(8)スワップとは、二つの当事者間で、事前に合意された数式にしたがって求められたキャシュフロー(cash flow、後述)を、決められた期間において、決められた回数だけ交換する契約である。交換されるものによって、金利スワップ、通貨スワップやエクイティー・スワップなどと呼ばれる。これらは、固定であっても変動であってもよい。金利スワップのもっとも基本的なものは、プレイン・バニラ・スワップ(Plain Vanilla Swap)と呼ばれる。これは、同一通貨の固定金利と変動金利との交換である。一方の当事者(X)が契約締結時に決定しておいた想定元本に対して決められた固定金利分を他方の当事者(Y)に契約期間支払う。これと同時にYはXに対して同額の想定元本に対して変動金利分を支払う。スワップ(広義のスワップ)は、基本的に二当事者間での交換であるが、交換の回数、一方当事者に権利が付与されているかどうかによって次のように分類される。
まず広義のスワップは交換回数によって、二つに分けられる。複数回交換がおこなわれるケースと、ただ一回の交換のみのケースである。前者が狭義のスワップである。後者は契約当事者の一方における権利の有無によって、さらに二つにわけられる。双方共に権利のないケースであるフューチャーと一方が権利を保有するケースであるオプション(後述)に分類される。
通常スワップと呼ばれているのは、上記の分類のなかの狭義のスワップのことである。オプションを内蔵させたスワップも取引されている。リバース・フローターと呼ばれるスワップが一例で、キャップという金利オプションが内蔵されている。スワップとオプションを直接組み合わせたものとして、スワップを原資産としたオプションはスワップション(Swaption)と呼ばれる(
http://www.nomura.co.jp/terms/japan/su/swappu.html)。
キャッシュフローとは、文字通り「資金の流れ」を意味する。資金の流出をキャッシュ・アウトフロー、資金の流入をキャッシュ・インフローといい、両方あわせてキャッシュフローという。会計の場合には、企業活動におけるキャッシュの出入りを示し(ネットインカム+純利益)、証券分析の場合には、投資対象によって得られるすべてのキャッシュを総称する。企業の活動状況について、活動状況を会計処理して表すものを財務諸表と呼ぶが、金融商品取引法の財務諸表規則に則って作成される財務諸表において定義されるキャッシュフローとは、現金や現金同等物の増加または減少をさす。なお、一会計期間のキャッシュフローの状況を、一定の活動区分別に表示したものを「キャッシュフロー計算書」と呼ぶ(
http://www.nomura.co.jp/terms/japan/ki/cash_f.html)。
(9)オプションとは、何かをする『権利』のことである。基本型としては、コール・オプション(Call Option)とプット・オプション(Put Option)の2つのタイプがある。コール・オプションは、「ある決められた日」に(までに)「ある決められた価格」で、原資産を購入する『権利』であり、プット・オプションは、「ある決められた日」に(までに)「ある決められた価格」で、原資産を売却する『権利』である。「決められた日」を満期日(Maturity Date)、権利行使日(Exercise Date)あるいは消滅日(Expiration Date)といい、「決められた価格」を行使価格(Exercise Price、Striking Price)という。オプションの価格をオプション・プレミアム(Option Premium)という。権利行使がいつできるかによって、ヨーロピアンタイプ(European Type)とアメリカンタイプ(American Type)に分かれる。ヨーロッピアンタイプは満期日にのみ権利行使が可能なタイプであり、アメリカンタイプはオプションの存続期間中いつでも行使可能なタイプである。オプションは純粋に権利であるためこれを行使しなければならぬ義務はない。この点がフューチャーやフォワード(Forward)と異なった特徴である。オプションのプレミアムを算出する評価式は、ブラックとショールズにより裁定理論を用いて導かれた放物型の偏微分方程式の解であるブラック・ショールズ・モデルが代表的である。契約期間中の原資産価格に条件をつけたオプションも取引されている。これらは条件成就によって消滅するノック・アウト型と発生するノック・イン型に分けられる(
http://www.nomura.co.jp/terms/japan/o/opusyon.html)。
ブラック・ショールズ方程式とはデリバティブ(金融派生商品)の価格づけに現れる偏微分方程式(及びその境界値問題)のことである。 ブラック-ショールズモデルは一九七三年にフィッシャー・ブラック (Fischer Black) とマイロン・ショールズ (Myron Scholes) が共同で発表した理論であり、このモデルを使って当時の懸案であったヨーロピアン・コール(およびプット)オプションのオプション・プレミアムを計算してみせた。後にロバート・マートン(Robert Marton)が彼らの方法に厳密な証明を与えた。これらの理論は現代金融工学のさきがけとなったともいわれる。ブラック-ショールズ方程式はヨーロピアンオプションのオプション・プレミアムの計算には使用できるがアメリカンオプションには使用できない。満期日のみ行使可能なヨーロピアンオプションに比べて、アメリカンオプションは権利行使日が不確定なため、価格付けが難しく、その分アメリカンオプションのプレミアムは割高になっている。この点がアメリカンオプションの買い手にとってのメリットといえるが、良い計算方法はまだ理論化できていない(
http://ja.wikipedia.org/wiki/)。
(10)優先株(Preferred Stock, Preferred Share)優先株とは、他の種類の株式に比べて優先的取扱を受ける株式のこと。多くの場合、配当や会社清算時の残余財産を普通株に優先して受ける権利を有する一方、議決権に一定の制限が付された株式のことを言う。一般的に優先株が上場されることはなく、事業会社に対する支配規制のある金融機関などが引き受けることが多い(
http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_930.html)。
(11)スティグリッツは、FRB議長のベン・バーナンキ(Ben Shalom Bernanke)のインフレターゲット論を念頭に置いているようである。バーナンキはグリーンスパン(Alan Greenspan)後の金融政策のあり方のひとつとして、インフレターゲット政策を採用すべきだと主張し、事実、FRB議長指名を受けての上院銀行委員会の公聴会においてグリーンスパン路線の継承を約束した(〇五年一一月一五日)。その理由は、物価水準の目標値を決めて、目標値を上回れば金利上げ、下回れば金利下げというFRBの行動が金融関係者に自動的に伝わるという形で市場とのコミュニケーションを円滑にするという点にあった(FRB, Testimony of Ben S. Bernanke, Nomination hearing Before the Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs, U.S. Senate, November 15, 2005;
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/testimony/2005/20051115/default.htm)。
彼の証言を要約しておく。
<一層透明性を増すための可能なステップの一つは、FOMC(Federal Open Market Committee、連邦公開市場委員会)が長期的な価格安定性の目標に合致していると考えるインフレ率、あるいはインフレ率の範囲の数値を明示的に提示することであり、これは世界の多くの中央銀行によって現在採用されている手法です。私は学術的な文書や、理事会の委員としてのスピーチにおいて、この考え方を支持してきました。「長期的価格安定性」の意味に関して数値的指標を提示することには、金融政策に対して一般の感じる不確定性をさらに低下させ、長期的なインフレ期待をより効果的に固定できるなど、いくつかの利点が存在します。私は、長期的なインフレ目標の明示的な提示は、政策形成において判断および柔軟性がもつ役割に対する適度な強調も含めて、連銀の現在の政策アプローチと完全に一貫性をもったものであると見ています。もっとも重要なことは、このステップは政策目標としての雇用の最大化の重要性を決して損なわないということです。実際、このアクションの主要な根拠は、インフレおよびインフレ期待をさらに安定化させることにより、より強固でより安定的な雇用の成長に寄与し得る可能性があるということです。いずれにせよ、私の指名が承認された場合は、長期的な価格安定性の定義の数値化に向けた拙速なステップは取らないということを、この委員会に保証します。この事項に関しては連銀によるさらなる研究、および多大な議論と協議が必要です。このようなステップ(明示的なインフレ率の提示)を取ることにより、価格安定性および持続可能な雇用最大化の両者を達成するという二つの義務を満足させるFOMCの能力がより強化されるというコンセンサスが形成された場合にのみ、私はさらなるアクションを提案します。>