消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

本山美彦 福井日記 50 酒と肝臓病

2006-12-06 00:51:56 | 酒(福井日記)

 肝硬変6割がアルコールの取り過ぎであるのが欧米人である。これに対して日本人は肝硬変の原因の2割しかアルコールが占めていない。日本では圧倒的にウィルス感染が肝硬変の原因で7割を占める。

 原因はともかく肝硬変の死亡率は西日本の方が東日本よりも多い。国立水俣病総合研究センター所長・滝澤行雄氏によれば、日本酒を飲む地域の方が蒸溜酒を飲む地域に比べて肝硬変になる比率が小さいという。同氏によれば、日本酒にガン細胞を死滅させる効果があるという。大腸菌・赤痢菌・サルモネラ菌などにも日本酒は抑制効果があったという。

 肝臓が
1合のアルコールを完全に分解するには3時間もかかる。

 

 酒を飲んでいると肝臓の本来の燃料である脂肪酸を燃やさず、アルコールを燃やしてしまう。燃えなかった脂肪酸が肝臓の表面にくっついて脂肪肝になるのである。

 ところが、近年、日本酒には「グルタチオン」という脂肪肝を予防する成分があることがわかった。これは、「還元型グルタチオン」という肝臓薬として市販されている。またこれは発ガン性物質と結合する性質をもっていて、発ガン性物質が細胞をガン化させる働きを抑制する効果ももつ。酵母中に含まれているので「にごり酒」、「搾りたて酒」がよい。酵母を大量に含む酒粕もよい。

 

 酒は静かに飲めばよい。ただし、告白する。酒で得た友人の数の数倍の友人を私は失ったことを。ほどほどに諸氏の達人的酒の飲み方を祈念する。


本山美彦 福井日記 49 酒と脳

2006-12-05 03:58:34 | 酒(福井日記)
 現在日本には痴呆性老人が80万人もいる。65歳以上の老人の5~6%の比率で痴呆老人が出ている。35年後には痴呆性老人は320万人になるという。恐ろしい数値である。いつまでも現役で物を書きたい。しかし、このまま酒を続けると痴呆になるのではないか。老齢者共通の怯えである。老人性の2大痴呆は「脳血管性痴呆」と「アルツハイマー型痴呆」である。前者は痴呆の半分、後者も約3分の1の比率である。この2大痴呆で83%に達する。


 血管性障害による「脳血管性痴呆」は重度の物忘れを進行させながら、運動障害を起こさないので夜間徘徊を繰り返す。家族に迷惑をかける大変な痴呆である。アルツハイマーはまだ原因が解明されていない。


 専門家によれば、記憶を司るホルモンはパソプレッシンと呼ばれている。このホルモンが過剰に分解されれば記憶障害が出るという。そして、このホルモンを分解するのはプロリルエンドペプチターゼという酵素らしい。この酵素が異常に活躍すると記憶を司るホルモンの過剰分解が起こり、記憶を消してしまう。この酵素の過剰活発化を制御できれば痴呆から逃れられる。この酵素の働きを抑え込む物質が「ペプチド」である。なんとこの「ペプチド」を日本酒が含んでいるという。


 日本酒を醸造するのに用いられる酵母にも老人性痴呆症や鬱病、不眠症に効くとされる物質「S-アデルノシルメチオニン」が含まれている。血管を若々しく維持する効能も日本酒には含まれている。


 ただし、毎晩お猪口1杯程度の酒が効能をもつだけであり、泥酔は害。分かってはいるのだけれど。


 酒に強いのは肝臓が強いからであるというのは嘘。遺伝的なものが最大の要因であるが、長年の飲酒によって脳細胞がアルコールに対して鈍感になっただけのことである。


 酒を飲んで機嫌良くなったという記憶がアルコール依存に導く。本当は二日酔いで塗炭の苦しみにもだえながら(ちなみにドイツ語で二日酔いは『猫の病』である)、人間とはいい加減なもので、少ししかなかった快感の記憶のみが定着し、苦しかったことは都合よく忘れる。いきおい、酒のボトルを見ただけで飲みたくなるのである。


 ただし、ストレスが万病の元であるという仮説からすれば酒でストレスを一時にせよ忘れることができれば体は健康を回復するのかも知れない。
 酒の強い人を上戸、弱い人を下戸と呼ぶいきさつについてはこの福井日記の初期の頃に紹介しているので、読者諸氏は捜していただきたいが、今日は、上戸用の酒の肴と下戸用の酒の肴の区別を多くの方々がご存知ないと思うので、紹介しておきたい。


 上戸はともすれば飲み過ぎる。急性アルコール中毒や肝臓障害の予防が上戸用の肴である。アセトアルデヒドを中和させると悪酔いを防げる。この作用を含硫アミノ酸がもつ。これには卵と牡蛎が最高。フルクトースという糖分もアルコールを速やかに消失させる。したがって果物とくに柿がよい。
 下戸用の肴は、胃腸の中のアルコール濃度を下げ、胃壁でのアルコールの吸収を妨げるものがいい。チーズ・フライ・天麩羅が最適である。つまり高脂肪食品である。


 この高脂肪食品を上戸が肴にすれば、逆に脂肪が肝臓に付着し、ギラギラした肝臓になってしまうので、駄目である。


 脂肪の分解を促進させてしまえば糖尿病になる。脂肪の分解を遅らせることに成功すれば糖尿病の発生を予防できる。日本酒にはこの働きがある。


 そして、体を酸性にしてしまえば人間の健康は損なわれる。酸性体質の人は血液の循環が悪いからである。軽い運動が酸性体質を変えてくれる。酒は一挙に血液循環を促進させるのである。ただし、これも何グラム・レベルの話。やはり飲まないにこしたことはない。

本山美彦 福井日記 48 酒と保険

2006-12-02 03:42:26 | 酒(福井日記)
 平成18年11月30日、金沢国税局が面白いデータを公表した。「北陸3県・酒類消費状況」がそれである。北陸3県は、全国平均に比べて高級清酒の製造比率がとてつもなく高い。国税局は、吟醸酒とか純米酒などを「特定銘柄酒」と呼び、これを高級清酒と位置づけている。この比率が北陸3県では63.7%もある。全国平均が32.5%だから、北陸では醸造された酒に占める高級酒の比率がいかに高いかが分かるであろう。

 それで納得できた。私などはとても高級酒など飲めない。というよりも毎日ビフテキを食べることなどできない。特に歳を取ってくるとビフテキよりもシャケのお茶漬けの方がはるかに美味い。福井は老人県である。コクというクセのある銘柄酒を毎日飲めるはずはない。これが福井のコンビニやスーパーでは地元酒よりも灘の酒の方が圧倒的多数、棚に並べられている理由なのだろう。私は福井に来て灘の酒の良さを初めて理解できた。灘の酒はクセがない。飽きのこない女房のような酒である。そうした比喩でいうと福井の名酒は楊貴妃であり、傾城の酒であるとの思いを強くする。平常心では飲めない。安い酒の方が長期的には飲みやすいものなのである。

 ちなみに、福井の焼酎消費量は全国最低ランクにある。第44位である。福井で2005年度に飲まれたアルコール類のうち、ビールが42%を占める。雑酒が27.8%である。雑酒というのは発泡酒などの酒を指す。清酒は11.6%、焼酎が7.2%である。  話はそれるが、県が世帯当たりの家計収入が全国一であることをご存じだろうか。全国の原発のほぼ3分の1も福井県にあるので、私は貧しいから福井県に原発が誘致されたものとばかり思っていた。しかし、それは明らかに間違いであった。福井の田畑、家屋、自家用車、どれをとっても豊かさを実感できる。男女ともに長寿県で全国第2位である。厳しい風土でこの長寿とは、生活の豊かさがもたらしたものだと思われる。家計収入の全国2位は富山県である。とすれば、豊かな県に恐ろしい原発が蝟集している理由は別のところにあることになる。

 日本生命保険協会が2005年度の死亡保険契約額ランキングを発表した。なんと、福井県は20年間連続全国第1位なのである。1世帯当たり3313万円もある。これも、とてつもなく高い数値である。全国平均は2095万円である。つまり福井は全国平均よりもじつに1000万円以上も死亡保険契約額が多い。高い家計収入と大家族の残存というのがその理由なのであろう。

 いよいよ冬の到来で、主要道路には凍結防止の水が道路の真ん中から噴き出されている。とてもじゃないが道路を歩けたものではない。そもそも福井県人には遵法速度の観念などまったくない。猛スピードで歩いている私の側を駆け抜ける。腹立たしく思うのは福井県は道路だけが立派で、歩道などほとんどないことである。自転車専用道路もないに等しい。自転車はおろか、歩くのでさえ危険である。なんと街頭もほとんどなく、私は大学から宿舎に帰る時には懐中電灯を携える。対抗から来る自動車のほとんどはライトをアップしていて、歩行者は前が見えなくなる。福井県人の交通マナーは全国で最悪であると私は断言する。道路のあちこちに「交通マナー全国一」とのステッカーがある。美しい町に「待ちを美しく」というスローガンがなく、路上駐車のない町には「違法駐車をしないでおこう」とのスローガンがないことを思い起こそう。「交通マナー日本一」のスローガンが福井では溢れているのである。

 猛スピードで走る自動車が雪解け用の道路の撒水を巻き上げ、歩いている私に容赦なく水しぶきを被せてすり抜ける。こんなことを繰り返していると、さしもの私もだんだん福井が嫌いになる。「福井県人はバスに乗れ」、「バスをもっと増やせ」、「電車を走らせろ」、「スピードのでないガタガタ道を造れ」、そもそも「老人を守れ」、と悪態をつきたくなる。自動車嫌いの私には福井の道路は地獄のような存在である。

 今日はいささか過激すぎたかな。たまりにたまった怒りが爆発してしまった。ご容赦。 道路以外は、私が福井の景観をこよなく愛していることだけは福井の方々にお伝えしたい。

本山美彦 福井日記 47 酒と心臓

2006-12-01 00:39:36 | 酒(福井日記)

 1981年英国のマーモットの調査報告によれば、酒を飲む人の方がまったく飲まない人よりも死亡率が低いという。禁酒家と大量飲酒家よりも少量(酒4勺から1.5強)飲酒家の方が長寿であった。これは「アルコールと死亡率のU字曲線」と呼ばれている。

 

 大酒飲みはガンになる確率が高く、禁酒家は心臓病になる確率が高い。後者はフレンチ・パラドックスと呼ばれている。酒は善玉コレステロールを増やし、血管に付着する悪玉コレステロールを掃除してくれる。また酒は血を固まりにくくさせる。血小板の機能を抑制するのである。したがって、突然の禁酒は生命の危険を伴う。禁酒によってそれまで抑制されていた血小板の機能が一挙に増幅するからである。禁酒後2週間は要注意である。

 

 そもそも血栓を人は悪くいいすぎる。血栓を作る凝固因子は止血効果をもつ。血管の修復が終わった後、固まった血液を溶かすのが線溶因子、このバランスが大事。歳を取るとこの溶血機能が衰える。したがって酒で血栓溶解酵素を活性化させなければならない。日本種1合飲んだ後1時間で酒を飲む前よりも1.7倍溶血酵素が活発になる。心筋梗塞や脳梗塞は月曜日の朝に起きやすい。出勤が嫌だからである。それを予防するためにも日曜日の晩には酒を飲むとよい。

 

 ただし、私はまったく素人。ものの本にそう書いてあった。一合だけなら飲まないほうがましである私は実は酒の健康への効能など認めてはいない。でも酒を上手にコントロールしている人は確かに経験的に見て大きな人物である。


本山美彦 福井日記 46 酒米

2006-11-16 02:32:22 | 酒(福井日記)
 また統計で申し訳ない。このまま酒文化は廃れるのだろうなとの寂しい思いを伝えたい。

 
清酒製造量は、平成15年度では、兵庫県が群を抜いて多い。17万3565klで全国の29%を占める。2位が京都府で14%、新潟県が3位の8%、愛知県が4位で4%、秋田県が5位で4%である。その他は41%である。

 清酒生産額の落ち込みは目を覆いたくなる惨状である。平成5年度には102万klあった生産額が平成15年度には60万klと半分近くに減ってしまった。ビールも半減している。同年度で696万klから395万klとなった。ウィスキーはもっとひどい。14万klから7万klとなった。ブランデーにいたっては半減どころか3分の1近くになった。2万6oooklから9800klしかなくなった。

 増えたのは焼酎で64万klから92万klと40%増、ワインが4万klから7万5000kl、リキュールも増えた。12万klから59万klと4倍である。そして、案の定、発泡酒がすごい増え方をした。1300klから18万3000klと爆発的に増えたのである。酒全体としては915万klから897万klに減っている。

 さて、酒の価格は正しいのだろうか。酒には大きく分けて3つある。純米酒、吟醸酒、醸造酒がそれである。純米酒には純米大吟醸造酒、純米吟醸酒、純米酒、特別純米酒の4つが区分される。

 吟醸酒は大吟醸酒と吟醸酒の2つ。醸造酒は特別本醸造酒と本醸造酒に分かれる。この区分は味によるものではなく、添加アルコールと精米の度合いといった、もっぱら原料面での区分でしかない。もっとも安い本醸造酒でも銘柄によってはもっとも高級とされる純米大吟醸酒よりもうまいこともある。

 醸造用アルコールを添加していないのが純米酒であり、添加しているのが吟醸酒と本醸造酒である。

 「大」がつくのとそうではないものとの差は単純である。精米を丹念に行い初期の酒米の大きさの50%以下にまで精米したものを「大」という。「大」がつかないものは、60から70%留まりの精米なのである。純米酒は白米1kg当たり1.8lの酒ができるが、普通の酒は3.6lという大きな差がある。

 精米した後の米を蒸す。麹菌を蒸米に振りかけ、発酵熱を水分蒸発で抑える。  その上で酒母造りが行われる。これには2つの方法が用いられ、自然に乳酸を生成させて酵母の雑菌を抑える方法を生もと(酒偏に元)造りといい極上の酒ができる。ほとんどは「速醸もと」造りで乳酸を前もって仕込む方法である。「生もと」には酒米が用いられ、「速醸もと」には一般飯用米が用いられる。最後に醪(もろみ)造りで2~3回の行程を経て清酒に仕上げる。こうした行程と職人の技で酒の味が決まるのであって、大吟醸とか純米という言葉に少なくとも酒をたしなもうとする人はだまされてはならない。

 そもそも、いつまでも放置いていても腐らない清酒などひどいものだ。昔の酒屋は酢の臭いがしていたものだ。蔵元は本当の清酒造りの原点に戻っていただきたい。

本山美彦 福井日記 44 全国の主な酒米品種

2006-11-08 08:53:07 | 酒(福井日記)

酒米の銘柄は兵庫県が圧倒的に多く、15品種ある。

 愛山、五百万石、新山田穂1号、神力、たかね錦、田島強力、杜氏の夢、早大関、兵系酒18号、兵庫北錦、兵庫夢錦、フクノハナ、山田錦、山田穂、渡船がそれである。

全国第2位は山形県で13種類ある。

 羽州誉、改良信交、亀枠、京の舞、五百万石、酒未来、龍の落とし子、出羽燦々、豊国、美山錦、山形酒86号、山酒4号、山田錦である。

第3位は新潟県で9品種ある。

 一本〆、雄町、菊水、五百万石、たかね錦、新潟酒72号、八反錦2号、北陸12号、山田錦である。

第4位、秋田県で8品種。

 秋田酒こまち、秋の精、改良信交、吟の精、華吹雪、星あかり、美郷錦、美山錦である。

第5位は広島県と栃木県で7品種。

  広島県では、雄町、こいおまち、千本錦、八反、八反錦1号、八反錦2号、山田錦。
 栃木県では、五百万石、栃木鮭14号、華吹雪、ひとごこち、美山錦、山田錦、若水。

6品種を出荷する県は、茨城県、島根県、愛媛県と3つある。

 茨城県では、五百万石、ひたち錦、美山錦、山田錦、若水、渡船。
 島根県では、改良雄町、改良八反流、神の舞、五百万石、佐香錦、山田錦。
 愛媛県では、五百万石、八反、八反錦1号、八反錦2号、美山錦、山田錦。

第10位に4つの県が並び、5品種を出荷する。

 宮城県が、蔵の華、ひより、星あかり、美山錦、山田錦。富山県が、雄山錦、五百万石、玉栄、美山錦、山田錦。
 そしてわが福井県がある。わが県では、おくほまれ、越の雫、五百万石、神力、山田錦。
 長野県が、金紋錦、しらかば錦、ひとごこち、美山錦、たかね錦。

  多くの県で山田錦が王座を占めていることは前回でも述べたが、以外なのは、東京都、鹿児島県、沖縄県で出荷ゼロであることである。焼酎に制覇されている鹿児島県沖縄県は理解できるが、東京都がゼロとはかなり意外なことである。

  意外といえば、酒所として有名な京都府が、祝、五百万石の2品種しか出荷していないことである。 それにしても、造り酒屋の多い県ほど酒米の品種も多いということがこれで分かる。


本山美彦 福井日記 43 酒米の種類

2006-11-03 01:47:27 | 酒(福井日記)

 酒米の種類はかなりあるが、山田錦以外でメジャーなものは、兵庫夢錦五百万石兵庫北錦フクノハナなどである。



 兵庫夢錦は平成5年に兵庫県が育成した早生品種で、主として兵庫県の西播磨地域で栽培されていて、兵庫県では山田錦に次ぐ栽培面積である。

 

 五百万石は福井の酒によく使われている。昭和32年に新潟県が育成した極早生品種であり、日本海沿岸で栽培されている。

 

 この五百万石を父親として昭和62年に兵庫県が育成した極早生品種が兵庫北錦である。兵庫県では田島地域と丹波地域で栽培されている。

 

 以上は全国でも栽培されているが、兵庫県だけでしか栽培されていない品種もある。フクノハナがそれである。開発は兵庫県ではなく、農林水産省東北農業試験場が昭和41年に育成した極早生品種なのに、兵庫県の旧・出石町(現代の豊岡市)だけで栽培されているという変わり種である。初めのうちは秋田県で栽培されていたが、廃れてしまい、出石町のみで栽培されている。出石町は昭和61年から石川県の蔵元と取引を行っている。

 このように、地酒ブームであるが酒米は寿司ネタと同じようにご当地のものではないことにまず注意を申し上げたい。

 兵庫県立農林水産技術総合センター


本山美彦 福井日記 42 酒米

2006-11-02 00:45:32 | 酒(福井日記)

 酒造好適米の最大の出荷県は兵庫県で、全体の27%を占める(19,400トン)。2位新潟県で15%、3位長野県で8%、4位富山県で7%、そしてわが福井県は56%と結構健闘している。

 
有名な山田錦は昭和11年に兵庫県で開発されたものであり、兵庫県下の酒米の8割強を占めている。平成18年で生誕70周年である。

 
品質のよい清酒を決定する機関は独立行政法人酒類総合研究所新酒鑑評会である。出品区分は山田錦が50%未満の第1部と、50%以上の第2部に分かれる。第1部の出品点数は98あり、うち金賞は21点数であった。これに対して第2部は出品点数921、金賞は236点数であった(いずれも平成16年度)、山田錦の圧勝であることがここで分かる。こうしたこともあって、全国でも山田錦は酒好適米の26%を占めている。

 
よく地酒が美味いと簡単に言われるが、酒米は兵庫県の山田錦なのである。

 
食用の米は「うるち米」と呼ばれる。酒米の山田錦はうるち米よりも茎と穂が長い。そのために倒れやすく栽培は難しい。粒も大きく、中央には白い部分(心白=シンパク)があり、これがうま味を作る。酒造米は契約制である。生産者と酒造業者とが高品質・安定供給を契約するのである。村米制度という。とくに灘の酒はこの制度を利用している。兵庫県三木市吉川町長谷には酒造米記念碑がある。

 
福井の酒は確かにうまい。しかし、それはコシヒカリを用いているからではない(特に高い酒は)。残念ながらこのことを確認しよう。