消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(50)新しい金融秩序への期待(50)排出権市場創出批判(5)

2009-01-09 09:54:46 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)

質問 南米諸国の債務取り消し運動とアフリカ諸国の債務取り消しの関係性について

本山――実際には闇の中で、東洋経済から出た「エコノミックヒットマン」はまさにそのことを書いています。ノルウェー政府が債務帳消しするといっても急にできない。お互い契約交わさないといけないから、3か月とか6か月かかります。その間大統領の私腹を肥やすためにヒットマンが行く。契約が成立する前に、自分たちの有利な取引をする。国家財政を担保に大統領の私腹を肥やす。「エコノミックヒットマン」の本によると、ヒットマンが、埒(らち)が明かなかったジャッカルが行くとあります。ジャッカルの手に負えなかったらCIAが行く。次にイラクのように軍隊が行く。結局、米国の要求通りになる。しゃんしゃんと債務の取り消しをみんなが認めるが、実際にはだめでしょう。前のドイツ・サミットのときもそうだった。債務削減が決められたけれど、実際に起こったことは各大統領による着服だった。

  アフリカでは、ゲィティッドコミュニティの象徴的な存在があります。石油や金、ダイヤモンドを掘るには、狭いテリトリーの中にいっぱい軍隊を配置していなければならない。その軍隊が傭兵です。その傭兵は、イラクで「活躍」した退役軍人です。人を殺していたら普通の生活に戻れません。そういう連中がブラックウォーター社という民営会社が警備担当として出て行く。それが現在の戦争企業の意味なんです。先ほどゲィティッドコミュニティと言いましたが、武力で囲まれた平和、小集団の金持ちの平和、こういったものが現代社会なのです。アフリカの小国では、その国の軍隊が警備をやってもブラックウォーター社の武器・弾薬に勝てない。完全に軍事会社の力を借りなければ、治安活動ひとつできない。ブラックウォーター社は貧乏人から治安活動の報酬をもらうよりも、シェブロンからもらうほうが手っ取り早い。現在のラテンアメリカなどのチャベス、エクアドルをはじめとした反米政権は部族のエリートなんです。部族のうらみつらみを反映した大統領になります。これがご存知のように、南の銀行を立ち上げた。非常に注目していますが、どのくらい維持できるかわかりません。早速ブラジルがいちゃもんつけだしました。南の銀行からイスラムの銀行、そういったものがこれから出てくると時代が変わってくると思います。

 日本でもNGO関係の銀行が出てしかるべきなんですけれども、サラ金法案が改訂されて、5000万円以上でなかったらNGO銀行ができない。そういうたががはめられて、せっかくの気運が頓挫しています。私は単なる一つの貧しい国のゲリラ的な反抗運動ではなくて、歴史の大きな流れの中で、金融の一人歩き現象に対して民衆レベルからノーと言えるような動きが全世界的規模で起こりつつあると思っています。南米の反米勢力は国際的な支持を受けるのではないかと思っています。

質問 南米の銀行をめぐる、南米各国間の関係とIMFとの関係について


本山――難しい問題です。IMFと世界銀行は対立しています。世界銀行の方がかなり模様替えしまして、南の諸国に同情するような気配です。IMFは逆にもっと頑固で、そもそも創設時のIMFの条文は資本の自由な動き禁止しているのです。現在のIMFは、条文を変えて資本の移動を自由にしようという方向へもっていこうとしています。世界が、IMFの援助を二度と受けたくないと言うのはこういうことなんです。まず、コンサルタントが送られてきます。それもアメリカ人です。新古典派経済学オンリーです。このコンサルタントが送られてきて、今まで依存していた会計士とか法律事務所を全部切らされるわけです。そして、アメリカから送り込まれたコンサルタントの言うままになるわけです。そして企業経営に介入してきます。

 社外重役出せとか、株式の値段を上げるためにもっと財務会計を良くしろ、そのためにも人間の首を切れとか、年功序列型賃金をやめろとか。こういうことをどんどんやってくる。最終的には国家政策まで介入します。公教育に介入します。公立学校は無駄である。私学にしろと。そして、バウチャー制度です。政府が500ドル出すから、好きな学校を選べと。学校を競争させる。そして小さい時から株式の取引を教え、銀行という銀行は今までの地場産業への融資ではなくて、もっぱらM&A、アメリカへの株式投資という方向へ傾斜させる。結局は、IMFの勧告に従えば全世界のすべての国のお金がアメリカに集まっていくというシステムです。だからIMFの配下にあった国は反米的になってきた。

 私たち、研究者は、アメリカの雑誌に何点論文が載ったかで評価されている。私など載せてくれるはずがない。しかし、載っていないのは無能だとされる。載るためには新古典派の意見をそのまま書かなくてはいけない。いまは、本当に帝国主義だと言いたい。経済的搾取だけでなくて、思想のすべてを改造してしまう。私は、新自由主義反対を闘うのは正しいと感じている。

  貧しい国のお金は地場産業に融資するということがなければならない。決定的な影響力を与えるには、女性に与えるということです。なぜなら、男が金儲けすると悪いことする。女遊びする。女性がお金を持つと子どもの教育に使う。国の自立というものは教育なんだということで、99%女性に融資するというのがグラミン銀行の発想です。このグラミン銀行の発想に世界の人たちが呼応しています。南の銀行のイメージです。ちなみに、グラミン銀行の発想はどこにあるかというと、日本の「お講」です。日本人は忘れていますが、グループでお金を出し合って、お金に困っている人がいたら講を落として、利子をもらう。でもその利子はみんなのものだということで、その利子でどんちゃん騒ぎするためにみんなでお伊勢参りをする。これをお講と言う。生産的には結びつかないけれども少なくとも講という組織を通じてお金のやりとりで人々の心を結集しようとするメカニズムであった。ユヌスは、日本の講の組織を、自分の故郷バングラディシュでやってみようとした。それで、ノーベル経済学賞ではなくて、ノーベル平和賞をもらった。この動きは世界的な動きに連動しているはずです。そういう意味で全面支持しています。

質問 エクアドルの債務について日本が大きく関与しているので、日本でできることがあるはず


本山――排出権取引の問題で、現地で炭素ガス排出削減の事業を起こし、それを日本の会社に売りつけるという事業を日本商社がやっている。排出権がらみの日本企業による事業規模では、1位がチリ、2位がエクアドルです。日本の場合、かなりのシェアがラテンアメリカにあるんです。そういう意味では単純に債務の返済の問題だけでなくて、新たなエネルギー削減事業に対する投資の問題が出てはている。そおいう意味で、エクアドルが注目を浴びています。しかし、実態がよくわからない。皆様方の組織によって、そういった情報を教えていただきたいと思います。


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1 コメント

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メールアドレスについて (houjun)
2009-01-10 20:46:12
はじめまして。houjunと申します。
本山先生にメールでお尋ねしたいことがあり
motoyama_2006@goo.ne.jp あてに送信しましたがエラーとなり戻ってきてしまいます。
このアドレスで間違いないのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
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