消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(128) 新しい金融秩序への期待(128) 恐慌(14)

2009-04-09 07:34:34 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)

(22) 非正規従業員とは、期間を定めた短期契約で雇われた人たちである。期間を定めない雇用契約を結ぶ正規雇用の対義語である。日本では、非正規従業員には、パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣社員が含まれる。

 バブル経済崩壊後の平成不況では、コスト削減の圧力から正規雇用(フルタイム労働)である正社員の採用を抑制し、非正規従業員を増やすことで、業務に対応していくようになった。労働者数の推移をみると、一九八〇年代から雇用者に占める非正社員の比率は少しずつ増加していたが、一九九〇年代半ばから増加傾向が著しくなり、〇五年には約三割を占めるようになる。これは主に女子学生、中年女性のパート・アルバイトが増加したことと、男女(とくに女性)ともに派遣・契約職員が増加したためである。〇八年一~三月期平均データでは過去最高三四・〇%を記録し、三人に一人超を占めるようになる。また、〇八年版『青少年白書』では、一〇代後半の非正規授業員率は約七割と報告している。

 欧州には、正社員と非正社員の均等待遇(同一労働同一賃金)が原則になっている。フランスは一九八一年、ドイツは一九八五年に差別的取り扱いを禁止した。EUでは、一九九七年にパートタイム労働指令が発令された。これにより、パートタイムを理由とした差別の禁止と、時間比例の原則を適用することとなった。フルタイムとパートタイムとで賃金が違うということがなくなったのである。

 米国には、均等待遇という原則はない。これは、それぞれの雇用形態は企業と労働者の間の契約で取り決められたものだから、政府が法律で介入することはしないという考え方による。そのため、労働者が広域な労働組合を組織し、企業や地方自治体に待遇改善を図る方向で動いている。

 韓国では、二〇〇六年一一月三〇日に国会を通過・成立した「非正規職保護法」がある。雇用期間が二年を超えた有期雇用者は無期雇用とし、派遣労働者は直接雇用とすること。非正規社員を、賃金・勤務条件で正社員と不当に差別してはならないといった内容。韓国では、一九九七年の経済危機をきっかけに非正規化が一気に進み、韓国の非正規社員率は五五%(二人に一人超)と日本の過去最高である三三%をはるかに超える高い状況だったこともあり、上記の法が成立したが、実際には非正社員が二年勤務の法実施の直前に大量に解雇される事例が増えている。平均月収八八万ウォン程度で暮らす若者を指して、「八八万ウォン世代(88만원 세대)」という語が流行語となるなど、ワーキングプアは韓国でも大きな社会問題である。

 日本では、非正規雇用から正規雇用への転換については、制度自体がない企業も多く、制度がある企業でも適用例はさらに少ないのが実情である。また多くの会社が非正規雇用に対する差別や冷遇は当然という認識があり、正社員と同様の収入になる事は難しい(Wikipediaより)。