森男の活動報告綴

身辺雑記です。ご意見ご感想はmorinomorio1945(アットマーク)gmail.comまで。

番外・ごっつええ感じの銃選手権(フィクションの銃編)

2020年11月28日 | イラスト集
今回は、ごっつええ感じの銃選手権です。とはいえ、前回同様実在の銃ではありません。映画とか漫画に出てくるフィクションの銃の中で、私なりに気に入ってるものを紹介したいと思います。

●テレビ映画「コンバット!」のなんちゃってMP40

「コンバット!」に出てきた、変なMP40です。私は「落ちた偵察機」を観たとき気が付いて「なんじゃこれ?」となりました。MP40に見えるんですけど、MP40ではない。でもMP40だよなあ、、いやでも、、という実にむずむずした気分になる変な銃です。
その後、いろいろ情報を得て、どうもこれはレイジングSMGをベースにステージガンにしたものだということがわかりました。他の回にも出てるようです。そのつもりで見ると、なるほどなあ、と。レイジングマイザー、といったとこでしょうか(笑)

→1 バレルの下のこの部分は、MP40には無いものです。でもレイジングベースなら納得できます。要するに多分ここはレイジングのストックをそれっぽく削ってるんですね。

→2 ここも変なところです。折り畳みストックの肩当て部分がマガジンハウジングにすっぽりはまってます。要するにストックを展開・収納するにはマガジンをその都度外さないといけないという構造的欠陥(笑)

→3 マガジンを見ると、レイジングベースだと分かります。レイジングのマガジンは側面をかなりプレスで絞っていて、とても特徴的です。排莢口もあるのですが、ブランク作動できたのかな?

「コンバット!」は説明不要なレジェンドムービーなんですが、一応説明すると60年代にアメリカで製作されたテレビ用戦争映画です。ミリタリー方面に興味のない人でもサンダース軍曹(ビック・モロー)が主役、と言えば「ああ!」となるのでは。

テレビ映画とはいえ、サンダース軍曹以下人物描写はじめ物語も奥深く、銃撃戦などのアクションも最高、という素晴らしい番組でした。私が中学生の頃、深夜で再放送(っていうか再々再々放送くらいでしょう)されて食い入るように観てました。ビデオにも出来るだけ録画して、気に入った回は何度も何度も観ましたね。テープが限られてるので、全部の保存は無理。他の映画含め、気に入った奴を厳選して残す、という手法でした、、って、今からすると「いつの縄文時代の話だよ!」ですね(笑)いや、VHSビデオのテープって子供にはほんと高くて(1本500円くらいしたかなあ、、)大変だったんですよね、、。でも、さらにその前のビデオ黎明期のころは生テープが1本5000円とかしたそうで、全然ましだったんですけどね、、。しかし当時は映画のソフトがビデオで2万円とか、そういう時代でした。映画一本でですよ!!(例・「カリオストロの城」が19800円、、、)今ではちょっと有り得ない、、。このころ(80年代中盤)から地方にもビデオレンタル店がどんどんできて、レンタル市場が凄いものになったのもうなずけますね。

あ、またオッサンの回顧録になってる(すいません)。で、えーと、何の話でしたっけ、、、。あ、レイジングか(笑)

どうも、本物のMP40は当時でもステージガンとして潤沢にあったわけではないようで、その代役としてレイジングベースでこういうのが作られたようです。MP40に限らず、実物が手に入りにくい銃はありものを改造してそれっぽくする、というのは映画界の常識なんですね。冷戦時代はソ連の銃が手に入らないので、例えばAKベースのドラグノフ風狙撃銃が作られたりとか。まあ、要はそういうことですね。

今回のために「落ちた偵察機」を再度観たのですがシーンシーンで本物とレイジングマイザーが入れ替わり立ち代り出てきます。ちなみに発砲シーンでは本物でした。多分、撮影日によって借りれたり借りれなかったりしたのかなあ、という気がします。あと、この回はG43も出てきてきちんとブローバックしてます。他の回では、ビッカース(「3人の新入兵」)とかルイス(「ノルマンディに上陸せよ」)スプリングフィールドM1903(「老兵は死なない」)とか時々珍しい銃が出てくるのもこの番組の魅力でした。「老兵は死なない」は第一次大戦が終わった後もフランスに残った、ちょっと頭がおかしくなった元アメリカ兵の老人が、当時の軍装のままウロウロしてて、サンダース軍曹を「お前はドイツ兵だろう!」と捕まえ行動を共にするという変な回で、メチャよかったですね。

で、久しぶりに再見して分かったのは、ドイツ軍の軍装がかなりいい加減だったんだなあ、ということ。制服はともかくサスペンダーすらしてないし、ライフルの弾薬ポーチも実に適当。まあ敵役だから仕方ないんでしょうけど、、。そもそも「コンバット!」のドイツ兵って基本間抜けで、いつもいつもサンダース軍曹以下アメリカ兵にぽこぽこやられちゃうので、その当時から枢軸派だった私(笑)はいつも悔しかったですね。でもサンダース軍曹たちはとてもかっこいいので、「どっちもがんばれー!」って感じでした(笑)

でも、この「落ちた偵察機」のドイツ軍の軍曹は例外的に実に賢くて、サンダース軍曹と頭脳戦を展開し、サンダース分隊を一時は窮地に追いやります。このドイツ兵はなんかとてもキャラが立っていて、見てくれも暑苦しくて印象に残っていました。覚えてる方も多いんじゃないでしょうか。

で、今回調べてみたらなんとこのドイツ兵はジェームズ・カーンでした!「ゴッドファーザー」のソニーですよ!!びっくり!!どうも駆け出しのころだったようです。役者としてのオーラは最初から十分かもし出してた、ということなんでしょうね。

あと「コンバット!」にはときどき有名なスターがゲストで出てくるのでそれも込みで実に楽しいです。ジェームズ・コバーンが、SS将校としてスコルツェニーの部隊みたいに米軍に化けて、サンダース軍曹の分隊に潜り込んでくる回(「仮面のドイツ兵」)とかがあるんですよ。メチャ面白かったなあ、、。そして、さっき調べて更にびっくりしたのですが「老兵は死なない」の元アメリカ兵は、「ローマの休日」のひょうひょうとしたカメラマン(エディ・アルバート)でした!!やっぱ豪華だったんだなあ、、。あとこれは未見ですがテリー・サバラスが、フランスレジスタンスの狙撃兵として出る回(「もう帰ってこない」)とか。ほんと、面白いので興味のある方は観てみて下さい。個人的には、モノクロ時代のがほんと好きですねえ、、。

●香港映画「プロジェクトA」のモーゼル(?)

「プロジェクトA」に出てくるモーゼルモドキです。映画の中盤で、ギャングの1人が主役のドラゴン(ジャッキー・チェン)に突きつけて顔の前で誤発砲して、ジャッキーに「あんた銃の使い方知ってるの?」と突っ込まれる(日本語吹き替えでは(笑))シーンのアレです。

最初これを見たのは映画じゃなくて、何かの雑誌(「コロコロコミック」とかそういうの)の映画紹介のページでした。その頃は確か小学校中学年ぐらいで、いっぱしのガンマニア(笑)かつモーゼル大好きっ子(笑)だったので「何これモーゼルじゃないけどモーゼルだ!」と食いついてしまったのです。公開時は劇場に観にいけず、その後テレビで初放送されたときに食い入るように観ましたね。いや、モーゼルじゃなくて映画を(笑)

で、やっぱりモーゼルじゃなかったのでした。前述の通りきちんとビデオに撮って何度も観ましたねえ。いや、モーゼルじゃなくて映画を(笑)多分これは、外見だけのブロップガンなんでしょうね。

→1 ボルトの部分は、オリジナルモーゼルの側面形を拡大解釈して再現したように見えます。ただ、日本の電着銃と違って金属で作られているようで、とてもリアルです。

→2 アッパーレシーバーは丸くて、実に作りやすそう。多分ただの鉄棒・鉄パイプじゃないかなあ、、

→3 薬室周辺もバレルも実に太い。電着銃のように、銃身内に火薬を入れたりするようになってるのかもですね。

→4 グリップはチェッカーが入ってます。こういうとこはゲーコマなんだ、という(笑)

で、それっぽく絵にしてみると、これはこれで銃として成り立つような構成です。ボルト・ストライカー式にして、ロアレシーバーでアッパーレシーバーを包み込むようにして、その中にボルトを入れ込むようにしたらほんとに実銃にできそうな、、。絵ではさらにそれっぽい刻印を入れてみました。「南支三式」(笑)

「プロジェクトA」には、実銃ベースと思われるプロップも登場します。ルガーのランゲラウフ(8インチ砲兵モデル)やリー・エンフィールドなど。オリジナル(ないしコピー)の実銃と思われるモーゼルも出てますね。ランゲラウフは、ブローバック&排莢しています。冒頭の酒場の乱闘を静めるためにチー総監が天井に向けて撃つカットでUPにで写ってます。これは恐らく実銃ベースでしょう。映画でランゲラウフが作動するのってまあないので、これは実はかなり貴重です。でも、時計塔のシーンでギャングがジャッキーを狙うところでもランゲラウフが登場するのですが、手動で装填排莢しています。多分同じ銃と思うので不思議なんですが、予算とか準備の関係があったのかもしれません。

当時の香港映画って、脚本すらちゃんと書かれず、現場の勢いで撮っていたと何かで読みました。なので当日の小道具の準備状況とかもかなり適当だっのかもなあ、と。「プロジェクトA」というタイトルも、そもそもは他の映画撮影グループに映画の内容を悟られないため(油断したらすぐパクられるような感じだったとか)に仮に付けたものだったのが制式タイトルになっちゃった、と当時の映画雑誌で読んだ記憶もあります。なので、先のランゲラウフの件もそういう適当な理由でブローバックしたりしなかったりだったのかなあ、と。

余談ですが、当時の香港は映画撮影に実銃を使うのには厳しい規制があったそうで、それが許されるのはジャッキーら外貨を稼げる実績がある人たちだけに限られていたとか。しかしその後その規制が緩和されて、無名監督の映画でも実銃が使えるようになったとか。そして、その規制緩和を受け実銃ベースのプロップをバンバン鬼みたいに使って大成功を収めたのがジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」だったそうです。「へー!」ですね。まあでもこの辺も昔雑誌で読んだうろ覚えの知識なので、かなり間違ってる可能性もありますのでご注意&ご了承下さい(笑)

閑話休題。で、私にとって香港映画のスターといえばジャッキーでした。テレビで「酔拳」や「蛇拳」などのカンフーシリーズをずっと観てて、心酔してましたね。でも、この「プロジェクトA」はそれまでのカンフー一辺倒の路線から一歩踏み出し「香港発のアクション映画」への脱皮を目指す、ジャッキーの新しい挑戦だったんですね。

そのつもりで観ると「プロジェクトA」は野心的な作品だったことがよく分かります。例えば20世紀初頭の香港をセットや大道具小道具から何からきちんと再現しようとしています。今の目でみると「予算厳しかったんだなあ」と思う点もないことはないのですが(笑)、一生懸命な感じが画面からひしひしと伝わってきます。そういう「世界の構築」はこれまでのジャッキー映画には無かった点です。

映画の展開においてもそれは言えます。カンフーアクションは随所随所で展開されて各パートを盛り上げるのですが、それはあくまで物語を展開するための「手段」で「目的」にはなっていません。例えばリップクラブで匿われていたギャングの客人の犯罪者を、ジャッキーが倒してチー総監の前に引き出すのですが、それはジャッキーが警察を辞める伏線としての格闘なんです。ストーリーのためにアクションが展開されてるんですね。

そして、これはネタバレになるので詳細は伏せますが「これまでのカンフーアクション」との決別を証明しているのが、ラストの海賊の親分との決闘です。最終的にジャッキーが親分を倒す手段はカンフーじゃないんです。これはかなり重要じゃないかと。アレで親分を倒す、というのは実にヒドイ(笑) カンフースターの自己の全否定といってもいい(笑)しかも、ジャッキー・チェン1人じゃなくてユン・ピョウとサモ・ハン・キンポーという当時の香港の1流カンフースターが3人でああいうことをやっちゃった、というのは実に意味深で、その後の香港映画の方向性を示唆する象徴的なラストじゃなかったろうか、と。って、大げさかもですが(笑)でも、ほんとそういう気もするんですよね。

おっと、また話がずれてしまいました。なんか3流の映画評論家みたいなこと書いてますね(笑)で、まあそれはそれとして、このモーゼル、立体で作ったらそれっぽいものが出来そうですね。いつかマルシンモーゼルベースで作ってみたいですねえ、、、。ほんと案外いけるかも、、。

●日本のビデオ映画「ミカドロイド」の「ベ式」

「ミカドロイド」は1991年東宝から発売されたビデオ映画です。ストーリーを簡単に書くと、戦争中に日本軍によって開発され、地下に眠っていた人体改造のロボット型兵器が現代に蘇り、命令の記憶に従って殺戮を開始しようとするが、、。てな感じです。その兵器が「ミカドロイド」で、主力武器がこの「ベ式」という訳です。
日本の映画なので当然実銃ではなく、モデルガンベースのプロップです。

→1 ベースはハドソンのモデルガン・ステンMk2で、レシーバーやマガジンハウジング、ボルトハンドルはオリジナルのままのようです。

→2 ベースはステンですがベルグマンのようなバレルジャケットを追加しています。製作はBIG SHOT。資料(月刊Gun1992年1月号)によりますと、原口智生監督は映画「ザ・キープ」(ドイツ軍が主役の異色ホラー映画。軍装・兵器などの考証がとにかくよくて、ごく一部の界隈(笑)では有名です)に登場するMP28のイメージが強くあったので、そういう風になったとのこと。なので全体のデザインとしては一〇〇式とベルグマンを混ぜたような印象になっています。「一〇〇式短機関銃改・ベ式・テラ銃」というのが映画上の呼称のようです。

→3 一〇〇式っぽい感じがするのがここの銃床の欠きとり。ステンもベルグマンも一〇〇式よりも太く、ちょっと大きいのですが、ここの欠きとりのおかげでなんとなく一〇〇式っぽくなってますね。この辺のセンスはさすが、といいますか、、。

→4 テラ銃なので、銃床は折りたたみ式になっています。この辺は一〇〇式の挺進型と同じですね。で、今回「ミカドロイド」でググッたらウィキにミカドロイドの本来の任務内容がありました。それは「高射砲でミカドロイドをB29に向かって撃ち、機体にしがみつかせる。そのままグァムやテニアンに向かい、B29の基地を破壊する」というもの。、、、、。いやー!素晴らしい!!鼻血ブーすぎる任務であります!それにしても他力本願すぎる、、。それだけの技術があんだから、自分らで飛んでいけよ(笑)

今回、このためにもう一回観ようかと思ってたんですが、ちょっと手配できなくて残念。DVDにもなってます。先の本来の任務についても言及されてたかもですが、ほとんどの詳細は忘れちゃってますね、、。

で、それはそれとして「大戦末期に日本軍によって開発された人造人間兵器が大活躍する」というプロットは実に魅力的ですし、今なら映像技術的にかなりのことができるはずなのでリメイクしたらとてもいい映画になるんじゃないかなあ、と。実写でもアニメでもどなたか作ってくれませんかねえ、、。「ミカドロイド分隊」がサイパンのB29を全部焼いちゃう、とか、その支援にハッピータイガーが上陸してくるとか(笑)いろいろできると思うんですけどねえ、、。

●漫画「風の谷のナウシカ」のトルメキア軍の自動小銃

「風の谷のナウシカ」4巻p61の1コマに出てくるトルメキア軍の自動小銃です。漫画で描かれてるのはフレーム部だけでこれは全体の想像図。トグル&ブローフォワード式という、ガンマニアもびっくりな逸品。
→1 トグルは前方に折れ曲がってるので、明らかにブローフォワードです。しかしトグルの下に、コッキングレバーとリコイルスプリングらしいものが描かれています。どういう構造なのか、もう、わけわかめです(笑)

→2 マガジン式です。でも、この位置だと弾丸をどうやって薬室に送り込むのか、、。ううむ、、、。

→3 銃床との結合とかはもう完全に想像です。そもそも、本体は鉄なのかセラミックなのか、銃床は木なのか樹脂なのかも分からない。土鬼の空中砲台は木製なんですけど、あれだけの材料を供給できる森林がそもそもあるのか?とか、鉄鉱石を採掘して精錬する技術はあるのか?とか、ちょっと考え出すともうわけわかめな世界なんですよね実は(笑)

→4 銃身部とか含め、ちょっとおフランスの要素を入れてみました。叉銃 用のこのフック、カッコイイですよね。

ナウシカの世界は自動銃とか大砲があるので、規格を統一した工業製品が生産できる状況であることは分かるのですが、一方で自動車や戦車といった内燃機関を使う陸上の機械車両は一切出てきません。銃弾や砲弾を作るのはメチャクチャ進化した工業社会じゃないと無理なんですけど、それができるのに自動車や戦車を作れないのはおかしいんですけどね。アンバランスすぎる。ナウシカのメーヴェをはじめとする飛行機械が、過去の失われた時代の遺産の「なんかよくわかんないけど凄いエンジン」を大事に大事に使いまわしてなんとか飛ばせてるというのは理解できるんですけどね、、。

でもそれに比べると陸上の輸送手段が馬とか牛車のみというのはギャップがありすぎです。ガソリンなどの化石燃料がない、というのは分かります。じゃあ火薬はどうやって生産してるの?と。で、飛行機の燃料は多分「水」なんでしょうね。メーヴェやクシャナのコルベットはずーっと無補給で飛んでるように見えますから、そうじゃなきゃ説明できません。そういえば「燃料水タンク破損!」というセリフもありますしね。ナウシカがメーヴェに燃料らしき液体を補充するコマもありますけど(4巻P16)、普通の壺から入れてるし(笑)まあ水かなあ、と。

とかとか、ちょっと突き詰め出したら「?」「?」が連発しだす世界なんですけど、まあ、メチャクチャ素晴らしい漫画なので細かいことは別にいいですよね!(笑)

で、これがそのコマの模写です。「飛来した蟲を銃撃するトルメキア兵」というなんでもないコマなんですけど、ガンマニア的には「うわっ!!」という感じなんですね。最初見たのは確か高校生くらいだったんですけど、ほんと「うわっ!」って思いましたね。そういう人、多いんじゃないでしょうか(そうか?) 擬音が「カウッ」っていうのもいいですよね。ほんとそれっぽい。
で、宮崎氏がブローフォワードを知ってて描いたのか、テキトーに描いたのか、よく分からないんですよね。

宮崎氏は、日本を代表する映画監督というだけでなく、もの凄いミリタリーマニアとしても知られてます。「雑草ノート」はじめ兵器をテーマとした作品も多々発表しています。

飛行機や戦車、軍艦などといった「大きめの兵器」についての知識はもの凄く、かつそれら対する考察は実に深遠で、そのことは各作品を読めばすぐわかります。

しかし、銃器に関しては飛行機や戦車ほどじゃないのかなあ?というのが私の個人的な所感です。そもそも銃にはあんまり関心がないように見受けられます。「ナウシカ」はじめ「ラピュタ」など、銃の設定についてはラフ程度のものを描いて、詳しいスタッフに丸投げしているような印象です。

実際、インタビューでも飛行機や戦車についてはその都度都度実に熱く語ってるのですが、銃器についてはまあほとんど言及したことがありません。なので、そんなに思い入れがないのかなあ、と。例えばガンマニアとして知られる押井守氏は隙あらば銃の話をしています。ドラグノフが出てくる映画の紹介で、その弾を机の上か何かにばらまくカットではAKの弾だったので「心の中で突っ込んだ」みたいなこと言ってましたから(笑)

例外として「月刊Gun誌 2004年1月号」の記事があります。当時、トイガンメーカーのマルゼンがナウシカの長銃の高級モデルガン(100丁限定・35万円!!)を企画・発売しました。その製品紹介の記事です。当初、マルゼン側がアニメの美術設定を忠実に再現したモックアップを宮崎氏に見せたところ「『こんなものは銃じゃない! 本来、銃とは美しいものであり、鉄砲鍛冶が一本一本手で作るから同じものは2本とない!』と怒鳴った」そうです。この発言から、宮崎氏はかなり銃に対してこだわりがあるということが伺えます。そうじゃなきゃこういう言葉は出てこないですよね。

で、同記事によるとこの企画のそもそもの発端は、プロデューサーの鈴木氏が「ナウシカの銃って作れないんですかね」と発言したことだったそうです。そして「鈴木・宮崎氏ともどもモデルガンマニアだから、、」という関係者の発言も。鈴木氏はともかく(ウォッチしてないので(笑)よく知りません)宮崎氏がモデルガンマニアだというのは初耳でした。それ以前も以後も、そういうことを寡聞にして読んだことがありません。その発言はほんとなのかなあ、と。スタジオの写真とかでも、モデルガンが写ってたことはなかったです。モデルガンが好きなクリエイターって、まあ間違いなく近くに置きますからね(笑) 

で、宮崎氏は銃が好きなのは好きなのかもですが、少なくとも一般的なガンマニアじゃないんだろうなあ、と。例えば漫画版ナウシカ2巻の表紙裏にナウシカの装備が解説されてまして、件の長銃は「レバーアクション」と表記しています。これは、ガンマニア的には「ボルトアクション」です。「レバーアクション」は一般的には西部劇に出てくるウィンチェスターとかのアレを指します。もちろん、ボルトアクションも見た目的にレバーアクションと呼んでも差し支えないかもなのですが、ガンマニア社会的(笑)には有り得ません。この点からも、少なくとも宮崎氏は日ごろ銃器雑誌を読んだりしているわけではないことが推察できます。

宮崎氏の銃器の知識がどれほどなのか、という点については作品から類推するしかありません。「雑草ノート」で時折言及される「日本海軍のルイス式の解説」や「飛行艇時代」でチラチラ出てくるモーゼルC96やベルグマン、「泥のまみれの虎」などの一連の戦車漫画の独ソ小火器の描写(MG34やワルサーP38、PPshなど。どれも適当にそれっぽく描いてます。戦車や飛行機に比べると執拗に表現しようという感じがしない)などを見てみると「それなりの知識はあるんだろうけど、それほど詳しくないように見えるし、飛行機や戦車に比べてそんなに好きじゃないんだろうなあ」というのが私の所感です。

あ、また話がずれてしまいました(笑)でも「宮崎監督と銃」ってあんまり語られてないので、もうちょっと詰めても面白い話題だと思うんですけど、どんなもんでしょうね。でも、誰も知りたいとは思わないかもですね(笑)

●小説「武装島田倉庫」の自動装填銃

椎名誠氏のSF小説「武装島田倉庫」に登場する「半月型の弾倉を持った自動装填銃」です。小説なので、この絵はもちろん全部私が勝手に妄想して描いたものです。
この作品は、いわゆるSFディストピア小説で「ちょっと前に大きな戦争があってガタガタ・ボロボロになってしまった日本みたいなところ」を舞台にしています。登場人物がシンクロする7本の短編が合わさった連作小説で、一冊で一つの世界観を表現した、非常に優れた作品です。

「島田倉庫」は、そのガタガタな社会で物流の一端を担う私企業なのですが、貴重な物資の集積場なのでテロリストに狙われます。そのテロリスト集団「白拍子」が倉庫を襲撃する際に使うのがこの銃なんです。「北政府から渡されたらしい」とあります。この世界では南北に分断され、南北政府が対立する緊張状態にあるんですね。

さて「半月型の弾倉」というと、ショーシャしか思いつきません。でもまあ多分椎名氏はAKのような「三日月形」(要はバナナマガジン)を表現しようとして、筆が滑ったんだろうなあ、と(笑)

大人なら「そうだよねー」とバナナマガジンに思考を切り替えるところですが、これを初めて読んだ高校生のころの私は「半月型!?ショーシャ型に違いない!」と鼻息荒く妄想してしまったわけです(笑)「半」「三」一文字の違いって罪深いですねえ(笑)

→1 半月型のマガジン。ショーシャがこうなったのは、弾丸がかなりテーパーのある形状だからなんですね。リムド弾なので、さらに自動銃向きじゃないんですけど。もうこれは仕方がない(笑)

→2 レシーバーなどはショーシャをベースにあれこれ考えてみました。ショーシャは銃身が大きく後退する、ロングリコイル式という珍しい作動機構です。そのせいで撃った時の暴れ方は半端ないようです。また一般的に作動不良が多い「ダメ銃」というのが定番となってます。しかし、「Forgotten Weapons」の動画を見ると、完璧に作動していてびっくりしました。これを見る限り、ベストコンディションなら全く問題がない銃ということがよく分かります。よかったら観てみて下さい。
要するに、銃の評価って個体のバラつきとか、射手の整備調整の技量、泥砂塵などの外的要因などいろんな要素があっての結果、ということなんだなあ、ということがよく分かります。銃に限らず兵器の評価ってほんと難しいんだな、と。

→3 ショーシャ型の自動小銃だと、フォアストックが前になりすぎてかなり握りずらくなります。なので、マガジンを被うような感じでデザインしてみました。でもこれでもちょっと前すぎて保持はむずかしいかなあ、、。でもまあ、空想だしまあいいか!(笑)

●同じく小説「武装島田倉庫」の輪胴式の火薬銃

テロリストが各地の倉庫を狙っているという情報を得た島田倉庫の社員は「輪胴式の火薬銃」で武装することになります。リボルバー式の拳銃なのかなあ?と思いきや、アーム(登場人物)が「輪胴銃を背中にくくってロープを昇っていく」とあります。拳銃を背中にくくるということはありません。ということはライフル型なのかな?と思って描いたのがこれ。


→1 中折れ式ダブルアクションです。お察しの通り、ベースは二十六年式拳銃(笑)。強度がいると思うので、各所は強化してます。

→2 フルムーンクリップ式にしてみました。これで中折れ式なら、再装填もかなり早いはず。弾はボトルネックのライフル弾じゃなくて、30カービン弾くらいのイメージ。それならこの構造で耐えられるかな?と。

→3 ダブルアクションのみにするともったいない気もしますが、逆にこうするとそれっぽくなるんじゃないかなあ、と(笑)

椎名誠氏はそもそもSF小説が好きで、作家になる前からかなり読み込んでたそうです。そして自身の作品としてこれ以前も「アドバード」などかなり個性的なSF小説を発表されていました。「武装島田倉庫」はその流れにあるのですが、一冊である一つの世界をキッチリと表現した氏のマイルストーン的な作品だと思います。。装丁もその世界を想起させるようなもので、とても素敵です。装丁は平野甲賀氏で、字体から色使いからもうほんとたまらんですね。

モーゼルや十四年式がよく似合いますねえ、、。

あと、布張りなのもいいです。この手触り、たまらんです。
これ、結構コスト高くなると思うんですが「いい本にしたい」という椎名氏の気合の入りようが伺えます。何度も読んだのでボロボロで染み破れだらけですが、逆にそれが本の雰囲気を高めてるような(笑)

私は、高校生のころこの本を書店で見て、もう小遣いが残り少ないのに「これは買わねば!」と鼻息荒くレジに突撃したことを今でもよく覚えています(笑)で、読んでみるとほんと鼻血ブーな内容でした。何が凄いかというと、昭和や和風なテイストをSFに自然に織り込んでたところなんですよね。言葉も独特で、漢字を駆使したタイトル「泥濘湾連絡船(でいねいわんれんらくせん)」「肋堰夜襲作戦(あばらだむやしゅうさくせん)」や登場人物の名前「可児才蔵(かにさいぞう)」、各所に出てくる変な名前の乗り物「ザンバニ船」「フーゼル油脂系の自動車」など、実にしっくりとはまってて、頭がクラクラしました。

今でももちろん通用する凄い作品ですので、知らない方はぜひ読んでみて欲しいと思います。しかし、この作品以後、こういうジャンルのSFが発展しなかったのはほんと残念ですね。「ミカドロイド」同様、実に可能性のあるものだと思うのですが、、。でもまあ、マイナーな感じがするのは否めないので仕方ないですかね、、、。

というわけでお終いです。なんか銃よりもその登場作品とかその周辺についてあれこれ語るのが中心になってしまいました(笑) まあでも、フィクションに登場する銃っていうのは、あくまでその世界を構成する小道具であって、その小道具を語ろうとしたら、どーしてもその世界の話になっちゃいますよね(そうか?)。なんであれ、今回紹介した作品はほんとお薦めなのでよかったら観たり読んだりしてみて下さい。

それでは。
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