以下毎日新聞の記事から、Webにも公開されています。早く多くの患者さんが救われるようすすんでくれたらいいですね。
クローズアップ2012:基本合意1年 B型肝炎、進まぬ救済 和解1割未満、厚労省の審査態勢不十分
毎日新聞 2012年07月01日 東京朝刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20120701ddm003040151000c.html
集団予防接種の注射器使い回しを放置した国の責任が問われたB型肝炎訴訟は、国が感染被害者を一律に救
済することで和解基本合意が成立(11年6月28日)してから1年が過ぎた。救済可能とみられる10万人弱のうち、個別和解を目指す提訴者はまだ5184人。和解が成立したのはその1割にも満たず、17年1月の提訴期限に向け、全員救済への道のりは遠い。被害者たちは、厚生労働省の審査態勢が不十分な上、審査に求められる資料のハードルが高いことに原因があると訴えている。【佐藤心哉、伊藤直孝】
「現状では早期救済を求めて合意した原告の気持ちがくまれていない。国には迅速な対応を求める」。基本合意1年に合わせ、札幌市で先月27日に記者会見した北海道原告団の清本太一副代表(35)は厳しい表情で語った。この日は全国で新たに675人が提訴した。だが、この1年で和解が成立したのは470人で、大半は基本合意前に提訴した被害者だ。
基本合意は、国が肝がん、肝硬変など症状に応じて3600万~50万円の給付金を支払う内容。被害者それぞれが提訴すると、国が予防接種で感染したかどうかを審査して、確認されれば裁判所で個別和解が成立、補償を受けられる仕組みになっている。
国は当初、書類審査は1カ月程度でできるとの見通しを示し、全国弁護団は患者の書類準備期間を含めても
提訴後2カ月程度で和解が成立するとみていた。ところが、書類提出後、厚労省から和解成立の可否や追加資料が必要かどうかの回答があるまで、大半は半年程度かかるという。
例えば、慢性肝炎患者で北海道原告団の小川ルリ子さん(52)の代理人弁護士に、厚労省から「和解期日は11月11日」と連絡があったのは直前の昨年10月27日夕。しかも、追加書類として、集団予防接種を受けたという母親の記憶を書いた陳述書▽慢性肝炎発症の医師説明を受けたと証明する診断書--など4通を5日後までにファクスするよう求められた。
かかりつけの病院では通常、書類を出してもらうのに1週間程度かかる。だが、この期日を逃すと、和解は更に2カ月後になる。翌日、急いで病院窓口に主治医宛ての手紙を渡して書類の準備を依頼し、弁護士事務所からファクスしたのは午後5時半過ぎ。小川さんは「国の嫌がらせにも思える」と憤る。
厚労省は、結核感染症課の10人程度だった当初の審査担当を今年3月までに14人に増員。更に4月から課内にB型肝炎訴訟対策室を新設し、31人の専従態勢に拡充した。これで月100人程度だった審査のスピードが約300人にアップ。厚労省訴訟対策室の担当者は「審査態勢は十分整えたと考えている」と話す。
札幌地裁の石橋俊一裁判長は基本合意直前の和解協議で「原告が生きているうちに和解成立を」と述べたが、このペースでは、提訴した患者の審査を全て終えるだけで1年以上かかる。全国弁護団代表の佐藤哲之弁護士は「今後の提訴を見越せば、今の3倍から4倍の態勢が必要ではないか」と指摘する。
◇厳しい条件、カベに 提訴者以外、どう援助
救済のスピード化や広がりを阻んでいるもう一つの理由は、提訴自体の難しさにもあると被害者たちは主張している。国との基本合意に基づく和解は、裁判所を通した司法救済。予防接種を受けたことを証明する確実な証拠が求められるため、提訴に二の足を踏むことも少なくないという。
国は提出資料として、病院のカルテ▽母子健康手帳▽市町村の予防接種台帳--などを例示。それがなければ接種痕を認める医師の意見書などが必要としている。
しかし、患者が7歳未満の幼少期に受けた予防接種が対象となっているだけに、いずれも処分、または廃棄されていることが多い。また、母親からの2次感染被害者でない場合、予防接種による直接感染を証明するため、母親が感染者でなかった証明が求められる。だが、患者の多くは50~60歳代。母親が亡くなり、兄や姉もいなければ証明困難なのが実情だ。
一方、全国弁護団によると、患者側にも「母子手帳がないと提訴できない」「発症後20年たつと権利が消滅し、提訴できない」などの誤解が多い。弁護団は患者向けの説明会を各地で開いたり、電話相談に応じたりしており、希望者には提訴に向けた資料や書類を送っている。だが今年2月に607件だった資料送付件数は月ごとに減り、5月は237件。これまで送った計2万362件のうち、提訴に必要な書類が返送されたのは3割の7263件にとどまる。
国は昨年、和解のための財源を見込むにあたり、全国の救済対象を最大約45万人と試算し、原告側との基本合意に今後の恒久対策のための協議や真相究明と再発防止のための検討会の設置を盛り込んだ。弁護団メンバーや原告2人も加わった検討会は今年5月31日に初会合を開催。注射器使い回しが続いた原因などを調査し、年度内に提言をまとめることが決まっている。
患者の救済に取り組む札幌緑愛病院肝臓センター所長の川西輝明医師(46)は「圧倒的多数の提訴できない人をいかに救済するか。検診無料化の他、誰もが最新の治療を迅速に受けられる環境整備をすべきだ」と話す。
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◆各地裁の提訴者数
(6月27日現在、カッコは和解者数)
札幌 908 (91)
仙台 127 (2)
東京 981 (66)
新潟 179 (23)
金沢 112 (17)
長野 51 (6)
静岡 139 (11)
名古屋 301 (4)
大阪 1018 (92)
鳥取 92 (13)
松江 57 (14)
広島 488 (48)
福岡 639 (76)
熊本 42 (1)
鹿児島 38 (6)
那覇 12 (0)
計 5184(470)
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◇B型肝炎訴訟の主な相談先
【弁護団】
北海道 011・231・1941
東北 022・796・0152
東京 03・3355・0611
03・3352・7333
新潟 025・223・1130
名古屋 052・961・0788
大阪 06・6647・0300
福岡 092・883・3345
※その他の地域・府県は各地の弁護士会などへ問い合わせを
【厚生労働省】
専用窓口 03・3595・2252
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