消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

民営化される戦争とグローバル企業(12) 広島講演より(9月24日)

2006-11-06 23:45:05 | 世界と日本の今

8、石油利権のためのイラク戦争

価格支配による利益の争奪戦

今、世界中で進展していることは、いわゆる石油メジャー、巨大資本が合併を繰り返してきて巨大石油会社がどんどん少数になってきています。価格統制をするためなのです。ちょうど王子製紙が北越製紙を乗っ取ろうとしたのと同じことです。増産に次ぐ増産により価格を下げることでシェアを増やす行動よりも、M&Aという形で競争相手企業を吸収合併して価格を吊り上げていく方法。文字通りカルテル的な行為が現在の石油産業に起こっているのだろうと思います。

 
だから1バレル90ドルとか100ドルという信じがたい程の高い値段が出てくることは、メジャーズや産油国が原油を増産しないという一言に尽きるのです。結局、価格支配が完成直前になったということです。実はサウジアラビアとアメリカの関係はよくないのです。スセインを叩き潰すことによってイラクを第2の石油基地にしてゆこうとアメリカは画策していたのです。サダム・フセインの登場と共にOPEC(石油輸出国機構)が形成された。そしてイラクのほかにはロシア、フランス、ドイツ、中国、そしてキューバなどが35ヶ国連合というものを形成した。そこではアメリカとイギリスが排除される構造になりかねなっかった。

 
父ブッシュがサダム・フセイン政権のイラクを攻めたのですが、バグダットへの侵入は父ブッシュでも恐くてしなかった。ちょうどナポレオンがモスクワを侵略して敗退したと同じように危ないというので矛を収めたのですが、チェイニーやラムズフェルドが今度は子ブッシュを説得した。バグダットへの侵入は民営化された戦争請負企業が行ったらいい。そういう連中を使えばアメリカの正規軍の被害は少なくて済むと言っておそらく説得したのだと思います。そして、バグダットへ侵入したのです。

アメリカとロシア・フランス連合の対立

 
イラクを攻める前のアメリカにとって一刻の猶予がならなかったのは、サダム・フセインがついに切り札を切ったからです。アメリカの生命線は石油であると同時に世界の石油取引がドルで行われていることに尽きるのです。つまりフセインがそのドル建てをユーロ建てに変えると言いましたら、それに何とサウジアラビアも賛意を表明した。インドネシアも賛意を表明したのです。しかもイラクの利権はフランスにほぼ握られていた。そういう状況の下では一刻も早くあらゆる口実を設けてイラクを攻めるしかなかった。

 
それで大量破壊兵器があるはずだということで攻めた。こんなことは言ってはいけないけれど、おそらく人の見ていない間に大量破壊兵器を運び込むチャンスがあったのではないかと思いますが、結局は全く発見できなかった。普通であれば大統領は引責辞任です。でも居座ってしまっているのです。

結局あそこでフセインを叩きのめしたために、世界の石油取引はユーロ建てに移らないでドル建てに戻ったのです。但し、今ご存知のように、ガスブロム(ロシア国営のガス会社)のロシア側が必死になってアメリカを追い出そうとしています。サハリン第2鉱区ではおそらくアメリカ・日本連合軍が追い出されるかもしれません。中国はまだアメリカと対決する自信はないはずです。というのは石油採掘はものすごく技術を要する。単なる資本力だけでなくて技術そのものがいる。この技術が一定程度中国に移転しない限り中国はアメリカとの対決を避けるだろうと思います。

 
そうしますと、世界はここ当分の間、アメリカ対ロシア・フランス連合という方向に行くのだと思います。わが日本は世界で最もアラブ側に尊敬されている国であってイランなどとは特に仲がよかったのです。その今までに築いたせっかくのいい財産を今度のアメリカとの軍事的一体化によって失っていくのであり、非常に危ないことになります。

日本の若者よ、声を上げよう

 
それに対して、日本ではどうしたものか若い人達がデモ一つ起こしてくれません。私の勤めている大学ではビラ一枚張られておりません。この間久しぶりに京都大学に行きましてほっとしました。ここにはまだビラが貼られている。若い人達はこういう話を嫌うのですね。それはものすごく恐ろしい現象なのです。世界で最も日本人は恥ずかしく思わなければいけないのは、世界中の若者達があちこちで反戦デモをやっているのに、わが日本だけは静かであるということです。ここのところに致命的な恐さがあります。

 
私が政治家だったらこの状況を利用しますね。教育基本法を変えます。憲法も変えます。それこそ「晋ちゃん」ブームです。そういう意味でこの私達のつらい状況、何とか皆さんの力で乗り切ってほしいと思います。

 
貧しさと若者の無関心さという今の状況が権力にとって有利に展開してしまっています。でもどのくらいかかるか分かりませんけれども、いずれ世界は、社会は平等になっていくでしょう。しかし少なくとも世界の人々の動き方に対して、我々は日本人の明確な意思を表明しなければ大変なことになるだろうと思います。今後も共に頑張りたいと思います。私も何とか生き延びたいと思っております。今日はこれで話を終わらせていただきます。


民営化される戦争とグローバル企業(11) 広島講演より(9月24日)

2006-11-05 22:35:59 | 世界と日本の今

7、勝者と敗者へ分極化する社会

若い世代が戦争に参加

  民営化された戦争という『戦争請負企業』を書いたのP.W.シンガーが若い世代の戦争参加についてNHK出版から新しい本(『子ども兵の戦争』)を出しています。

 そこでは、現在の戦争は若い世代によって行なわれていると書かれています。どちらかと言うと子供は次代を担う世代として大事に温存されてきました。ところが21世紀に入って子供が正規軍として大量に使用されるようになっていると。シンガーによれば18歳未満の戦士が30万人は下らないだろうと言う。テロリストの40%を若者が占めています。50万人の子供が予備兵として待機させられています。戦闘の80%は、15歳以下の子供を参加させています。戦闘の18%では12歳以下の子供達が戦わされています。

  東南アジアと中央アジアの戦場では、戦争に参加している子供達の平均年齢は13歳です。ウガンダでは5歳の兵士すら見られた。子供兵士の30%は、少女です。

 少女兵士達の多くが性的虐待を受け、戦争が終結しても社会に復帰することに困難を覚えています。ゲリラの指導者達が、いたいけない幼い子供達を訓練しています。10歳以下の子供達が武器密輸業務に携わっています。自爆テロの多くは、監視システムを潜り抜けやすい子供達によって遂行されています。1997年にコロンビアでは自爆テロが若干9歳の少年によって行われた事例があります。 9・11テロ以降、米軍はアフガニスタンからフィリピンに至る戦地で少年兵の攻撃にさらされています。

 アフガニスタンで最初に米軍の「グリーン・ベレー」の兵士を殺害した反乱軍の兵士は14歳であった。米軍が拘束したタリバン兵士で最も年少であったのは、12歳の少年であった。2004年末に史上最大の震災と津波被害を受けたインドネシアのアチェでは、子供達が誘拐されてゲリラ組織に戦士になるべく売られています。泣きたくなるような状況が今起こっているのです。

  そして、米軍が設置しているキューバのガンタナモ湾捕虜収容所では、13歳から16歳までの子供の兵士が「イグアナ・キャンプ」と呼ばれている少年収容特別棟で英語や数学の教育を受けています。つまり、捕虜収容所に子供達がいるのです。16歳以上18歳未満の捕虜は同収容所の「X線キャンプ」棟に入れられています。 サダム・フセインが権力を保持していた時には、イラクでは「アシュバル・サダム」(サダムの獅子の子)と呼ばれる10歳から15歳までの少年軍が組織され、ゲリラ訓練が施されていました。米軍がイラク侵攻した後は、ナザリア、モスル、ファルージャで、これら少年兵士達と戦わねばばらなかったのです。

 
ブッシュ大統領が、「使命の完成」演説をした2003年5月にも、12歳の少年が米海兵隊員をAK47ライフルで射殺したし、15歳の少年が米軍トラックを爆破した。要するにシーア派、スンニ派を問わず、イラクでは少年兵士の参画を当然のこととして位置付けられているのです。

貧困層の少年が上流層を支える

 多感な少年期に殺戮に明け暮れた子供達が、戦闘が終わって優しい共同体の復権に向かえるでしょうか。戦闘に参加するしか生きる術がないというグローバル社会の「内」と「外」の関連をどれだけの人達が直視しているのであろうかと私は思うのです。

  つまり、老若男女が連携して、お互いに心のぬくもりを感じ合いながら、互いに励まし合いながら生き抜いていくという社会。この社会がいつの間にか私達の周りから急速に消えようとしているのではないだろうかと思います。象徴的な例はアメリカでは上院・下院の議員さん達の子弟でイラクに行っている人はいない。彼らの上流階級を支えているのが貧しい層のアフリカン・アメリカンでありメキシカンでありそういう貧しい層の血の上にアメリカのエリート達の存在が保障されています。  そういうことを考えた時に現代社会すべてに言えるのは、国家のためとか正義のためとかの戦争はどこかに吹っ飛んでしまっています。結局ある特定の企業集団の利益を保障するために、そういう貧しい少年達が動員されていくとんでもない社会に我々は突入しつつあるということです。

「ゲーティッド・コミュニティー」が増える

 それと繰り返し言いますようにアメリカでは出自や文化的な背景を別とする人達がアメリカ社会に同化しなければならない現実があります。一つのイニシエーション(儀式)といったものが戦争にあり、その人達を鍛え上げ再就職の面倒を見ていく組織がいろんな所にできていくのだろうと思います。少し視点を変えてみますが、アメリカ社会には「ゲーティッド・コミュニティー」と言う言葉があります。つまり、地域社会から塀で遮断され厳しい警備により安全性が保障された巨大な住宅構造物のことです。

 例えばニューオリンズの話が一番分かりやすいのではなかろうかと思います。ニューオリンズで大津波がやってきて一帯に被害があった。ハイ・ソサイアティーつまり上層グループは塀で囲まれた「ゲーティッド・コミュニティー」の中に住んでいる。その塀には常時ガードマンが警備していて、貧乏人達や荒くれ者達が中に進入することを防いでいるのです。

 ブラックウォーターという警備会社があるのですが、ニューオリンズの被害があった時に、ブラックウォーターの社員達がいち早くニューオリンズのゲーティッド・コミュニティに派遣されていた。これがブラックウォーターのホームページに誇らしげに載っているのです。 つまり塀で囲まれた中の人達は武力でもって安全が保障されている。その外の人達が住んでいるのは大げさに言えば殺戮と暴力と麻薬が渦巻く世界。そういった世界から遮断され塀に囲まれた高級な世界、これがアメリカの中にもあるのだということです。

 世界中にそういう世界があると思ったほうがいいのではないでしょうか。多国籍企業が営業する所は「ゲーティッド・コミュニティー」。多国籍企業から外れているところは空白で、あらゆる略奪が、人間の憎悪が渦巻いている社会なんだと。

 
極端ですが、分かりやすく言えばそういう社会が世界中にあり、日本のような平和な社会は世界では珍しいのだと考えなければいけないと思います。ますます社会が分断されて一部のお金持ち達が身の安全を守るために警備会社の暴力を利用するようになっていく。そういう世界が今進行していると私は思います。

都市コミュニティーが崩壊

 わが日本においても大都市ではコミュニティーの崩壊が進んでいます。そういう意味では広島というのはバランスの取れたいい町だなあとここへ来る道々思ったのですけれども。例えば私の住んでいる福井という所は、国道8号線という大動脈があって市内の真ん中に巨大ショッピングセンターがある。そこには映画館もあれば普通のショッピンッグセンターもある。もちろん食堂も、病院も、郵便局もある一大不夜城なのです。みんな車でそこへ行きます。しかし、玄関である福井駅の駅前はがらんとしている。商店街もなくなっている。シャッターが閉まっている。わが日本の多くの地方都市はほとんどそうなんだろうと思います。

 つまり一部高速道路のインターチェンジのところに巨大施設があって、それ以外のところはすべて空白である。人々は車で移動する。公共交通機関や徒歩では全く用を足せない。そういうような人の流れ方の実情を私達は理解しておく必要があると思います。

 要するに、そういうふうにして都市コミュニティーがなくなってきている。わが日本でもアメリカでも起こっている。そして、田舎にウォルマートの様な巨大な施設がポンと出てくる。そこに人々が集中し移動は車でする。そういう社会が世界全体に広がっていって、世界がどこもみんな同じ風景になってしまう。そういう構造ができていると考えたらいいと思います。

  アメリカでは刑務所まで民営化されています。あるいはSWAT(スワット)という特殊火器の携帯も許可されている警察業務も民営化されています。そして、こうした暴力を民営化された民間会社が現代の傭兵として戦争に駆り出されている。つまり現代のグローバリズムというのは「飛び地」である。すべての地域が繋がっているのではなくて「飛び地」、「飛び地」、「飛び地」として繋がっている。「飛び地」と「飛び地」の間には暗黒の闇が広がっているのだと現在のグローバルな社会構造を理解したらいいと思います。

勝者と敗者へ分極化

  これまで資本主義的近代化とは、資本家の数が少なくなり、失うものは鉄鎖のみのプロレタリアートが反体制勢力として大きくなることであると想定されて来ました。しかし、現在進展しているグローバリズムとは、ますます少数化するシステムの勝利者、ウィナーズです。ア・ウィナー・ゲッツ・オール、たった一人の勝利者がすべてをつかみ、後は皆敗者になっていくということではなかろうか。勝利者の内側と敗者の外側といった構造の中に現代社会はビルトインされてしまっていると理解していいと思います。

  グローバリズムとは、少数化するシステムの勝利者と圧倒的多数になる敗者とが分極化され、敗者が「内」から「外」に放り出されるシステムです。そして、「外」の貧しい若者が、「内」に入れてもらうべく戦争に参加するという「イニシエーション」が働きます。現代社会の危機は、「外」にいる絶望者が、「内」にテロを仕掛けることから生じるのです。

 我々が「文明化」(civilization)と言う時に、この「civilization」とは市民になることです。忌まわしい農奴、ヒューダリズム(封建主義)からポリス(都市国家)の中に入って都市の中の自由・平等・博愛というものを保障されていくことが市民になることです。

 「civilization」、市民になることを日本語では「文明化」としています。みんながその方向に向かっていくものだと理解していたのです。しかし都市のもつ自由・平等・博愛といった価値形成の過程がズタズタに引き裂かれていこうとしているのではないのか。だから反抗は外からなのです。それが外から来る時にいずれ中も変わっていく。そういった長いタイムスパンを私達は理解しなければいけないのではないかと思います。


民営化される戦争とグローバル企業(10) 広島講演より(9月24日)

2006-11-04 23:04:29 | 世界と日本の今
6、戦争が民営化する要因

自衛隊を軍隊化

 アメリカは世界で戦争していることを知っておいて下さい。イラクでだけではないのです。次はイランです。北朝鮮もちょっと危ない。そういう状況下では、東アジアでアメリカ軍は手薄なのです。手薄な時に日本に対して次はお前達行けということになる。そして結局は自衛隊が軍隊とならざるを得ないのです。自衛隊と軍隊の違いが分かるでしょうか。自衛隊だったら戦争に負けても国民は批判しないのです。あの装備だからしかたないと納得し、軍隊なら絶対勝たないといけないと考える。戦争に負ける恐怖よりも、帰って来て上官からビンタを食らう方が恐いのです。軍隊は勝たないといけない。先制攻撃が軍隊なのです。憲法改正で軍隊化していくことの意味は、アメリカの命令で日本は世界各地に展開するということです。原爆で苦しめられた広島の人こそ最も敏感に反応して頂きたいものです。広島に落とされた原爆のリトルボーイはアメリカで実験済みです。アメリカでも放射能汚染はあるのです。皆さんが怒らなければいけないのは長崎に落とされた原爆のファットマンです。ファットマンは実験せずにいきなり落とした。私はナショナリストではないのですが、東京裁判で責められるべきは原爆を落としたアメリカです。

冷戦崩壊が大きな要因

 なぜ戦争の民営化が行なわれるようになったかの理由を話したいと思います。1つ目はアメリカも含めてですが冷戦体制が終わったのが大きいのではないでしょうか。少なくとも対ソビエト、対アメリカという理由で共に膨大な軍隊を維持し両陣営が対していた。そして、その他の国々を自分の陣営に巻き込むために、軍事顧問団を派遣したり軍事同盟を結んだりすることにより力の均衡を保つという時代があった。しかしご存知のようにソビエトが自己崩壊した。その結果軍隊がいらなくなった。真っ先にソビエトはロシアになるし、各国がばらばらになり、膨大な軍隊の失業群が生まれた。その連中が部隊ごとに就職活動をせざるを得なくなり、その連中の受け皿として多国籍企業、およびソビエトとアメリカの重石が取れて国内がバラバラになってしまった第3世界の指導者達が元軍人達を雇う。こういう方向になっているのだと思います。私達は冷戦体制の終結を非常に喜んだのですけれども、結果的には紛争を世界中に撒き散らすことになったのです。要するに冷戦体制の崩壊は諸刃の剣であったということです。ちなみに私も学生時代は反スターリニズムという立場からソビエトに批判的だったのですが、皆さんがあまりソビエトの悪口を言うものだからちょっと擁護したくなりました。ソビエトはUSSRつまりソビエト社会主義共和国連邦のことです。すごいネーミングだと思いませんか。この中にはどの民族の名前もないのです。どの国の名前もない地域名もない非常に抽象的な言葉です。ソビエトというのはご存知のように労働者評議会のことです。社会主義とは定義しますと社会的な利益は社会に還元するという考え方です。一方、利益を自分のものにしていくものが私有財産的な資本主義です。一つの政治体制の理念系が描かれたネーミングなのでありましたが、たった70年間しかもたなかった。せっかく人類の歴史上はじめて特定の民族名を付けなかった政治体制ができたのに、もったいないなあと正直思います。

シビリアン・コントロールの欠如

 繰り返しますと、1つ目は少なくとも冷戦体制の崩壊がいわゆる戦争を商売とする営利団体を作り出したと言えると思います。2つ目は先ほど言いましたように、シビリアン・コントロールというものがなくなってしまった。昔はシビリアン・コントロールには、市民が軍人を支配し統制していくという意味があった。しかし、少なくとも過去ずっと平和主義者はむしろ軍人の方であったと私は逆説で説明させてもらいます。アイゼンハワー自身が言っています。実際に戦争に参加し人を殺した経験がある人間達は、少なくともいかに戦争が悲惨なものであるかをよく知っている。だから平和を望むのだ。軍隊には、軍隊の倫理があるのだと。ところが今、ラムズフェルド国防長官にしましてもチェイニー副大統領にしましても、軍人ではないものが金儲けのために軍隊を動かし平気で殺戮を命令している。実際に自分が血を流した現場を見ていないために、いくらでも残酷なことを命令することができる。このように社会的な組織のあり方が変わったのだと思います。軍人の発言力が逆に小さくなってしまったと思います。

戦争の専門主義化も原因

 3つ目の理由は戦争の専門主義化です。陸軍士官学校の話を冒頭にしましたけれども、人は殺す相手の目を見ると殺せないとほんとに教科書に書かれているのです。結局無駄な鉄砲を撃たないためにミサイルの開発をするのだという方向に進む。ミサイルは必ずコンピューターと連動します。昔のように鉄砲を与えて「軍人さん、それ行け」じゃなくて、今はコンピューターを操作しながら戦争をしなければならない。軍隊が派遣されるときには必ず民間の専門家が一緒に行かなければいけない。ハリバートンなんかはまさにそうなのです。軍隊と共に動くために元軍人や元将校達を経営者に仕立て上げ、命令系統を仕立て上げ、結局どちらが正規軍を指揮しているのか分からなくなってくる。正規軍の将軍よりも先輩が民間会社の社長である。その時に行動を常に共にするのですから、結局どこが正規軍でどこが民間人かの区別ができなくなる。そういう意味で戦争の専門主義化というか、それが民営化された戦争の土壌を作っているのだと思います。

多国籍企業が必要とする警備会社

  世界の人々がアメリカ企業の勝手な行動に対してきわめて批判的になってきた。米国に追従する企業が憎しみの対象となっている。憎しみの対象になっている中で企業が多国籍的な展開をしようとすれば、どうしても軍事的な警備が必要になる。その警備会社は最も儲かる産業になってきた。その警備会社が世界の主要な多国籍企業を主たる顧客として、営業するようになってきたのです。こうして世界的なお金の流れを、より金融的・組織的に自分の所にもってこようとする組織が生まれてくる。つまり、かつての荒くれ者を雇う傭兵ではなくて、非常に近代的な装いを凝らした科学、金融、武器そういったものすべてを駆使する専門家集団がどんどん現れてきている。これが現代の民営化された戦争の姿です。

民営化される戦争とグローバル企業(9) 広島講演より(9月24日)

2006-11-02 23:48:55 | 世界と日本の今


ビジネス対象にされる大学

 教育について言えば、日本の公立大学も法人化されました。ヨーロッパでは国立大学ではみんな授業料はただです。アメリカはそんなことは全然言わない。とにかく優秀な大学は民営化されているのだという言い方をする。そしてわが日本もやれというので我々も風前の灯です。


 私の学生時代は1年間の授業料が
7500円でした。ふすま張りの仕事でいいバイトがありましたので、むしろ親に仕送りをするようになりました。京都でのふすま張りのバイトはいいので、親にお小遣いあげようかと言っておりました。国立大学はただ同然だったのです。それに対して社会の人達は文句を言わなかったのです。


 今はそんなことしたら大変で、受益者負担と言って、大学を出たということでいい生活できるのだから当然授業料を払いなさいということで、授業料は
50万円を超えています。これも民営化されます。


 
の結果、日本の大学の授業料は、数年以内にアメリカ並みになります。つまり、いい大学ほど授業料は高く、ダメな大学ほど授業料は安いのだと。いい大学は授業料を500万円から800万円取っても人は来るであろうという形になってきまして、まあ400500万になるのはすぐそこです。私達は学生にいつも言うのです。君達は親によって大学に行かせてもらったけれども、君達は自分の子どもは大学に行かせられないぞと。


 例えば、県知事が理事長を指名する。理事長はアメリカ人で理事長が学長を指名する。学長が学部長を指名する。教授人事は教授会から奪っていき外の団体に頼む。そうなってきますと、まあ私なんか無理です。あんな日本の国の悪口を言っている奴がなんで大学の教授に留まっているのかけしからんではないかとなってしまう。結局、大学は民営化されていくのです。つまり今の日本の大学はみんな横並びで授業もそっくり変わらない。そして、外資系の大学が入ってきます。大学の規制緩和とは、校舎を持たなくてもいい、校庭も要らない、食堂も要らない、インターネットさえできればいいというものになります。今、ソフトバンクがそれをしようとしています。インターネットで各種大卒の資格がもらえるのです。


 こういった大学が次第に作られていって9月に入学式が変わります。そうするといつでもアメリカの大学に転入することができる。日本に進出しているアメリカの大学を卒業して
MBAをもらうという方向になってくる。そして、大学に行けるのはお金持ちあるいは政治家の息子とかになってしまいます。実力で入れるのは3分の1だけで後はコネクションでとなってきます。


「日米投資イニシアティブ」で圧力


「日米投資イニシアティブ」(投資促進のための日米合意文書)で、アメリカが日本にああしろこうしろと毎年言ってきているのです。「日米投資イニシアティブ」の今年の目玉は「医療」と「教育」なのです。けしからんです。日本は少子高齢化を迎える。だからこれからは医療と教育が重点になってきます。医療は分かりますね。我々おじんがたくさん増える。退職金をもらって病気になってくれると助かる、儲かる。


 教育はなぜなのだろう。少子化なのに。教育は今までは完全に「官」の社会であった。しかし、儲けてはいけない学校法人を株式会社や営利法人が儲けてもいい方向に持っていく。


 教育とは人格のことであって、人格溢れる先生に純粋な若者達がついていく。一生懸命に勉強に喜びを見出すのであって、少なくとも役に立たないことを一生懸命勉強することがものすごく大事なのです。そういった教育の原点が失われてしまう。皆が経営学修士になってしまう。文学修士なんかいなくなってしまう。源氏物語が読める日本人がいなくなってしまう。ほんとうにそうなってしまいます。そういう方向が儲か方向となってきている。「官から民へ」とは、儲けてはいけない分野で儲けてもいいというゴーサインなんだということを理解してください。


徴税業務も民間へ


 
そしてその典型例が駐車違反の取締りです。今まで「公」(おおやけ)がやっていたのです。それを民間に委託した。大変な事件だと思いませんか。そのうちに宅配便の連中が賄賂を使いますよ。そんなことされたら我々はやっていけないと言って、大手会社の警備会社に対して賄賂を渡してお目こぼしをとなる。こうなってしまうのです。


 これは徴税業務にも拡大されます。それもものすごく恐いのです。「官」だったら徴収ができないが「民」だったら徴収ノウハウがある。これはサラ金のことです。どれだけサラ金が恐いか。要するに徴収業務を民間人にまかせる。こうなってしまうと恐い恐い兄ちゃんが来ます。ものすごく恐いから徴収率が上がります。それみろ「官」より「民」のほうがすごいだろうとなってしまうのです。


規制緩和で日本を売り渡す人


 規制緩和委員会の座長を10年以上やってきた宮内義彦さん関係の会社が規制緩和の恩恵を受けた。これこそ取り巻き行政です自民党がぶっ壊れて何がオープンになったのでしょうか。一握りの経済財政諮問委員会という組織の中の人間達がいち早く情報をつかみ、そういう会社を起こしている。


 日銀総裁が村上ファンドに出資したらだめです。村上ファンドの村上世彰代表は少なくともあの
MA(企業の合併・買収)の法律作成に関与した本人なのです。こんなことをしていたら日本は堕落に次ぐ堕落です。そして日本の会社が儲かったのかと思いきや、規制緩和をしたら後ろから本家本元のアメリカがやって来た。


 
そういう意味で私達がそういう方向に向かっている現状を知ることがものすごく大事なのです。戦争中で占領されていた時代の日本ですらアメリカにここまで譲らなかった。戦争していないし占領されていない平和な日本が、この10年間で全ての分野においてアメリカに奪い取られていった。最後の聖域が医療と教育である。これも風前の灯火である。こういう状態になってきていることを理解してください。


民営化される戦争とグローバル企業(8) 広島講演より(9月24日)

2006-11-01 23:22:13 | 世界と日本の今


5、医療や大学が民営化される実態

「官」より「民」がいいのか

官から民へ」、これが流行語になっています。私も今、福井県庁に勤めていることになっているのですけれど、公務員は働かないと言われるたびに腹が立つのです。いつの間にか「官は馬鹿で民は賢い」というイメージで語られるようになってきました。しかし、そんな言葉遊びで翻弄されたらいけません。少なくとも「日米構造協議」で「官から民へ」と唱えられている「官」と「民」の区別は、儲けてはならない分野を「公」(おおやけ)つまり「官」がマネージメントする。どうぞ儲けてくださいという分野が「民」だということです。これを取り違えまして、少なくとも「官は馬鹿だからすべて民に変えていけ」という方向に問題がすりかえられている。ここが一番大きな問題だと思うのです。

大学も医療も外資が狙う

 皆さんお分かりでしょうけれども、これから日本の大学はどんどんアメリカに買収されます。そして現在の構造改革の目玉の一つは医療保険です。なぜか知りませんが、テレビでいきなり外資の医療保険のコマーシャルが大量に始まりました。日本の生命保険会社はどこにいったのだという感じです。次は教育です。うちは小学校から大学院まですべて英語で通しますとやられたら、東京大学京都大学といえどももう一瞬で崩れるでしょう。結局、東大も京大もアメリカの大学院にどれだけ合格させたかという一種の予備校になってしまうでしょう。次になるのはそれなのです。「教育はやられます」と声を大にして言いたい。

民営化で国民皆保険制度が危機

 わが日本の医療制度は国民皆保険です。何がなんでも守りましょう。お金持ちでも貧乏人でも同じ医療を受けることができるのです。そして、給料の高い人ほど健康保険が高いのです。貧乏人ほど安いのです。高く払ったからといって高級医療を受けるわけではないのです。貧乏人と同じ医療なのです。これはすごいことだと思いませんか。少なくとも日本の国民1人当たりの医療費(総医療費を人口数で割る)は31万円程度で、米国は世界1高く、60万円近い。日本は国民1人当たりの医療費が安く最も長寿の国であることを誇りに思って当然と違うのでしょうか。

 ところがいつの間にか、これはおかしい、すくなくとも高度の医療を受ける権利が国民にあるはずだ。だから国民皆保険を止めてしまえ。少なくとも保険外診療での民間保険適用を解禁しろと言う。保険外診療での民間保険適用を解禁することによって医療内容に応じての健康保険代がかかってきます。これが医療の民営化というものなのです。

外資に明け渡された保険の第3分野

 もう少し詳しく言いますと、日本は生命保険を第1分野と言います。そして、損害保険、火災保険を第2分野と言います。その境界線にある医療保険、ガンについてのガン保険、疾病保険これを第3分野と言いますAIGグループが進駐軍と共に日本にやってきた。そして一生懸命に第3分野を開拓してきた。しかし日本の日本生命や東京火災海上とかの大手に苦しめられてきた。そこで日米保険協議により「第3分野に対しては日本の大手企業は参入してはいけない。アメリカの企業か日本の中小企業が第3分野に参入しなさい」と決めたのです。これが2001年まで続くのです。もう勝負はあったのです。

 こういうことをやられると、AFLAC(アフラック:アメリカンファミリー生命保険)などは全世界に会社がありますけれど利益の70%は日本一国で稼いでいるのです。こういった分野が大きくなって、結局もっと大きくするためには、日本の国民皆保険制度をなくせと言ってくる。具体的に言いますと、これまでは、医者、医療機関は儲けてはいけない。そして健康保険を使うためには自由診療にしてはいけなかったのです。この薬の方がいいのだがなあと思い、認可されていないその薬を使った瞬間に、今までの保険治療は全部ご破算になる。全部実費を払えという事になっている。なぜ厚労省はそれをするのかというと、いたずらに医療費が高騰するのを防ぐために自由診療を認めなかったわけです。そうされると困るので、自由診療を認めろという方向にものすごい圧力がかかっているのです。

 あっという間にテレビコマーシャルでは一番大事な我々の健康を守る保険がみんな横文字の会社となっている。


民営化される戦争とグローバル企業(7) 広島講演より(9月24日)

2006-10-31 23:57:17 | 世界と日本の今

世界を支配するIC技術

 そのICというものが世界を支配すると思います。必ずこれは軍事技術に応用されます。つまり、戦争の現場にどの程度必要物資を送るか、これは「ロジスティック」と言います。日本語でいう「兵站業務」をICが果たします。そうすることでどの地域にどれだけの武器が流れて今どこに集積しているか。こういったことが把握できるようになります。

 何よりも恐いのは私達が監視されるようになることです。これからは例えば携帯電話を駅でかざすと目的地へどういうルートで進めばよいかが携帯電話に入ります。便利になったなあと思います。けれどもこれは逆に言えば、私がどこにいるかが当局に見られていることになります。あるいは皆さん、カーナビを使っていらっしゃるでしょう。あのカーナビはスイッチを切ることができないことをご存知でしょうか。切っているように見えるけれども、あれは全部発信されているのです。だから、我々がどこにいるかがカーナビでわかる。

日本産業界も武器開発へ

 まあ、考えたくないけれども、本格的に監視される世界に私達は突入しているのです。その時アメリカ方式とか日本方式とかフランス方式とか各国毎に方式が変わっていたら困ります。ペンタゴンで統一することになる。そうしますとそういう企業に群がっていくでしょう。誇り高き三菱重工といえどもそれからはずれたら巨大マーケットを失います。ですから今、必死になって三菱は食い込もうとしている。そのためには武器三原則は邪魔だ、共同開発させてほしい、イージス艦の一部を我々にも作らせてほしいと。こういう方向へどんどん持っていかざるを得ない。そういう意味でも日米軍事同盟の一体化というのは、悲しいことながら産業界の方で一体化が進んでいると思わざるを得ない。これが現代版軍産複合体だということです。

宣伝映画のすごい影響力

 その状況を分かりやすく説明しますと、まず映画で宣伝します。もう腹が立ちます。海猿」というのでしたか、海上保安庁の宣伝映画を見たのですが、かっこいいですよ。上手に作りますよ。次第にその気になっちゃうのです。それで海上保安庁の人に聞いたら、「すごく今年は受験者が増えました」と言っていました。あるいは六本木ヒルズの前に突然戦車が現れるのです。東名高速度道路を富士駐屯地から戦車が走ってくるのではないのです。それこそばらばらに部品にはずし、六本木ヒルズの前に集めて、そこでみるみる組み立てて戦車ができる。こういう宣伝をあちこちでしていくのです。

 
そうしますと私達はああいう職業がかっこよくなるのです。ゴルゴ13(超一流のプロ狙撃者が主人公の劇画)麻生外務大臣なんかゴルゴ13の愛読者だと平気で言うでしょう。そんなことをやって結局私達は暴力を使うかっこいい職業として見るのです。こういった方向に次第に私達は洗脳されていくのです。

「労働の流動化」という首切り

労働の流動化」は、いまでこそ当局にとってありがたい便利な言葉です。私は経済学をやめたいくらいこの言葉が嫌いです。つまり首切りの自由化のことなのです。それを「労働の流動化」というのです。皆さんは本気でそう思いますか。やはり一生かけて成し遂げる仕事にみんなあこがれるわけです。しかし皆さん、今では中華鍋のない中華料理店、火のないレストランとかがあるのをご存知ですか。それこそ許せないのです。どこを見ましても店長だけが社員で後はみんなパートタイマーです。

 
「労働の流動化」で何が腹が立つかと言いますと、昔の日本の経営者はどんなにつらいことがあっても従業員の首は切らなかった。戦後の大変な労働争議、革命前夜であった労働争議、その労働争議を潜り抜けてきて日本的労使一体化路線にやっと来た。その時に労働組合に対する恩義があって首は切らない、ということが長いこと続いてきたのです。

 
これをいつの間にか、日本は労働賃金の硬直化で結果的に日本人の消費が伸び悩んだとか、護送船団方式とか文句を言われています。ふざけるなと言いたくなるのです。アメリカに文句を言われる前までは、日本には21都市銀行があって一つもつぶれなかったのです。しかも5.5%の利子があったのです。それが今は、都市銀行は3行くになってしまって利子は0.1%になったのです。何が金融の自由化だ、護送船団方式に戻せと言いたい。

 皆さんお気づきですか。最近の若い男の子達は、女の子に金を払わせている。飲みに行っても女の子に払わせる。なぜかというと、女の子はかわいいからパートで使ってもらえる。男の子は就職先がない。まずないのです。仕方なく女の子のヒモになっていく。こういうように男の子に就職先がないという社会。

 
こういう社会に先ほどの軍事的なものがポッと来たらどうでしょう。ちょうど戦後すぐで我々は生きるのが精一杯の時に突然暴力団が流行ったのと同じように、今の日本でもそういった土壌ができているのだと知っておいてほしい。おそらく若者達がそちらに流れていく可能性は否定できないと思います。ますます境界線はあいまいになってきています。


民営化される戦争とグローバル企業(6) 広島講演より(9月24日)

2006-10-30 23:22:55 | 世界と日本の今

 

4、ICタグで世界支配をもくろむペンタゴン

 ICタグは儲かる

 何度も言いますが軍事というのはものすごく儲かるのです。具体的にいいますとICタグをご存知でしょうか。あの世界貿易センタービルが燃えた時に、ほんとうに勇気のある消防士達がビルに入ったのです。彼らは死を覚悟していたのです。だから自分達は後で見つかるように一生懸命ヘルメットに自分の名前を書いていた。

  それを見ていたある起業家がICタグを思いついた。1ミリ程度の小さなICつまり集積回路を皮膚に埋め込んでしまうと、人物が誰であるかが認知される。そこで開発されたのが、今流行しているICタグです。

  広島ではまだないのかもしれませんが、関西では「ICOCA」、あるいは関東では「SUICAとか、こういうものを通すだけで認知されます。ICの中にすべての情報が取り込まれていき、それが読み取り機により一瞬ですべてがそこで分かるということです。例えばスーパーで読み取るバーコードがあります。あれもアメリカが開発したのですが、商品をいちいち通さなければなりません。ICタグを全ての商品に植え付けたら、カートを押すだけですべての計算が済む。カードを渡すだけで一瞬で取引は終わるということです。あるいは入庫するときも出庫するときも瞬時で数量を把握できる。

 一番恐ろしいのは、私達が例えばヘアークリームを買って家で開けて使った。その時にそのヘアークリームのメーカーは、この製品は広島のどの地区で今開けられたということが分かる。こういうことなのです。これがICタグなのです。

ペンタゴンの命令でICタグ開発

 このICタグの開発を命令したのがペンタゴン、つまり国防総省です。ペンタゴンが使うアメリカの国防費はものすごい額です。日本の国家予算にほぼ匹敵する年間40兆円ぐらい。そしてアメリカ以外の世界の全ての国の軍事費を合計したよりもアメリカ一国の軍事費の方が上なのです。古今東西、これだけの軍事予算を費やしている国はまずないのではないかと思います。

 逆に言えばものすごくおいしい蜜がそこにあるということなのです。企業にとっては、ペンタゴンと取引することがどれだけ大きな意味を持つかは明らかでしょう。そしてペンタゴンの命令でICタグの開発をやる。ペンタゴンに出入りする業者はそれを義務付けられている。同時に民間にノウハウを蓄積させるために世界最大のスーパーマーケットであるウォルマートにICタグの開発を依頼したのです。結局ウォルマートでは、最初にテキサスのダラスで納入業者がICタグ取り付けを義務付けられた。そして今年に入ってそれが全米のウォルマートで義務付けられている。

 アメリカ方式の押しつけ

 そして、その次にそれを世界的に普及させていかなければならないということになり、今、日本でどの方式を採用するかの対立がある。経産省はアメリカ方式、つまりMIT(マサチューセッツ工科大学)方式を日本に採用させようとしている。それに対してわが日本には東大教授だった坂村健さんのICタグがあり、方式が違うのです。それをアメリカ方式にしろということになった。坂村さんが負けたのはこれで2回目なのです。 ご存知ですか。日本人は独創性がなく物真似ばかりすると我々もそう信じこまされていますが、嘘です。独創的なものを作ればすべてアメリカによって叩き潰されるのです。

 日本にはトロン方式というのがあったのです。そのトロン方式は坂村さんが開発したのです。それを松下電器が普及したのです。松下が普及して、小学校段階からこのトロン方式を学ばせようとしていたらアメリカがいちゃもんをつけてきた。カーラ・ヒルズという女性のアメリカ通商代表(USTR)が文句をつけてきて、けしからんと中止させられてしまった。生産も取りやめになった。 そして松下の不買運動が起こった。かわいそうに松下は、パソコンで先行していたのに、それを禁止されたのです。あの打撃は大きかった。それを世間の人は、「松下は松下幸之助が天皇になりすぎて技術開発をさぼったのだ」と言った。よくもかわいそうなことを言うなあと思いますが、寄ってたかって潰されたのです。そしていつの間にかあっという間にウィンドウズです。この様に独創的なことをやって、そのマーケットが奪われそうになったらアメリカに叩き潰されるのです。

  坂村さんはいい人です。坂村さんが毎日新聞に寄稿していて、それを読んで私は涙が出てきました。彼は書いています。「日本人はグローバル・スタンダードを作るのが下手だ。実はフランスで寿司を食べて美味しかったけれどその寿司屋には日本政府の認定証がない。せめて日本のコシヒカリ(実は、わが福井がコシヒカリを開発したのです。越の国の光、魚沼ではないのです)を使ったら5つ星だとか、カリフォルニア米を使えば4つ星とか認定制度を作るべきである。認定制度を作らないがために、寿司は下手したら安物のブランドという形で転落する可能性がある」と。

  坂村さんは精一杯に、「国家たるものは世界的なブランドを作るためにあるのではないのか。私は2回も開発し、トロンとICと2回とも叩き潰された。その間、国家は何をしてくれたか」との訴えを彼らしく奴隷の言葉で寿司を例にとって政府批判をやったものだから、私は一遍にファンになりました。坂村さんはすごくいい人だと思ったのです。


民営化される戦争とグローバル企業(5) 広島講演より(9月24日)

2006-10-29 18:27:09 | 世界と日本の今


3、現代版「軍産複合体」の恐ろしい構造

 ビン・ラディン一族を顧客とする父ブッシュ



私は、
911
テロは怪しいとにらんでいるのです。ペンタゴンに飛行機が突っ込んだ時にはちょっと穴が開いただけなのに、世界貿易センタービルは、飛行機がぶつかっただけで崩れるなんてことはまずありえないだろうと思っているのです。モノスゴイスピードで突入して行ったのにビルの中に機体が止まったなんて、そんな不思議なことが起こるのだろうか。普通は突き抜けて行くのと違うのだろうか。私は、「あれは陰謀だ」と勝手に捉えているのですけれども。

 その日の朝に、親父ブッシュ(ブッシュ現米大統領の父)説明下でカーライルの投資相談が行なわれていたのです。
そして、そのお客さんがビン・ラディン一族であったのです。ビン・ラディン一族はサウジアラビアの最大の事業家で大富豪です。少なくともモスク建設の
100%はビン・ラディン一族が握っています。

 我々がオサマ・ビン・ラディンと言う時に、簡単にビン・ラディンと言ってしまうのですがこれは失礼です。ビン・ラディンというのはファミリーネームのことであってオサマというのがファーストネームなのです。ほんとうはテロリストという言葉を使いたくないのですが、テロリスト「オサマ・ビン・ラディン」と言うのです。このビン・ラディン一族がそこで投資相談をブッシュ元大統領から受けていた。その時
911テロがあった。


911テロは怪しい

でも不思議なことには、あの時に即座に彼らは全部いなくなった。オサマ・ビン・ラディンが黒幕だと言われていた時、犯人の血縁者、一族郎党が集まっているのですから普通なら留め置きです。サウジアラビア人だというけれども、国籍がそうなのであって彼らのほとんどはカナダやテキサスに住んでいるのです。それがかわいそうにチャーター機でサウジアラビアのリヤドまで連れて行かれたのです。


けれども不思議なのは、飛行機テロが起こったのならば戒厳令で民間航空はすべてストップされるはずです。それなのにいち早く飛ばされて国外脱出できただけでも怪しいと思わなければいけない。事情聴取も全然していないといったことで私は陰謀説に本当に傾いています。


アイゼンハワーが警告した軍産複合体

 話があちこち飛びますが、どうしてこうなってしまったのであろうか。まず、皆さんご存知のアイゼンハワー(通称アイク)が大統領を辞めるときに、初めて「軍産複合体」(military-industrial complex)という言葉を作りました。それまでトラクターメーカーだった。そのトラクターメーカーであった会社が、アメリカが戦争に参加するようになっていつの間にか武器メーカーに変わって行った。そして多くのアメリカ人達がそういった軍需産業に雇われるようになっていった。軍需産業である限り、儲けようと思えばどこかで戦争を吹っかけてしまう。「わがアメリカは軍産複合体の儲けが大きくなるようにすることで、しなくてもいい戦争に巻き込まれる恐れがある。だからいち早くアメリカ人はそういった軍産複合体が大きくなることを阻止しなければならない。これはアメリカ市民の義務なんだ」と語り、そしてアイゼンハワー自身は原子力開発を止めるとまで言っていたのです。


 ところがベクテルの社長ジョン・マコーンがアイゼンハワーの政権にいて原子力委員長であったのです。ベクテルは世界の原子力発電の8割を設計しました。わが日本の巨大産業である三菱重工といえどもベクテルの設計図どおりに下請けしただけのことです。さらにケネディーが暗殺された時にマコーンはCIAの長官だった。私はこれも怪しいと思っています。少なくともアイゼンハワーのようなアメリカの良心がありながら、良心を持った人達は何らかの形で押さえつけられるか追放されていった、という非常に恐ろしい仕組みがアメリカの社会にビルトインされているということです。

 

(画像はすべて「ウェキペティア」から-編集者)


民営化される戦争とグローバル企業(4) 広島講演より(9月24日)

2006-10-28 18:02:01 | 世界と日本の今


3、現代版「軍産複合体」の恐ろしい構造


戦争が一番儲かる


 同じことが現在もっと大規模に行なわれているのです。悲しいことに戦争が一番儲かるのです。
少なくとも、きちんとした国家の軍隊は堕落していない。しかし、いい加減な国家というのは、いい加減という差別的用語はいけないけれども、ほんとに自国を売り物にしている。アメリカの会社に対して、ダイヤモンドの採掘権を与えるから、その代わりに我々の治安を維持するためにあなた方の民間の警備会社を貸してくれ、ということを平気でやるのです。多くのアメリカあるいはイギリスの軍事請負会社というのは、武力的に言えば貧しい途上国の国軍よりも兵器も戦闘能力も上なのです。そういう連中が戦争を請け負ってしこたま儲けていくということです。


 当然といってはおかしいですが当然の成り行きなのです。
昔のように正面線で軍隊と軍隊が衝突していくということはまずない。今の戦争は必ず暗殺である。少なくとも政治的指導者は暗殺しなければならない。暗殺していくときに暗殺の資金はどこから出るのだろうかと私は疑っているのです。いろんなところに麻薬とかいろんな覚醒剤があるけれども、果たして当局のお目こぼしなしに、ああいったものがアフガニスタンから日本へ来るだろうかと思います。アヘンの
70%はアフガニスタンから来ているのです。その間いろんな国を通って行かなければならないと考えたときに、私はかなり怪しいと思います。

 
 そういった非合法の戦争をしていく資金源は非合法な稼ぎ方をしているだろうし、非合法の人員は民間軍事会社から調達しているだろう。現在そういった形で世界的な軍事編成が変わってきているのではないだろうか。


戦争がらみの企業集団


 問題は、そこですごいワンセットの集団が出来上がっているのではなかろうかということです。
まず金融会社が巨大事業を受注してきて自分の関連会社に生産させていく。そしてその関連会社が出て行くときに、その関連会社を警備する警備会社も連れて行く。そういう意味では、すべての一番後ろにはアメリカのペンタゴン(国防総省)がいて、ペンタゴンの認可の下でワンセットの戦争がらみの企業集団が形成されている。多国籍企業は平和の顔をしておりますけれども、まず汚らしい表面に出せない裏家業的な事を平気でしなければいけない。ただ戦争するだけじゃなく、お金と物と暴力とのワンセットを備えた一群の企業集団ができている。そして、それの後押しというか連係プレイをペンタゴンが保障している。そういった軍産複合体というものがほんとにできているのだ、と私達は理解しなければいけないと思います。


典型例はカーライル


  正直なところ固有名詞を挙げるのはだんだんと恐いのです。ほんとに民営化される戦争』を書いた時に、「
1人で飲むなよ、やられるぞ」と言われました。ほんとに恐いのですが、例えばカーライルという会社があるのです。ここは主として、武器を売る宇宙産業、ミサイル産業といったところに融資、融資というよりもM&Aによる企業の吸収・合併を後押ししている会社です。軍産複合体の大元締めと考えてもいいと思います。

 その大元締めの会社で親父ブッシュの元大統領がアジア担当だったのです。中国、朝鮮半島、日本の担当だった。実は親父ブッシュは自分の子供達3人を就職がなかった頃にカーライルに面倒を見させておりました。さすがに世間の批判が厳しくなってアジア担当の役職を辞任しましたけれども。これだけでも、カーライルは非常に大きな影響力を持っただろうなと想像できます。そのカーライルが今流行のMDミサイル防衛)に関与してきているのです。


民営化される戦争とグローバル企業(3) 広島講演より(9月24日)

2006-10-27 23:31:00 | 世界と日本の今
2、戦時国家アメリカの実情 アメリカとの一体化は断固拒否

 続いて2番目の論点に入ります。アメリカが世界で戦争をしています。先に結論から言います。アメリカと日本は志を同じくするのだから日米一体化しなければならないのだ、というのは断固拒否。具体的には、わが日本は戦争をしていない。アメリカは世界で戦争をしている戦時国家なのです。戦争している国と戦争していない国とは同じだというのは、ふざけるなと言いたくなります。戦争していない国は戦争している国とは握手してはいけないのだ、我々は一切の戦争に加担しないのだ、ということが一番大事なことなのです。

アメリカは所得格差最大の貧しい国

 アメリカ兵についての問題から始めたいのですが、世界で戦争をしているアメリカと言うときに、ここにも私達が大きな誤解を持ちます。アメリカでは徴兵制をしているのだ、いやいやながら戦争に取られているのだろうと理解しがちです。そうではないのです。アメリカでは兵隊さんは自発的に応募してきているのです。これはすごいことなのです。アメリカという坩堝の中で典型的な誇り高きアメリカ人が生まれてきて、世界の平和のために我々は血を流すのだと言って、志に燃えて応募してきているのだろうか。そうではないと思うのです。ここが現在の戦争の悲惨なところです。

 世界では、先進国の中ではですけれども、アメリカは最も貧しい国なのです。この貧しさの定義はというと、すべての所得、つまりビル・ゲイツからホームレスの一番貧しい人達までの所得をずらーと並べて平均値の所得を取ります。その平均値所得以下の人達が全人口のうち何%を占めるのかというのが貧しさの指標なのです。その中でダントツに1位はアメリカです。そして、わが日本がほぼ近い2位です。

 つまり、今の所得格差が大きいということはそういうことなのです。ビル・ゲイツは全アメリカ人のサラリーマンの半分の所得をすべて独り占めしています。そのビル・ゲイツ1人がおり、他が貧しいという社会を豊かな社会というのか。それは貧しいということなのです。豊かな社会というのはみんなそこそこの平均値であること。家も小さい、みんな平均値だけれどもまあ飢え死にしなくて済むというのが豊かな社会なのです。1人の大金持ちを持ってきて、それがGDP(国内総生産)を上げても意味がない。人々の所得がそこそこに平均的で格差のない社会。これが豊かな社会なのです。アメリカが最も貧しいと言いました。最も貧しいがゆえに、アメリカではすべてがお金です。大学へ行くのもお金です。


社会的認知を得るために軍隊へ


 そうなれば誰でも大学に行けないでしょう。大学に行くには奨学金が必要でしょう。アメリカではその奨学金というときに、果たして単なる書類審査だけで通るだろうか。少なくとも地区の顔役あるいは教会の牧師の推薦がいるであろう。少なくとも社会的に認知されなければ奨学金そのものが当たらない、となります。そうしますと、貧乏人が大学へ行くために得る一番大きな社会的認知といったら何かといえばイラクに戦争に行くことである。そうすることによって市民として認知されていく。ましてやただでさえ白い目で見られているメキシカンとか、日本人、中国人、朝鮮人といったアジア人にとって。アジア人は大体、受験勉強は得意なのです。そうすると東部の大学では、あまり表門の試験ばかりでやるとアジア人ばかり通ってしまう。だからアジア人排斥で逆差別しなければいけない、という議論が真剣に交わされている。少なくとも人種的な差別というのは依然としてある。そういった中で大学へ行こうと思えば、市民として認知されなければいけない。認知してもらうための最も手っ取り早い方法が軍隊に行くことである、と考えたらいかがでしょう。

軍隊で心に深い傷

 しかし、軍隊へ行っても、自らが分裂します。認知されるために人をどんどん殺してくる。実はアメリカのちゃんとした陸軍士官学校のテキストにあるのですが、人は目が合うと殺せないのです。だから、ドンパチやっているのはみんな空へ向かって撃っているのです。それでは弾薬をいくらつぎ込んでも埒があかないというので、テレビゲームのようにミサイルを撃ち込む。相手が死ぬ場面はミサイルを撃った本人にはわからない。こういうことをどんどん技術化していくのです。しかし、少なくとも市街戦を演じたら分かる。殺戮です。自分で相手を殺すわけです。その心に非常に傷を受けた人間が国へ帰ってきて大学生になって、「今から勉強するぞー」と思っても果たしてやっていけるだろうか。要するに自分が認知されたいがために戦争に行く。しかし戦争に行ったがために自分の心はズタズタになって引き裂かれたようになる。その連中を誰が面倒を見るのだろうか。

帰国後の仕事は軍事請負企業で

 つまり、私達がいわゆる広域暴力団とかに「暴力団帰れ!帰れ!」と言いますけれども、よく見たら彼らは日本国内において差別されている連中ではないか。彼らがまっとうな就職先がなければアウトローの世界に行くのを認めるわけじゃないけれども、私は同情します。

 同じようにアメリカで戦争に行って帰ってきた若者達がきちんとした大学に行き、きちんとした企業へ就職することができるのだろうか。まあ多くの人はそうするかもわかりませんが、かなりの人達はそこに何らかの精神的な負い目、異常をきたすでしょう。そうすると逆に人殺しの技術をもったそういう人達を雇うとんでもない会社が出てくる。これが民営化された戦争の意味なのです。

 つまり、戦争に明け暮れる国で若者の心が傷つくがゆえに若者の就職斡旋機関として企業が戦争請負業をしていくのです。あっちこっちでたくさんの紛争が起こっている時に、果たして企業が丸腰で行くでしょうか。この広島市内で、この平和な社会では企業はほんとに丸腰で生産と販売をしています。これが紛争地区のコンゴで、イラクで、アフガニスタンで企業活動をしなければならない時に、果たして丸腰で行くだろうか。その時には当然警備専門家を携えて行くであろう。そして、石油を掘ったり、パイプラインを作ったりする仕事を受注する会社は、必ずそういった武器の携行を許された警備会社も連れて行くであろう。

 過去にこのような例はどこの国でもあったのです。わが日本も満州を平和裏に取ったのではないのです。武力で奪い取ったのです。武力で奪い取って関東軍がずっと目を光らせてくれるわけではないのです。民間人が入植しても、いつ中国人に襲われるかわからない。だから満州開拓団というのは小銃を携えていたのです。村ごとに大砲を置いていたのです。要するにそういう軍事的な保障の下で侵略していったのです。