「ねえ、あたしのプリン知らない?」亜矢(あや)は寝ぼけ顔の俊彦(としひこ)に訊(き)いた。
「知らないよ」俊彦は頭をかきながら答えた。「きっとあれだ、サリーが食べたんだろ」
「あのね、猫(ねこ)が冷蔵庫(れいぞうこ)を開けられるわけないでしょ。昨夜(ゆうべ)はあったんだから。あなたしかいないじゃない。うちにいたのは」
「さあ、昨夜は飲みすぎたからなぁ。あっ、そうだ。そう言えば、いたよ。冷蔵庫の中に」
「なに言ってるの?」
「ほら、あいつ…。何てったけ…。冷蔵庫の神様(かみさま)!」
「もう、ふざけたこと言わないでよ。食べたなら食べたって、言えばいいじゃない。いつもいつも、そうやって…」
「いるんだよ、本当(ほんとう)に。ほら、トイレの神様だっているんだから」
亜矢はゴミ箱の中から見つけたプリンのカップを取り出して言った。
「これが、証拠(しょうこ)よ。あたし楽しみにしてたんだから。あなたが同じもの買って来るまで、絶対(ぜったい)に部屋(へや)には入れないから。そのつもりで」
「えっ、そんな…」
その時、ソファの上でサリーがひと声鳴(な)いて、冷蔵庫の中からはカタンと音がした。
<つぶやき>さて、犯人(はんにん)は誰(だれ)なんでしょう。私も、ないしょのつまみ食いは大好きです。
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