「あっ、まただ」淳子(じゅんこ)は着信(ちゃくしん)したばかりのメールを見て呟(つぶや)いた。
「どうしたの?」一緒(いっしょ)にお茶をしていた菜月(なつき)が、ケーキを頬張(ほおばり)りながら聞いてきた。
「私のストーカー」淳子は平気(へいき)な顔でそう言うと、「毎日ね、メールしてくるのよ」
「ストーカーって…。なにそれ?」菜月は心配(しんぱい)して、「大丈夫(だいじょうぶ)なの?」
「私の故郷(ふるさと)にいる元彼(もとかれ)なの。もう、しつこくて」
「元彼? それだったら、着信拒否(きょひ)とかすればいいじゃない。そうすれば…」
「えっ、そんなことしたら、もう届(とど)かなくなるじゃない」
「なに言ってるの。迷惑(めいわく)してるんでしょ?」
「だって、今まで来てたのが来なくなったら、なんか淋(さび)しいじゃん」
「あんた、ときどき分かんないこと言うよね。そもそも、何で元彼と別れたの?」
「えっとね、こっちでやりたい仕事(しごと)があったし、都会(とかい)に来たかったの」
「それで、その元彼は許(ゆる)してくれなかったんだ」
「ううん。黙(だま)って来ちゃった」
淳子は婚約指輪(こんやくゆびわ)を見せて、「結婚の約束(やくそく)までしたんだけどね」
「えっ! あんたね、指輪を返して、ちゃんと別れてから出てきなさいよ」
「私、彼のとこ嫌(きら)いじゃないし。向こうに戻ったら、結婚するかもしれないじゃん」
<つぶやき>こんな自由奔放(じゆうほんぽう)な彼女と付き合うのは、とっても大変じゃないかと思います。
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