彼女はイラついていた。もう五時間だ。彼女が部屋(へや)の片付(かたづ)けを始めてから。最初は、順調(じゅんちょう)にいっていたはずだった。なのに、気がつけば部屋の中は足の踏(ふ)み場もない状態(じょうたい)に陥(おちい)っている。彼女は呟(つぶや)いた。
「こんなはずじゃなかったのに。何でこうなるのよ。私はちゃんとやってるじゃない。――悪(わる)いのは私じゃない。そうよ、絶対(ぜったい)、私じゃないわ。ここにいる、こいつらよ。こいつらが悪いのよ。こいつらさえいなかったら」
彼女の視線(しせん)の先には、なぜか男たちがたむろしていた。彼らは、彼女を見て愛想笑(あいそわら)いをする。彼女はますますイライラをつのらせた。
「どうして私の周(まわ)りには、いらないものばかり集まって来るのよ」
彼女は男たちを睨(にら)みつけて言った。「出てってよ。あなたたちは、もう私には必要(ひつよう)ないの。不要品(ふようひん)の粗大(そだい)ごみなの。いい加減(かげん)、気づきなさいよ」
男たちはヘラヘラと笑(わら)いながら、彼女にまとわりついてくる。彼女は手足をバタつかせ、男たちを振(ふ)り払っていく。彼女は必死(ひっし)だった。ここで後戻(あともど)りしたら、もう二度と這(は)い上がれない。もしそうなれば、彼女に未来(みらい)はない。彼女はうわごとのように呟いた。
「絶対、負(ま)けないわよ。明日は、初めて彼が来るの。こんなとこ、見せられないでしょ」
彼女はごちゃごちゃの山の中で、いつしか眠(ねむ)りについていた。
<つぶやき>果(は)たして、部屋は片付いたのでしょうか? かなり心配(しんぱい)なところがあります。
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