肝臓病と共に生きる人たちを応援します

肝臓友の会との関わりで成長した肝臓専門医のブログです。2017.2.12より新規開始しました。

JDDW2016報告 肝がんの発生は減ってきています

2016年11月05日 | 学会研究会報告新聞記事など
 
 
JDDW2016年(日本消化器病学会週間っていって消化器関連の学会が一斉に集まる学会で、消化器をしてる先生が国内で一番集まる学会です。この時期に休診になる先生が沢山いますねえ)に参加してきました。今回は、C型肝炎の治療後の肝がんの発生についてのセッションがたくさん。
基本的には発癌を抑制していることがインターフェロン、飲み薬とも言えるかと思いました。海外で飲み薬の治療で返って肝がんが出るようになったのではないかという指摘もあるのですが、JDDWではそれは言えるデータはないと感じました。

ある病院のデータでは、飲み薬とインターフェロンでは発がん抑制効果に差は出なかったと言っていました。
効果がなかった患者さんでは、年率7.9%の発癌があるが、ウイルスが消えた人での分析では、飲み薬の患者さんは年率2.8%、インターフェロン使った患者さんは2.2%でウイスルが消えた人同士の比較では有意な差はなかったそうです。数字だけ見るとインターフェロンの方が効果あるみたいに見えるのですが、統計学的には差はなってことなんですね。
これは、インターフェロンと飲み薬の時期も患者さんの背景も違うので、そういった意味でも比較は難しいんだけど。そこを揃えての検討って大変なんですよね。

武蔵野赤十字では、できるだけ患者さんの背景を揃えて報告していて、そこからは、飲み薬だけの治療をした患者さんは、すでに発癌のリスクの高い方が多く含まれていたと言うことでした。ちなみにインターフェロンでSVRになった患者さんは567例 のみ薬でSVRになった患者さんは658例とすでにインターフェロンの効果あった人を抜いているってことで、これまたびっくりでした。治療をする患者さんの数の増え方は本当に早いです。

また別の病院では、ウイルスが消えたあと、肝がんができやすくなる因子って言う分析では、治った後四年以上たった人で肝がんが出やすくなる人に糖尿病がある方は要注意って発表もありました。これは、肝臓が良くなると食べ過ぎて糖尿病になるなんて人もいまはでてきているので、食事をきちんと見直して、肝臓にいい食習慣を身につけることが重要だとも言えます。

東大の発表では、ウイルスが消えて肝臓の病気以外で亡くなる患者さんが2割になってきていると本当にそう言う時代になってきましたね。ウイルス治療の効果なのか、東大では、肝がんの患者数が4割弱の減少になっているそうです。ちなみに緑愛では6割強の減少になっています。北海道での助成制度のおかげか少量長期のインターフェロンの頑張りの成果なのかなあと思います。数が少ないので比較検討はできないけど。減っているのは確実なんですよね。

また、最近は、肝臓病があることで、骨や筋肉などの低下が起こるサルコペニアという病態が注目されています。元気で長生きするためにも骨や筋肉を維持することが重要。食事運動の大切さがまた見直されてきています。そういう意味でも骨や血管のチェックしていく重要性が増していると言えますね。

写真は学会での朝勉強会でのお弁当と福岡へ移動中に手に入れたふぐの骨せんべいとミックスジュース美味しかったです。

元気で長生き医療講演 in 福岡 大成功!!

2016年11月05日 | 医療講演やイベント
 
元気で長生き医療講演 in 福岡 大成功!!

今回は、歌の集いを初めに30分してから、講演に入りました。いつもは逆だったのだけど。歌が好きじゃない人もいるしなあとちょっと逆にしてみました。
原始人食も毎年少しずつバージョンアップして、私が継続で来ていることもみんなに見てもらって感動してもらえました。
12人が参加、交流会も7名の方が参加してくれました。夜遅い時間ですが、都合つけて参加していただきありがとうございました。
B型肝炎原告さん、B型・C型全国センターからも参加してくれていました。

交流会では、みんなの体験談を話しながら、普段は話せない経験や悩みを語り合っていました。その中で窪山さんの語りをお伝えしたいと思います。

窪山さんとの再開、年に一回福岡でお会いできるのを楽しみにしてくれています。
会うたびに,また1年、生きてきたんだなあと実感するから、先生と会えるのがとても楽しみなんですといってくれます。
体験談
B型肝炎訴訟の九州原告さん、実名原告さんとして、全国訴訟での九州原告さんの一人としてマスコミにたくさんでて自分の思いを語ってくれたかたです。奥さん共々明るいので、ぱっとみ何も苦労してないと思われたり、深刻さがないなんて、笑顔を見ていると思っちゃうかも知れませんが、とても大変だったことは間違いありません。実際収入は2年間なく貯筋を食いつぶして何とかしのいだと奥さんのおかげですねと周りは頷いていましたし、奥さんは、本人がやりたいって言うんだから頑張ってもらいたかったと。語っていました。

裁判を起こすときには当時の条件ではとてもあてはまらない、証拠が少なくて、勝てる可能性は低いとまで言われていました。弁護士さんにもそう言われて、それでも、迷いは無かったと言います。何も悪いことはしていない、国が私に謝るのが筋だろうそんな思いがある一方で、同じように辛い思いをしている仲間たちを助けていきたかった、そう語っていました。
自分が救われたいその思いがなければ裁判に参加しないし人のためだけには頑張れなかったと思う、自分の為があったからみんなのためにも行動できたと。
そして、マスコミの取材では、標準語ではなく博多弁で思いを語って欲しいといわれ、博多弁だと喧嘩してるような口調になるから東京とかの人にはびっくりだったかも知れないが、自分の思いを綺麗な言葉では伝えきれなかった、自分の思いをひたすらに訴え続け、汚い言葉だったかも知れないが、綺麗なことなんて言っている余裕はなかったと振り返っていました。
実際、窪山さんは、当時予後3年と言われていました。肝がんの外科的手術を毎年、肝がんが3個くらい再発してたそうです。私が聞いてもよく今生きているなと思わずにいられません。

そして、感動したできごとは、実際に全国を期日がある度に回っていて、札幌で和解勧告がでる頃、裁判官が国に対して、国は原告さんに生きているうちに手渡ししてお詫びするその体制をしっかりととるようにと話したのが今でも忘れられないと話していました。

奥さんも、旦那さんと乗り越えてきた経験があることから、肝がんの末期と言われた奥さんから相談を受けたことがあるといっていました。そのとき、仕事を辞めて夫の看病に専念した方がいいだろうかと相談されたそうです。でも、仕事はちゃんと続けて看病は看病できちんと切り替えてしないと、どっぷり看病をしてしまうとうつになってしまうからとアドバイスしたそうです。そしてやりたいことはした方がいいって、そうこうしているうちに孫ができて、じじっと呼ぶ声を聞いて過ごすことができたそうです。あと3ヶ月と言われてから3年も元気だったそう。人の思いが寿命を延ばしたと、本当に嬉しく思いましたと。本当に実際に経験した本人達にしかわからないこと、実際にそうだと思いました。

私も沢山の患者さんや家族と話をしてきましたが、したいことをしていくこと、そう思い続けることは生きる力を生み出していると感じます。
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○元気で長生き 歌の集い&医療講演会 in 福岡 12名参加 交流会7名
日時 2016年11月4日(金) 午後5時半から7時
場所 TKPガーデンシティ博多 新幹線口 5-A
  〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央街5-14
         福さ屋本社ビル5F
プログラム
第1部 歌の集い 午後5時半から6時
シンガーソングライターあきの歌とともに
患者さんとのかかわりで生まれた曲、歌ってきた曲
           聞いて一緒に歌ってみませんか?
第2部 医療講演 午後6時から7時
元気で長生きのコツ伝授します?
B型・C型ウイルス性肝炎は副作用少なく飲み薬治る時代
第3部 交流会 午後7時から9時くらいまで 別会場で
体を作る食事の大切さ、ボケ防止、がんの予防のヒントになれば。
肝臓専門医が自分の体験とともに語ります。
原始人食ダイエットや野菜スープなどすぐ役立つ話が盛りだくさんです。
無料療養相談 無料DVD有り 過去の講演会のDVD(希望者先着順)
アーシング無料体験コーナー有り
講演会終了後別会場で交流会予定 要申し込み
問い合わせ(参加無料申し込み不要です) 肝がん検診団(留守番電話)011-350-1008
共催 インターネットで結ぶ肝臓患者と支援者の会 肝がん検診団
後援 全国B型肝炎訴訟九州原告団
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福岡は太宰府に行ってきました

2016年11月05日 | 花、植物、風景
 
 
 
  
福岡では太宰府に行ってきました。天気もよくて気持ちよかったです。修学旅行の学生さんが沢山居て、お参りも長蛇の列、混んでる時間帯に来たことなかったので、おおおおおって、感動していました。境内にあった樹も立派でした。梅ヶ枝餅も二個食べちゃった。おいしかった、熱々が美味しいんだなあ。かさの家が美味しいって聞いてたけど混んでたので、漢字の笠の家の方で買って食べました。

肝がんに対する北大での陽子線治療の話 2016年10月28日の肝臓について語る会から

2016年11月01日 | 学会研究会報告新聞記事など
肝がんに対する陽子線治療の話 2016年10月28日の肝臓について語る会から
 
北海道大学放射線科治療部門の加藤先生に開業医向けに話をしていただきました。
陽子線治療が画期的治療と認知されるようになってもう10年以上が経つのですが保険適応へと目指して研究が続いています。その臨床適応が実現するようにと試験を継続している先生たちの話しでした。
陽子線治療というのは、物質をつくっている原子の中の部品の一つである陽子という部分を光速の70%まで加速して主要部分に照射するというもの。放射線治療の一つなのですが、主要の部分にエネルギーを集めることができる(ブラッグピークっていう性質)ので、普通の放射線治療が治療部位の前後にも影響が出るのが、主要部分のみに集まりやすいということで、副作用もすくなく、効果的に治療ができるという利点があります。
 
そして、北大ではこの陽子線の施設の小型化に成功し、さらに性能は世界一って、素直に信じる私です。今まで35mで220トンあったおおきさが27m125トンって、半分近くの重量ってすごいことです。さすが、日本人本領発揮。
さらにすごいのは、小さくなっただけでなく、1回に治療できる範囲もいままで15cm範囲だったのが30から40cm範囲と複数回に分けなくてはいけなかった腫瘍に対しても1回で治療ができると。
 
さらにさらにすごいのは、スポットスキャンニングっていって、小さい点を集めて腫瘍の形に添った治療ができる、絵も綺麗に描けるような正確な照射ができるんです。講演では北大のロゴマークを書いていてその線の濃淡も再現できていました。びっくりでした。
そして、褒めすぎかも知れませんがさらに凄いのが、呼吸などの動きがある腫瘍でも金のマーカーを入れてぴったりその場所に来たときに陽子線をあてることができるという動体追跡機能(これは1990年に北大で開発された技術)がばっちりついているのです。
これだけのことができる機械は世界では北大だけなんですよーって。北大出身者の私としては褒めたくて仕方なくなるという代物。
是非多くの患者さんを救って欲しいです。

ただ、陽子線治療は、保険適応が大人にはないため、300万前後の自己負担が生じます。生命保険で先進医療の特約がついているとそちらで払えるので、今はそういった人達が主な患者さんとなっています。少しでも早く保険での治療ができるよう先生方頑張っています。
この治療は、治しきることができるので抗がん剤などの長期投与が必要なくなります。そうすると医療費の削減に直結するすごいことがいっぱいあるので、施設にお金はかかりますが、国にとっても患者さんにとってもいいことだらけなはずと私は思っています。

肝がんについては、3個以内を適応としているとのことですが、治療技術が進んで多くの患者さんが受けれるようになれば、今まで外科切除やラジオ波焼灼術をしていた方でも簡単に外来で治療ができるなんてことが起こりえます。
制御率は9割弱と外科や内科治療に充分置き換わる成績です。

そして、門脈腫瘍栓(肝がんが門脈に入ってしまうと余命が半年とかになる)が起こったような普通であれば手の施しようのない肝がんについても治しきる可能性をもっています。
多施設での臨床試験も始まって、症例数が蓄積される保険適応が実現するよう、臨床の先生方に呼びかけながらすすめています。

会場からは、肝がんで治療の話を聞いていたがお金が高いとあきらめた患者さんが1年後に亡くなっていて、でも、この治療をしていれば今も生きていたのかと思うと、お金の問題ではなかったんだなと質問されていた先生がいたのが印象的でした。

いい治療が早く実現しますように、患者さんも私たちも外来で肝がんの患者さんが治っていくのを心待ちにしています。

ホームページはこちら
http://www.huhp.hokudai.ac.jp/proton/about/