
ブログを見たら、金魚をクリックしてね。
「あ、このお話もしなくっちゃ・・・」と、ミモロが今日、お話したいのは、10月29日に行った「御香宮神社」の『狂言発表会』のこと。
伏見桃山の「御香宮神社」は、以前、すでにミモロは、訪れたことがあります。その時は、お祭りの真っ最中。境内には、たくさんの屋台が並び、大勢の人々で賑わっていました。「水占い」も体験しました。

今回は、『狂言』が境内で演じられるというので、「見たことないから、行ってみよう…」と出かけたミモロです。
「ところで『狂言』ってどういうもの?なんかむずかしそう…わかるかなぁー」と、かなり心配も…。
『狂言』とは、簡単に言えば、室町時代のコメディー。お笑い…です。平安時代に、寺社仏閣で、庶民を相手に演じられたものまね芸などの「猿楽」の流れを引くため、今も神社やお寺で演じられる機会が多くあります。
「能」と「狂言」の関係は、2つとも同じ「猿楽」の流れから生まれ、分化したとか、また全く別々にできて、後に一緒になったなど、諸説ありますが、ともかく話の内容からみると、対照的で、「狂言」がお笑い系なのに対して、「能」はシリアスです。ミモロが行ったのは「狂言発表会」なので、「狂言」のみ演じられますが、本来は、同じ舞台で、交互に演じられます。
『狂言』に登場するのは、ほとんどが2~3人の少人数。演目により、もちろんストーリー構成は異なりますが、例えば、太郎冠者や次郎冠者など、言うなれば平のサラリーマンが主人公で、上司にあたる主人の目を盗んで、自分がやりたいことをして、失敗、それをいかに怒られないようにかわすかと、知恵を出す…などのストーリーも、よく見られるもの。

登場人物の軽妙な会話のやり取りの面白さ。現代にも通じる笑いがそこに。ただ、現代のお笑いと違うのは、動作などに型があり、芝居には、一定の決まりごとがあります。その中で、いかに演じるか、演じる人の力量が問われます。
ミモロ、大丈夫…きっと面白いわよ。
さて祭りの時は、歩くのも大変なほど、人で賑わった「御香神社」の参道も、今は、ひっそり。静寂が神社に戻っています。

境内の拝殿のそばには、背景になる鏡板に、枝を伸ばした老松の絵が描かれた立派な能舞台があります。
能や狂言を演じる舞台は、歌舞伎と違って、舞台装置が場面や演目で、変わることはありません。ずーといつも同じです。能楽堂など、大きな建物の中にある能舞台にも、必ず屋根があります。それは、もともと能や狂言が屋外で演じられるものの名残り。そして、楽屋と舞台の間の屋根のある廊下は、「橋掛かり」と呼ばれ、これも能舞台には、欠かせないものです。
神社の能舞台の前には、狂言を楽しもうと見物人が集まってました。ミモロも席に座って、舞台を見つめます。

この発表会は、日ごろ、狂言を学ぶ方々が演じるもの。京都では、秋、市内の能楽堂で、能、仕舞、狂言などの発表会がいろいろな場所で行われます。
「やっぱり京都は、能や狂言を習う人が多いんだねぇ」と感心するミモロ。演ずる人は、子供からご年配の方まで、年齢層も幅広く、また見物人も、ふらりと立ち寄り、気軽に楽しんでいる様子。能や狂言が、京都では、身近な文化のひとつであることを感じさせます。

今回の演目は、『萩大名』をはじめ、『空腕』『鐘の音』

「あれ、舞台で演じている人って、『古筆』の柳本先生?」ミモロの視線の先には、『栗焼』で太郎冠者に扮した先生の姿が。

「書のお教室とは、全然違う雰囲気。そうだ、先生は、元狂言師だったんだぁー。わーカッコイイ!」と、思わず目が釘付けに。柳本勝海先生は、元プロの狂言師。現在は、狂言に興味を持つ人たちへ、講義や指導などをなさっています。今回は、自らもご出演。
舞台には、小学生の女の子も登場。見事に『居杭』という演目を演じます。


いくつかの演目を鑑賞したミモロは、「あのー、狂言を見るの初めてなので、楽屋の様子がどんなか知りたくてー」と恐る恐る楽屋口へ。特別にお許しをいただいて、中に入ることに。楽屋では、次の出番の人への、装束の着付けの真っ最中。

「へぇーこれが狂言の装束なんだぁー」と裃を初めて近くで見たミモロ。

「あれ、何してるんですか?それ袴?ずいぶん足の長い人の袴…」。

それは主人を演じる人が着る長袴。別に足の長さは関係ありません。長い裾を、二人がかりでたたんでいます。
「あら、小さなクマちゃん。見物に来たの?」と、出演する女の子に尋ねられたミモロ。

『昆布売」という演目に出演する女の子です。小さいころから、狂言を習っているそう。

能に比べ、ストーリーがわかりやすい狂言。思わず笑ってしまう、コミカルな動きも。
「なんか面白かったねぇー。歌舞伎より舞台が小さいから、よく見えるし、屋外で、気軽な感じ…。素人の発表会といっても、衣装は本格的!スゴイ!」とミモロ。
能衣装に比べ、狂言の装束は、きらびやかさは少ないものの、染めや織の衣装は、色合わせや大胆な柄使いが実に見事。
「ああいう装束を作っている職人さんが、今も京都にはいるから、こういう伝統芸能が続いているんだよねー」。初めて見た「狂言」、そしてその装束に興味を抱いたミモロです。
『狂言発表会』の鑑賞の後、「御香宮神社」の本殿に参拝。

「あれ、御香水が流れるところに柄杓がある…」。

7月から取水を禁止していた御香水が、10月から濾過装置の設置で、水質が改善。汲むことができるようになりました。

「よかったねぇー」

境内には、秋らしく菊の展示が美しく。

「京都の秋は、いろいろ見るものが多くて…アー忙しい…」。そういうと、トコトコとミモロは境内を後にしました。
秋の陽は、つるべ落とし。駅に向かうミモロの顔は、夕陽に照らされて、オレンジ色に染まっていました。
*旅のポイント、京都では、秋、能、謡、狂言などの発表会が、京都御苑西側の「金剛能楽堂」や岡崎、京都近代美術館そばの「京都観世会館」などで、よく行われます。素人の発表会は、入場無料で、気軽に鑑賞できるものが、ほとんど。観光の途中でも、ちょっと立ち寄ることも可能です。ぜひ、一度、伝統文化に触れてみてはいかがでしょう。