破綻した翌年に先物取引委員会、その取引委員会の議長はボーン女史です。そのかっこいい女性が「このままいけば、アメリカは破綻する」と言ったのです。そのために商品先物を取り締まれということをやろうとした。ところがおっとり刀で駆けつけてきて、寄ってたかって、いじめたのがサマーズであります。このサマーズがボーン委員長を呼びつけて、こんな事をやるとアメリカは壊れる。ここには十三人の金融の実力者たちがいると脅した。そしてサマーズが金融派生商品、現在の金融商品を政府の管理下におくことに反対の報告書を出しました。次の年にルービンが銀行と証券と保険、この三つの区分けを廃止しました。相互乗り入れをやってもよろしいと。そのときに大合併が実現したのがシティー・グループで、その会長がルービンです。わかりますか、金融権力ということの意味が。ルービンがシティー・グループを救済してくれた。サマーズ、その子分のガイトナー。それから当時のFRB議長のグリーンスパン、この連中たちが現在の規制緩和をもっと実現させていき、商品先物の規制も事実上禁止した。商品先物規制と申しますと、利害関係者がやる取引はspeculation・投機とは言いません。

 何にも知らないおっちゃん、おばちゃんたちがそこに参加することを投機というのであります。石油が一バレル百四十㌦まで行った。石油なんか触った事もない連中たち、どこに石油があるかも知らない連中たち、その連中たちが石油相場に手を出した。実際の従事者たちは一〇%に満たなかったであろう。九〇%は、おじちゃん、おばちゃんたちがやったのであります。この世界を荒らし回ったお金の出し手はほとんど、日本の奥様です。日本の奥様が小遣い稼ぎにFX(外国為替保証金取引)という形でやった。性懲りも無くFXをやっています。本当に許しがたい。言いたいのはなぜ小口で買えるようになったか。二つの犯人がおります。一つがAIGです。一つがゴールドマン・サックスです。二つしかありません。この二つが世界の商品先物の指数をつくっています。それを上場させているのです。これを売買している。買うのはおばちゃんたちであります。

 現在のものすごい投機業者、これだけのお金が注ぎ込まれて、何も解決しなかったら、しかもAIGとゴールドマン・サックスの指数二つが残っているのだったら、そこにお金が張り付きますよ。つまり年末にかけて膨大に大豆があがりますよ。今年はどうも天候異変であるらしい。まず大豆があがります。金はすでに暴騰してますよね。石油価格は夏を越すころから百ドルは越すでしょう。なんで高速道路を千円にしたのだと思いますか。おそらく天下り族がなにかやったはずです。あれでものすごく儲かったはずです。とにかく社会全体を見渡して何か作っていくということがもう、世界的規模でなくなってしまっているのです。一握りの金融権力、一握りの少数派が金儲けするようになってしまっている。この一番の張本人をオバマ政権の中枢に据えたときに、オバマ政権は何ができますか。一切規制はしない。その代わりAIGが潰れそうだ、ゴールドマン・サックスが潰れそうだ、助けろ、お金を出そう、ということになっただけであります。今日の議論のテーマになると思いますけど、結局被害者はわれわれである。

 一番の加害者にわれわれの税金が使われて彼らは救われている。そして膨大なボーナスをせしめている。それを当の大権力者が契約社会だから仕方がないとやってしまう。これが現在のアメリカの政権であるということを考えたときに、事は終わっていない。これから本番なのです。もっと申しますと一九二九年の大恐慌は商業銀行だけの危機でした。いま、あのころに無かった投資銀行ができているのです。あのころに無かったデリバティブができているのです。あのころは預金だけだったのです。今は金融商品というものがある。それを格付け会社という変なものがあって、格付け会社にお墨付きをもらう。格付けは最初三つしかなかった。ムーディーズ・S&B、フィンチ。ムーディーズはバフェットの私有物です。S&Bはマグローヒルの一〇〇%子会社です。

 フィンチはちょっと違いますが。ムーディーズとS&Bで世界の80%のシェアをもっています。この格付けをもらわなければアメリカでは商売できない。日本の金融会社がアメリカに乗り込んでいっても、その二つの会社の格付けをもらわなければならない。そのときに日本の企業は全ての財産内容を明らかにしなければならない。知られたくないものを知らせなければならない。しかも格付けしていただいてありがとうございましたと、お金を渡しているのです。この格付け会社の収益の四〇%は手数料なのです。ちょうど私がいまから学生の文句をうけなければいけない。一万円くれたら何とかするけど、と言ったらどうなりますか。それを格付け会社がやっているのです。これがSEC・証券取引委員会の認可の元でやっているのです。

 その格付け基準は何かと聞くと、企業秘密ですと。「私たちは投資家に買えと言っていません。私たちの自己判断を示しているだけであって、買う、買わないは投資家の自由です」。そういうのが、アメリカが出してきた論理なのです。騙されたやつが悪いのだ。次にもっとも言いたいのはAIG。AIGというのは保険なのです。

 
ところが何をやったかというと私が死ぬかもしれないというときに、家族が私の保険をかける。これは当たり前です。AIGは、「あいつは絶対死なない奴だ」というので保険料をせしめてシメシメと。私が知らない人が、あいつ酒ばっかり飲むからひっくり返るぞというので、私に保険をかけたらどうなりますか。AIGは、私は絶対死なないはずだと考えてその保険を売ります、私の知らない人に。その知らない人がトンデモナイ力のある人で、マスコミをつれてワーッとやってきて、私を何らかの窮地に追い込んでいく。心臓発作で死んだと。

 そのときシメタと喜ぶのが私にかけた知らない男の保険です。つまりGM問題はそこなのです。GMの社債を持っている人が、いざというときにAIGに助けてねと保険をかけます。だけどAIGは、GMは、国家ですよ、絶対つぶれることはないということで保険を売りまくります。つぎにもう一歩踏み出します。GMの社債をもっていない企業に売りつける。AIGにとって絶対にGMは死なない。AIGがそうだから。ごぞんじですか。AIGは日本に最初にはいってきた保険会社です。進駐軍とともに来ているのです。

野崎日記(228) 新しい金融秩序への期待(173) システム崩壊を生み出したもの(6)

2009-10-06 21:21:34 | 野崎日記(新しい世界秩序)


 日本の銀行制度の特質―住み分け

 日本のすごさ、戦後わずか十一年で五大工業国に復帰できたのは、それぞれ儲からないところには政府の銀行をはりつけたからです。鉄鋼業には日本長期信用銀行をはりつけた。日本長期信用銀行は儲からない。儲からないからお客さんから預金を預かっても利子を払う事ができない。そのために割引債というものを発行しました。無記名です。無記名だから、税務当局がつかんでいない。したがって、お金持ちが財産分与するときに、脱税ができる。悪いけれどもそういう形でお金を集めた。そして地方自治体に割引債を押し付けてきた。その心は、儲からない産業だけれども、日本には鉄が要るのだぞ、造船が要るんだぞ、という形で国民を説得して、そういうところに政府系の銀行をはりつけていたのです。

 そして儲かるところは民間に渡していたのです。住宅であれば住宅金融公庫、中小企業であれば中小企業信用金庫、あらゆるジャンルで日本の銀行は棲み分けをしてきたのです。かく言う私の育った京都大学の合言葉は棲み分けだったのです。いろんな分野の連中たちが棲み分けするのだと。競争なんて、そんな恐ろしいことはしない。それぞれが棲み分けをする。羨ましかったですよ。教授会に出なくて、日がな一日アフリカにいて、強いオスがメスをほとんど全て従えるのだという当時の通説を、ウソだと。メスはほとんど浮気していることを見つけて通説を覆す。面白かったです。それでも給料は同じ。だけど文句は言えない。そういう好きな大学だったのですが。この棲み分けを日本の金融界がやったことはすごいことです。


 頼母子講とグラミン銀行

 世界的に有名になったユヌスというバングラデシュの経済学者がいます。彼がグラミン銀行を作りました。女性にしか融資しない。男は金が儲かったら悪い事をする。女は金が儲かったら子どもの教育に使う。貧しいバングラデシュで、グラミン銀行は、女性に融資すべきである。しかも担保はとらない。五人の連帯責任。モデルは、日本の頼母子講だったのです。日本の頼母子講はみんなでお金を出し合って困っている人が借り入れる(落とす)。落とした人が利子を払う。その利子は誰かのポケットに入るものではない。頼母子講全体のお金になって、これを有効に使いましょう、ではこれをお伊勢参りに使いましょうか、Aさんのおかげでわれわれはお伊勢さんに参れることになりましたから、いきましょうね、というのが頼母子講なのです。

 こうした形で地域にいろいろな庶民金融システムがかつての日本にはあった。これだと、ユヌスがつくったのがグラミン銀行なのであります。わが日本は昔から庶民金融というものがあったのだということを思い起こしてください。そういう方向にもってきていたのに、護送船団方式だ、親方日の丸だと、競争が無い。ヨーイ、ドンで競争せよ、ということになってしまった。お分かりになりますよね。

 
金融が競争状態に追いやられれば、もっとも儲からない分野に張りつけられた銀行から倒産する。当たり前ですよ。このような論理をマスコミに取り上げてくれずに、ただ、日本長期信用銀行の資産内容がどの程度悪いかを、これでもか、これでもかと書く。同行は、結局かわいそうに潰されていった。潰されるどころか、経営者は、しょっ引かれたのです。私はあのころが一番えげつなかったと思います。

 日本に言いがかりをつけた三悪人ひとりがロバート・ルービン。ゴールドマン・サックスの会長で、クリントン政権の財務長官。そしてその弟子サマーズ。叔父さんがサミュエルソン、ノーベル賞受賞学者。クリントン政権で後の財務長官に昇格しました。ルービンもサマーズも日本語ができません。そこで、ガイトナーに命令した。日本大使館に押し付けて、日本語をマスターして、箸の上げ下ろしまで文句を言ったのが今の財務長官のガイトナーです。この三悪人が日本の屋台骨を叩き潰した。この三悪人のうちの二人が現在のオバマ政権の中枢にいます。強調しておきたいのであります。

 マスコミは何をやっているのか。あのときのいじめられた事をもう忘れているのか。「ガイトナーは日本語を喋れる。親日派だ。いかにオバマは日本を重視しているかだ」。アホ言うなと言いたくなります。またやられますよ。次のブッシュ政権の財務長官がポールソン。これもゴールドマン・サックスの会長です。分かりますか。住友銀行の元頭取が日本の財務長官になったらどうなりますか。なんで大蔵省ではいけないのですか。なぜ財務省に名前を換えなければならないのですか。

商業銀行と投資銀行

 一つ一つに腹が立つのです。そして何をやったか。ここが今日の一番のミソです。日本は必死になって銀行を立て直そうとしました。銀行の数を減らした。商業銀行です。商業銀行とは私たちから預金を預かる銀行であります。もし失敗してもわれわれは保護されます。失敗しないように当局は必至になって監査します。財務省と日銀がとにかく監査します。ごまかしができません。それが商業銀行です。そしてBIS規制、資本規制。言いだしっぺのアメリカ。ここがアングロサクソンのすごさです。大阪弁で言えばアホかでしょうね。日本は必死になって商業銀行を立て直します。アメリカは全部ルールを変えたのです。

 これが投資銀行です。証券会社といわないところがミソなのです。投資銀行なのです。Investment Bankなのです。投資銀行は何でもあり。つまり誰からお金を預かっているかは公表しなくてよろしい。これがヘッジファンドなのです。ヘッジファンドのお金は匿名です。例えば私は阪神に住んでいますから阪神タイガースのファンです。切ないほどいいです。その親会社が阪神電鉄です。その阪神電鉄、いいですよ、大好きです。阪急電車は座席がチョッと高いです。短い足ではダメです。阪神電車はドーンと座れます。その阪神電鉄を買収にいった。阪神電鉄はかわいそうに、借金からなにから全部オープンにさせられたのです、当局の命令で。それをパクッたのが村上ファンド。誰がお金を出資しているのか、どういう使い方をしているのか、利益はどのくらいあるのか、一切秘密です。

 このファンドを法制的につくったのが村上本人なのです。彼が通産省にいたときにつくったのです。それをつくってパーッとやった。自分が作った法律で日本最初のファンドをつくるなんて、無茶苦茶ですよ。しかも阪神界隈に住んでいたという。許さん!というところです。誰が出資者であるか、分からないのです。そういう出資者たちのお金を預かって、巨大な金融商品をつくるのが投資銀行なのです。投資銀行は一切の秘密を当局に報告する義務はありません。これが倒産した。倒産するまえは、自己責任という言葉で、倒産しても一切当局には迷惑をかけません、だから自由に泳がせてください。

 これがシャドウ・バンキング・システム、闇の金融機関と申します。彼らが預かっているローンを忍者ローンといいます。せっかく日本語を使ってくれているのに、日本のマスコミは忍者ローンという言葉を使わず、サブプライムローンと。これまでサブプライムローンという言葉を聞いたことがおありですか。結局忍者ローンなのです。日本の忍者。秘密で組織されている。こういったところにお金があると儲かって仕方がない。例えば会社を乗っ取る。いままで乗っ取れなかった。ところが株の交換、例えばトヨタがホンダを買収しようとしたときに、お金が無い。ホンダは巨大すぎる。トヨタの株とホンダの株を交換することによって、ホンダを乗っ取る。それがM&A、その武器が株なのです。そうすると株が上がればあがるほど乗っ取りがラクになる。ホリエモンがあれだけ巨大になったのは一株を三万株に分割した。三万分の一になるはずが無いです。結果的には百分の一くらいですんだ。それをがガバーっと集めるわけですから、巨大な株価になります。それで乗っ取る。合法です。村上さんもホリエモンさんも無罪になると私は思います。これがいいという形でつくられたのが法律なんです。そういう形でお金が真っ当なものづくりのところに流れるのではなくて、金融ゲームのほうに流れたから大儲けしているのであります。ヨーイドンで競争させられていったら日本の銀行は生き残れない。そうするとM&Aの所にお金を渡すしかない。それがゴールドマン・サックスである。日本人はまだウェットなのです。「乗っ取られた、買い取られた、あの銀行に裏切られたー」。ところが外資が入ってきたときには、「外資ってそんなものだから」です。悲しいです。銀座という銀座が乗っ取られているのに、東京都民はデモ一つしなかったのです。こうして外資というものが全ての王様になって、のし上がってきたのであります。

金融権力

 世界の連中たちは、アメリカにお金を預けると儲かるということだった。アメリカ人は全く貯金をしていません。本当に貯金なしで世界を支配しているのです。詐欺です。しかしアメリカ人から言わせたら、アメリカにお金を預けなければよかったじゃないかと。世界の連中たちが、中国や日本が滔々たる形で巨大にお金を預けてくれていると。そのアメリカはどこの企業が伸びるかという形でM&Aをやってきた。その手数料の一%でも。千億円のM&Aをやったら十億円も儲かるのですよ。動かすお金が世界からのお金である。

 そしてファンド・マネージャーというのは、ルービンと一緒に飯を食えるとか、オバマとゴルフができるとか、つまり、私のように一生懸命に文献を探して、分析してこうだよ、というそんなヒマはないのです。今すぐやらなければいけない。そのときにオバマは今どのように考えているかが分かることが大事で、権力に一番近い奴が一番金儲けできるのです。細かいところはひとさまに任せる。これを金融権力というのです。とにかく冷静に経済を勉強してやるのではなくて、権力者に近いほど良いのだとなります。

 そして権力者にお金をボーンと出せばいいのであります。これが問題なのです。何が一番大きな問題かというと、お金は貸した、それを回収するまで責任をもつことをしないということです。お金を貸した、やばいところに貸すほど金利は高い。だけど回収する自信はない。そのために、良いもの、悪いものをごった煮にして分けがわからないようにして、これはゴールドマン・サックスが売り出す金融商品です、メリル・リンチの売り出す商品です、という形にして、世界の人たちはゴールドマン・サックスの話なんだからと信用し、野村證券が売りまくった。ゴールドマン・サックスなんだもん、ルービンの会社だったんだもん、となってしまう。それで売りつけられていって、騙されたと気づいたときには終わりなんです。法的に何の責任も無い。買った人間が悪い。

 実はサブプライムローンで一番傷つかなかったのがアメリカなのです。そんなに簡単に経済が回復すると言わんどってよ。全世界に害悪を撒き散らした張本人が、何も知らないよと言わんどってよ。ババ抜きとは差別用語ですが、ババをつかまされたのがアングロ・サクソン以外の国々。つまり、ヨーロッパの小さな国々。ドイツ・フランスは「この野郎」と怒れるけど小さな国は泣くだけ。おとなしい日本、文句の言いようも無い国。文句言おうと思っても権力側が叱る国ですからね。「構造改革を君たちは否定するのか!」と。錦の御旗です。終わりです。こういう状態で被害はヨーロッパの弱小国と日本に集まっています。

 日本は今のところ隠しています。これからオープンになってくるだろう。だから三月を越えるのが恐いというのが、おそらく政治家たちの本音であろうと思います。アメリカは被害が小さいです。売ってしまったのだから。あとは訴訟合戦がありますが。


野崎日記(228) 新しい金融秩序への期待(173) システム崩壊を生み出したもの(6)

2009-10-06 00:21:34 | 野崎日記(新しい世界秩序)


 日本の銀行制度の特質―住み分け

 日本のすごさ、戦後わずか十一年で五大工業国に復帰できたのは、それぞれ儲からないところには政府の銀行をはりつけたからです。鉄鋼業には日本長期信用銀行をはりつけた。日本長期信用銀行は儲からない。儲からないからお客さんから預金を預かっても利子を払う事ができない。そのために割引債というものを発行しました。無記名です。無記名だから、税務当局がつかんでいない。したがって、お金持ちが財産分与するときに、脱税ができる。悪いけれどもそういう形でお金を集めた。そして地方自治体に割引債を押し付けてきた。その心は、儲からない産業だけれども、日本には鉄が要るのだぞ、造船が要るんだぞ、という形で国民を説得して、そういうところに政府系の銀行をはりつけていたのです。

 そして儲かるところは民間に渡していたのです。住宅であれば住宅金融公庫、中小企業であれば中小企業信用金庫、あらゆるジャンルで日本の銀行は棲み分けをしてきたのです。かく言う私の育った京都大学の合言葉は棲み分けだったのです。いろんな分野の連中たちが棲み分けするのだと。競争なんて、そんな恐ろしいことはしない。それぞれが棲み分けをする。羨ましかったですよ。教授会に出なくて、日がな一日アフリカにいて、強いオスがメスをほとんど全て従えるのだという当時の通説を、ウソだと。メスはほとんど浮気していることを見つけて通説を覆す。面白かったです。それでも給料は同じ。だけど文句は言えない。そういう好きな大学だったのですが。この棲み分けを日本の金融界がやったことはすごいことです。


 頼母子講とグラミン銀行

 世界的に有名になったユヌスというバングラデシュの経済学者がいます。彼がグラミン銀行を作りました。女性にしか融資しない。男は金が儲かったら悪い事をする。女は金が儲かったら子どもの教育に使う。貧しいバングラデシュで、グラミン銀行は、女性に融資すべきである。しかも担保はとらない。五人の連帯責任。モデルは、日本の頼母子講だったのです。日本の頼母子講はみんなでお金を出し合って困っている人が借り入れる(落とす)。落とした人が利子を払う。その利子は誰かのポケットに入るものではない。頼母子講全体のお金になって、これを有効に使いましょう、ではこれをお伊勢参りに使いましょうか、Aさんのおかげでわれわれはお伊勢さんに参れることになりましたから、いきましょうね、というのが頼母子講なのです。

 こうした形で地域にいろいろな庶民金融システムがかつての日本にはあった。これだと、ユヌスがつくったのがグラミン銀行なのであります。わが日本は昔から庶民金融というものがあったのだということを思い起こしてください。そういう方向にもってきていたのに、護送船団方式だ、親方日の丸だと、競争が無い。ヨーイ、ドンで競争せよ、ということになってしまった。お分かりになりますよね。

 
金融が競争状態に追いやられれば、もっとも儲からない分野に張りつけられた銀行から倒産する。当たり前ですよ。このような論理をマスコミに取り上げてくれずに、ただ、日本長期信用銀行の資産内容がどの程度悪いかを、これでもか、これでもかと書く。同行は、結局かわいそうに潰されていった。潰されるどころか、経営者は、しょっ引かれたのです。私はあのころが一番えげつなかったと思います。

 日本に言いがかりをつけた三悪人ひとりがロバート・ルービン。ゴールドマン・サックスの会長で、クリントン政権の財務長官。そしてその弟子サマーズ。叔父さんがサミュエルソン、ノーベル賞受賞学者。クリントン政権で後の財務長官に昇格しました。ルービンもサマーズも日本語ができません。そこで、ガイトナーに命令した。日本大使館に押し付けて、日本語をマスターして、箸の上げ下ろしまで文句を言ったのが今の財務長官のガイトナーです。この三悪人が日本の屋台骨を叩き潰した。この三悪人のうちの二人が現在のオバマ政権の中枢にいます。強調しておきたいのであります。

 マスコミは何をやっているのか。あのときのいじめられた事をもう忘れているのか。「ガイトナーは日本語を喋れる。親日派だ。いかにオバマは日本を重視しているかだ」。アホ言うなと言いたくなります。またやられますよ。次のブッシュ政権の財務長官がポールソン。これもゴールドマン・サックスの会長です。分かりますか。住友銀行の元頭取が日本の財務長官になったらどうなりますか。なんで大蔵省ではいけないのですか。なぜ財務省に名前を換えなければならないのですか。

商業銀行と投資銀行

 一つ一つに腹が立つのです。そして何をやったか。ここが今日の一番のミソです。日本は必死になって銀行を立て直そうとしました。銀行の数を減らした。商業銀行です。商業銀行とは私たちから預金を預かる銀行であります。もし失敗してもわれわれは保護されます。失敗しないように当局は必至になって監査します。財務省と日銀がとにかく監査します。ごまかしができません。それが商業銀行です。そしてBIS規制、資本規制。言いだしっぺのアメリカ。ここがアングロサクソンのすごさです。大阪弁で言えばアホかでしょうね。日本は必死になって商業銀行を立て直します。アメリカは全部ルールを変えたのです。

 これが投資銀行です。証券会社といわないところがミソなのです。投資銀行なのです。Investment Bankなのです。投資銀行は何でもあり。つまり誰からお金を預かっているかは公表しなくてよろしい。これがヘッジファンドなのです。ヘッジファンドのお金は匿名です。例えば私は阪神に住んでいますから阪神タイガースのファンです。切ないほどいいです。その親会社が阪神電鉄です。その阪神電鉄、いいですよ、大好きです。阪急電車は座席がチョッと高いです。短い足ではダメです。阪神電車はドーンと座れます。その阪神電鉄を買収にいった。阪神電鉄はかわいそうに、借金からなにから全部オープンにさせられたのです、当局の命令で。それをパクッたのが村上ファンド。誰がお金を出資しているのか、どういう使い方をしているのか、利益はどのくらいあるのか、一切秘密です。

 このファンドを法制的につくったのが村上本人なのです。彼が通産省にいたときにつくったのです。それをつくってパーッとやった。自分が作った法律で日本最初のファンドをつくるなんて、無茶苦茶ですよ。しかも阪神界隈に住んでいたという。許さん!というところです。誰が出資者であるか、分からないのです。そういう出資者たちのお金を預かって、巨大な金融商品をつくるのが投資銀行なのです。投資銀行は一切の秘密を当局に報告する義務はありません。これが倒産した。倒産するまえは、自己責任という言葉で、倒産しても一切当局には迷惑をかけません、だから自由に泳がせてください。

 これがシャドウ・バンキング・システム、闇の金融機関と申します。彼らが預かっているローンを忍者ローンといいます。せっかく日本語を使ってくれているのに、日本のマスコミは忍者ローンという言葉を使わず、サブプライムローンと。これまでサブプライムローンという言葉を聞いたことがおありですか。結局忍者ローンなのです。日本の忍者。秘密で組織されている。こういったところにお金があると儲かって仕方がない。例えば会社を乗っ取る。いままで乗っ取れなかった。ところが株の交換、例えばトヨタがホンダを買収しようとしたときに、お金が無い。ホンダは巨大すぎる。トヨタの株とホンダの株を交換することによって、ホンダを乗っ取る。それがM&A、その武器が株なのです。そうすると株が上がればあがるほど乗っ取りがラクになる。ホリエモンがあれだけ巨大になったのは一株を三万株に分割した。三万分の一になるはずが無いです。結果的には百分の一くらいですんだ。それをがガバーっと集めるわけですから、巨大な株価になります。それで乗っ取る。合法です。村上さんもホリエモンさんも無罪になると私は思います。これがいいという形でつくられたのが法律なんです。そういう形でお金が真っ当なものづくりのところに流れるのではなくて、金融ゲームのほうに流れたから大儲けしているのであります。ヨーイドンで競争させられていったら日本の銀行は生き残れない。そうするとM&Aの所にお金を渡すしかない。それがゴールドマン・サックスである。日本人はまだウェットなのです。「乗っ取られた、買い取られた、あの銀行に裏切られたー」。ところが外資が入ってきたときには、「外資ってそんなものだから」です。悲しいです。銀座という銀座が乗っ取られているのに、東京都民はデモ一つしなかったのです。こうして外資というものが全ての王様になって、のし上がってきたのであります。

金融権力

 世界の連中たちは、アメリカにお金を預けると儲かるということだった。アメリカ人は全く貯金をしていません。本当に貯金なしで世界を支配しているのです。詐欺です。しかしアメリカ人から言わせたら、アメリカにお金を預けなければよかったじゃないかと。世界の連中たちが、中国や日本が滔々たる形で巨大にお金を預けてくれていると。そのアメリカはどこの企業が伸びるかという形でM&Aをやってきた。その手数料の一%でも。千億円のM&Aをやったら十億円も儲かるのですよ。動かすお金が世界からのお金である。

 そしてファンド・マネージャーというのは、ルービンと一緒に飯を食えるとか、オバマとゴルフができるとか、つまり、私のように一生懸命に文献を探して、分析してこうだよ、というそんなヒマはないのです。今すぐやらなければいけない。そのときにオバマは今どのように考えているかが分かることが大事で、権力に一番近い奴が一番金儲けできるのです。細かいところはひとさまに任せる。これを金融権力というのです。とにかく冷静に経済を勉強してやるのではなくて、権力者に近いほど良いのだとなります。

 そして権力者にお金をボーンと出せばいいのであります。これが問題なのです。何が一番大きな問題かというと、お金は貸した、それを回収するまで責任をもつことをしないということです。お金を貸した、やばいところに貸すほど金利は高い。だけど回収する自信はない。そのために、良いもの、悪いものをごった煮にして分けがわからないようにして、これはゴールドマン・サックスが売り出す金融商品です、メリル・リンチの売り出す商品です、という形にして、世界の人たちはゴールドマン・サックスの話なんだからと信用し、野村證券が売りまくった。ゴールドマン・サックスなんだもん、ルービンの会社だったんだもん、となってしまう。それで売りつけられていって、騙されたと気づいたときには終わりなんです。法的に何の責任も無い。買った人間が悪い。

 実はサブプライムローンで一番傷つかなかったのがアメリカなのです。そんなに簡単に経済が回復すると言わんどってよ。全世界に害悪を撒き散らした張本人が、何も知らないよと言わんどってよ。ババ抜きとは差別用語ですが、ババをつかまされたのがアングロ・サクソン以外の国々。つまり、ヨーロッパの小さな国々。ドイツ・フランスは「この野郎」と怒れるけど小さな国は泣くだけ。おとなしい日本、文句の言いようも無い国。文句言おうと思っても権力側が叱る国ですからね。「構造改革を君たちは否定するのか!」と。錦の御旗です。終わりです。こういう状態で被害はヨーロッパの弱小国と日本に集まっています。

 日本は今のところ隠しています。これからオープンになってくるだろう。だから三月を越えるのが恐いというのが、おそらく政治家たちの本音であろうと思います。アメリカは被害が小さいです。売ってしまったのだから。あとは訴訟合戦がありますが。


野崎日記(227) 新しい金融秩序への期待(172) システム崩壊を生み出したもの(5)

2009-10-05 23:52:30 | 野崎日記(新しい世界秩序)


日本の銀行の特質


 つまり私たちは銀行しか知らなかったのです。幸せだったのですね。お金とは銀行に預けるもの。その銀行も大蔵省や日銀が監査してくれているから、絶対潰れない。だから住友銀行がいいとか、三菱銀行がいいとかではなくて、駅の近くの銀行に行っていたのです。また地方自治体の力が強かったから、例えば京都府などは巨大銀行をいれなかったのです。周辺しか入ったらアカンと。そういう意味で信用金庫が京都府ではものすごく力があった。許認可権があったから。われわれ庶民は近くの銀行、その銀行を選ぶ基準は大きな銀行も小さな銀行も、利子は、例えば、五・五%に統一されている、銀行を選ぶとき、会議の会場を貸してくれるかとか、地域運動会をするときにビールを提供してくれるかとか、その程度の基準で選んでいた。その程度で選んでいたということは逆にいえばどこでもよかった。つまり預けっぱなしなのです。

  一つ今日は覚えて帰ってください。奥様という言葉は日本語独特の言葉でありまして、外国語にはありません。ベターハーフとか、ワイフとか、ハニーとかはありますが、外国語には奥様という単語はありません。つまり台所に鎮座ましまして、そこでご飯の切り盛りをする人。つまり家庭の大蔵省。日本の男性は教育されましたね。いまは知りませんが。われわれは親父から教育されました。給料の封を切らんと渡すのが男だぞと。そしてすみません、今日、コンパがあるので千円ください、そんな交渉ばっかり奥様とやっていました。

   奥様は、バーゲンで目の色変えて走り回る。私なんか、男だったら千円で酒を飲むの、格好悪いですよ。いい格好して、金を使い、あくる日ラーメン食っているわけです。奥様はそんなことは絶対しない。必死になってやりくりする。この奥様の権力が強いゆえに、わが国は希有なる高貯蓄国だったのです。この高貯蓄を銀行が一手に引き受けている。その銀行が長期投資をずっとしていく。しかも貸付係はものすごい力を持っている。貸付係になることによって、偉い人になったな、あの人は、というシステムになっていました。貸し手責任というのがありました。それが長期の投資にずっと回っていって、お金を返すというときに、ほとんどの銀行は「返さないでください、利子だけ払ってくだされば結構です」というように、日本の企業は安定した資金を持つ銀行からの長期的な融資によって支えられていた。

  これにアメリカは気づいたわけです。これを叩き潰せと。アメリカ人は何をやっていたか。株ばかりやっていたわけです。銀行にお金を預けません。株屋さんです。株というのは大体一週間で売買される。株式による資金調達は安定的なものではないのです。危なくて株による資金調達、できません。ところが日本では長期的な投資を銀行が担っていた。例えばコンパクト・ディスクなんてずっと赤字でしたよね。でも銀行が一生懸命、「頑張れ、頑張れ、面倒見る」といって、結局コンパクト・ディスクは日の目を見たでしょう。ああいったことを考えていきますと、日本の銀行とアメリカの金融機関には、企業を育てていくという意味で雲泥の差がある。そこでアメリカは日本の銀行を潰せとなった。

日本の銀行を叩き潰せ

  潰せとなってきたときにさすがアメリカ。頭がいいのです。悔しいけれども。理路整然と来るのです。日本の銀行を潰す理論がすごいんです。日本の銀行は自分のお金を持っていないじゃないか。預金とは、客様から預かっているお金ではないか。借金ではないか。しかも一年で返さなければならないものを、五年とか十年とかの長期投資に使うとは何事か。自分の金で勝負しろとやってきた。ここに出てきたのがBIS規制、つまり銀行の持つ資本、これがどのくらいあるか。自分の持っている資本の十二・五倍を超える貸し出しは禁止だという国際協定を結んでしまった。あのころから私は絶対反対しろと言ってきたんですけど。株も資本の中に含むというので銀行はことの恐さがわからなかった。だんだん分かってきました。

  日本のマスコミは実に情けない、腹が立つ。本当に恐ろしいのはテレビです。日本長期信用銀行などを全部素っ裸にしていって、自己資本規制がクリアできてない、どこどこの銀行は〇%だとかという報道が相次いだ。われわれはあわてて、エッ、あの銀行が潰れるのかとお金を引き出して郵便貯金に行った。その逃げ込んだ先が民営化なのです。わかるでしょう。あの親分は某銀行の頭取だったのです。あの民営化のときに、ゴールドマン・サックスがコンサルタントだったのです。でき過ぎですよ。できレース過ぎますよ。

  それはともかく、そこで日本の銀行は潰されました。二十一行あった銀行が三行になりました。いかにマスコミの攻撃がすごいか。本当に恐いです。そういうことがあって日本の銀行は潰されていきました。次どういうことになったかと言いますと、結局お金は余る。お金は余るけど、貸付先が無い。そのお金は結局アメリカの銀行に預ける。アメリカの銀行はレジメに出している証券業務になっていくわけであります。こういう流れになってくる。時間が迫ってきましたが、今は、とにかくいかにお金というものが間違って使われているかだけを説明したいのです。


 マーケットなんて無い

  実はみなさんに一つだけ訴えたいのです。マーケットなんてありません。需要と供給で価格が決まるなんて絶対ウソです。本でも私が店にはいった左手に平積みにされたら、売れます。いい本を安く、なんてウソです。奥のほうに並べられたら終わりです。私は自分の本を奥のほうから抜き出してきて、そこに置くのです。

   一周して帰ってきたら売れているのです。ざまー見ろ。これがマーケットなのです。狭い売り場をどう独占するかという力なのです

  日本は新日鉄とか、造船とか銅とかすごい企業があります。一番基礎的な産業です。この連中が作った品物はわれわれに売らないんです。一番恐いプロに売る。新日鉄の製品をみなさん買ったことがありますか。新日鉄の鉄はトヨタが買うんです。そうなってくると、新日鉄がいくら高く売ろうと思っても、トヨタですよ、天下の。「誰にものを言っているのか」で終わりですよ。「はいー」となりますよ。「せめて、われわれも企業体ですから、従業員を抱えていますから」、「そんなの我慢しー」と言うでしょ。トヨタは実物の売りの儲けよりもトヨタ銀行とわれわれが尊称しております金融業務で散々儲けてきた。はっきり申しましてプロ相手の商売は儲からないのです。素人相手の商売が儲かるのです。だから農業は儲からないのです。一生懸命、お百姓さんが必死になっても売る先が巨大スーパーなのです。それはあきませんよ。

  スーパーが値段を決めるのですから。とにかく市場を復興させてください。歩いていける市場で、この会場の下は市場でしたよね、やりとりしながらのときはお百姓さんは生きていけたのですよ。スーパーの大独占体になってしまった。価格決定権を生産者がもつか、持たないかの決定的な違いです。