実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

判例は形式的表示説?(3)

2016-06-22 11:34:19 | 民事訴訟法
 しかし、本当にそうだろうか。実務をしている私の目からは、昭和48年の判例は全く別の理解をしているように映って見える。

 つまり、昭和48年判例の事案は、実は訴え提起当初から被告は新会社なのである。私にはそう見える。なぜなら、訴え提起時の「N」という商号の会社は新会社しか存在しないし、「N」という会社の代表権を証明する、法務局が発行する資格証明書も、新会社のそれを発行しているはずだからである。
 もちろん、原告の意図としては、旧会社を訴えたつもりだったかもしれないのだが、図らずも新会社を訴えていたことになる。しかも、現に明け渡しを求めている物件を占有しているのが新会社であったとすれば、実は新会社を被告とすることで事足りている、というより、新会社こそを被告とする必要のある事案だったのである。

 これを、当事者確定の問題として理論的に説明するならば、単純に昭和48年判例は形式的表示説を前提にしていたということである。あるいは仮に実質的表示説を前提としても、訴状では現に占有している者に対して明け渡しを求めていて、その現に占有している新会社を被告としていた、ということにはならないだろうか。

コメントを投稿