消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(51)新しい金融秩序への期待(51)米国支配の終わり(1)

2009-01-10 23:54:04 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)


 いま起こっている事態は、100年に一度起こるかどうかの大変動です。

 
今回は5つの話をします。第1がリーマン・ブラザーズ。第2がAIG。第3がアメリカの住宅金融会社。第4が1929年の世界恐慌の教訓として作られたグラス・スティーガル法という銀行法です。第5が1999年のグラム・リーチ・ブライリー法(金融近代化法)です。


 リーマン・ブラザーズ


 破たんしたリーマン・ブラザーズは米国第4位の証券会社・投資銀行です。最近では例のライブドアのホリエモン(堀江社長)の事件で登場しました。ホリエモンは買収資金が欲しくて、ライブドアの年間売上高の8倍のお金をリーマンに要請した。ライブドアが発行したMSCB(行使価格修正条件付き転換社債)を、リーマンが引き受ける形で資金を出した。リーマンは、時価より10%低い値段で買い戻す権利を得ています。株が380円だったら342円で買い戻すことができるわけで、結果的にはホリエモンがボロボロになって身ぐるみはがされました。リーマンはライブドアで無茶苦茶もうけたんです。

 アメリカには、商業銀行と投資銀行の二種類の銀行があります。商業銀行は我々から預金を預かって企業などに融資する。商業銀行は財務内容などを公開するなど金融当局の強い監督を受ける。しかし、経営危機になれば救済資金が供与され、それでも銀行が破たんしてしまえば、預金者は預金を保護される。一方、投資銀行は当局の監視を受けることなく自由に活動できる。誰が会員であるか、どれだけの資金を動かしているのか、どれだけ会員に儲けさせたか、どういう運用をしているか、正確な財務内容を金融監督当局に明らかにしなくてもよい。そのかわり破たんしても当局から救済されない。

 リーマンは、投資銀行の一つで「陰の金融システム」と呼ばれています。庶民の預貯金の利息は0・1%。リーマンと組んだ投資会社のファンドの配当は年間20%です。普通の真面目な金融でそれだけもうかるはずがありません。投資銀行などはあくどい金融博打でもうけている。

 リーマンが売り出した円建て外債の「サムライ債」というのがあります。ご存知のように地方経済が壊滅的状態にあるために地方銀行は地場産業への融資に踏み切れません。そこで彼らはリーマンが売り出したサムライ債を大量に買いました。ところがリーマンが破たんして、サムライ債は紙切れになって地方銀行は大損してしまった。

 リーマンはここ数年間、優秀な金融機関として称揚されていました。格付け会社から格付けを上げられ、2005年には雑誌『ユーロマネー』から「最高の投資銀行」と誉められました。2006年には最高益で、株式取扱高においてロンドンで第1位になりました。2007年には『フォーチュン』誌に「賞賛される最高の証券会社」として誉められています。こうした数々の褒賞、空前の高収益、最優秀の投資銀行が線香花火のように消え去りました。金融賭博のいい加減さ、格付け会社の頼りなさをリーマン・ブラザーズの倒産劇は遺憾なく現しています。


 AIG


 AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)は米国最大手の保険会社です。日本にはAIGの子会社であるアリコなど生命保険3社、アメリカンホームなど損害保険3社があります。

  AIGの社長にグリーンバーグという人がいました。ヘンリー・キッシンジャーはこの人の親友で、AIGの国際顧問です。キッシンジャーとグリーンバーグはアメリカ外交問題評議会の最高顧問で、ロックフェラー委員会のメンバーでもあります。グリーンバーグはレーガン政権からCIA副長官の就任要請もされました。就任は断りしましたが、今でもアフガニスタンとかイラク問題の外交アドバイザーを務めています。私の著書『姿なき占領』に書きましたが、AIGの展開場所とアメリカが軍事展開している場所は重なっています。アメリカの軍事戦略とキチッと結びついた会社です。

 AIGも先ほど言いました「陰の金融システム」で、暗闇でゴソゴソしている金融です。サブプライムというのは、貧乏人にカネを貸したというのとは違うんです。担保能力、支払い能力の何倍ものカネを貸したという意味なんです。だから、例えば1億円の高額所得者が10億円の借金をしたら、これはサブプライムです。集めた資金の10倍もの資金を金融賭博で運用して利益を上げていた。去年のAIGの収益は1100億ドル、資産総額一兆ドル。まさに巨象です。

 この業界世界トップの企業が、突然転落したんです。サブプライムローン危機で損失が発生、株が暴落、AIGから資金が流出した。金融機関で1兆ドル損失が出れば10兆円の信用収縮が生じると言われています。資金調達が困難になったAIGは、結局、米政府・連邦準備理事会(FRB)から850億ドルの救済を受ける見返りに、事実上、米政府の管理下で再建することになった。仕方なく世界のAIGの子会社を全部売れというので、日本にあるAIGの子会社は全部売却されることになりました。アリコなど保険はどうなるでしょうか。


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オバマ次期大統領、CIA長官にパネッタ元大統領首席補佐官を起用 (あつ)
2009-01-11 01:21:08


●オバマ次期大統領、CIA長官にパネッタ元大統領首席補佐官を起用




●オバマ次期米大統領は2009年1月9日、記者会見し、次期中央情報局(CIA)長官に、レオン・パネッタ元大統領首席補佐官(70)、CIAをはじめ16の情報機関を統括する国家情報長官に、元太平洋軍司令官(海軍大将)のデニス・ブレア氏(61)を指名することを発表した。

元CIA高官でテロ対策専門家のジョン・ブレナン氏をテロ対策を統括する国土安全保障問題担当補佐官に起用した。



●パネッタ氏は民主党下院議員(カリフォルニア州選出)などを経て、1994年から97年までクリントン前大統領の首席補佐官を務めた。
最近では、ブッシュ政権にイラク政策の変更を求めたベーカー元国務長官らによる超党派の「イラク研究グループ」のメンバーとなった。

パネッタ氏は議員経験が長く、議会対策や省庁間の調整に手腕を発揮した。情報分野での経験がないため民主党内からも起用に疑問の声が上がったが、オバマ氏が擁護し、指名にこぎつけた。

パネッタ氏は過去にCIAを含む情報機関との接点がほとんどなく、米メディアは一様に「驚きの人事」と報道。

オバマ氏は会見で、情報分野での経験に乏しいパネッタ氏の起用をめぐり民主党の一部などから批判が出ている問題で、「彼は優秀な実務家だ。CIAの能力強化に向け手腕を発揮すると確信している」と強調。
「現実的な政治選択を行うには、事実に基づいた情勢分析が必要」と述べ、ブッシュ政権を間接的に批判した。


パネッタ氏の起用は、クリントン政権下で大統領首席補佐官や行政管理予算局(OMB)局長を歴任した行政手腕が買われたためだとみられている。
下院議員としての経歴も長く、議会との人脈もある。




●イラク戦争を推進したダグラス・ファイス元国防次官や、国防総省の提言機関である国防政策委員会のリチャード・パール元委員長は、パネッタ氏の起用を支持した。
CIAと対立したファイス氏は政治情報サイト・ポリティコに「CIA外部からの長官起用は、オバマ氏がCIAに重大な問題があると認識していることを示す」と語った。



一方、上院情報特別委員会の次期委員長、ダイアン・ファインスタイン上院議員(民主)は、CIA長官には「情報のプロがふさわしい」と不快感を露わにした。
政権移行チームが、長官の承認を審議する同委員会の主要議員に対する説明を怠ったことも影響しているとみられており、ファインスタイン氏自身も、パネッタ氏の起用を報道で知った、としている。


オバマ氏はパネッタ氏の経験不足を補うため、CIAでの経歴が長いスティーブン・キャパス副長官を留任させる方針だという。



●レオン・パネッタ氏 略歴

(Leon Panetta、1938年6月28日生まれ)、元アメリカ大統領首席補佐官。弁護士。

サンタクララ大法科大学院修了。
カリフォルニア州出身で、1977年から下院議員を務めた。
その後、民主党ビル・クリントン政権下の1993年に行政予算管理局局長に指名され、1994年から1997年まで大統領首席補佐官を務めた。
省庁や議会との調整能力に定評がある。70歳。

得意分野は経済とされ、これまで情報機関とのかかわりがなかったことを懸念する声もある。
一方で組織をまとめる力量には定評があり、イラク人虐待問題などで失墜したCIAの信頼回復を期待されている。




●デニス・ブレア氏 略歴
 海軍士官学校卒。
1968年海軍に入り、02年に海軍大将で退役。
空母キティホークを指揮し、太平洋艦隊司令官、太平洋軍司令官を歴任。
90年代に中央情報局(CIA)にも所属した。61歳。

国家情報長官はCIAなど16の情報機関を統括する情報部門のトップ。
ブレア氏は01年の米同時多発テロの際、太平洋軍を指揮した。
かつて太平洋艦隊司令官も務めたこともあり、アジアの安全保障問題に精通した知日派でもある。

ブレア氏は海軍に34年間勤務し、99年から2002年まで太平洋軍司令官を務めるなど、東アジア情勢に詳しい。



情報畑の経験が少ないパネッタ氏の力量を見極めたい。
ただ大統領首席補佐官時代は、大統領の横で最高レベルの情報に触れていたため、情報の料理のやり方は知っているであろう。
ちなみにパパ・ブッシュも政治家からCIA長官になっている。





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