みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0263「もうひとつの世界1」

2018-07-18 19:08:10 | ブログ短編

 典子(のりこ)は自転車に乗って坂道(さかみち)を下(くだ)っていた。今日は彼とデートの日。都会(とかい)と違(ちが)って遊ぶ場所は少ないが、それなりに楽しむことはできる。彼女の胸(むね)はわくわくしていた。頬(ほお)をなでる風が心地(ここち)よく、道は右にカーブする。その時だ。突然(とつぜん)目の前が真っ白になった。
 どれくらいたったろう。典子が目を覚(さ)ますと、道路(どうろ)の上に倒(たお)れていた。何が起(お)こったのか全く分からない。彼女はゆっくり起き上がる。倒れた時に擦(す)りむいたのだろう、膝(ひざ)から血(ち)がにじんでいた。彼女は痛(いた)みをこらえて自転車に乗り、また走り出した。
 何かが違うと感じたのは、走り出して間もなくだった。いつも通る道なのに、いつもと違う。車が一台も通らないし、誰(だれ)とも出会わないのだ。こんなこと今まで一度もなかった。
 彼との待ち合わせの場所に着く。彼の姿(すがた)はそこにはなかった。驚(おどろ)いたことに、駅前(えきまえ)の通りなのに人影(ひとかげ)は全くない。この町の人はどこへ行ってしまったのか。彼女は不安(ふあん)になった。腕時計(うでどけい)を見る。でも、壊(こわ)れてしまったのか、秒針(びょうしん)が止まったままだ。
 典子は近くの店に駆(か)け込んだ。店の中には、やっぱり誰もいない。彼女は携帯(けいたい)で家に電話をしてみた。が、発信音すらしなかった。店の電話を使ってみても同じだった。彼女は、店にあった小さなテレビのスイッチを入れた。しかし、何も映らない。彼女は、片っ端(ぱし)から電気(でんき)のスイッチを入れてみる。彼女は愕然(がくぜん)とした。電気がきていないのだ。
 典子はハッとして店を飛び出すと、自転車に乗って自宅(じたく)へ急いだ。
<つぶやき>突然、別の世界へ迷(まよ)い込んでしまう。あなたの身にも起こるかもしれません。
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