彼女は寝(ね)る間(ま)も惜(お)しんで研究(けんきゅう)に没頭(ぼっとう)していた。必死(ひっし)になって、老化(ろうか)を止める方法(ほうほう)を探しているのだ。だが、何年たってもその成果(せいか)は上がらなかった。
彼女がなぜこんな研究にのめり込んでしまったのか。それは、学生の頃(ころ)にさかのぼる。その頃付き合っていた彼から別れを告(つ)げられたのだ。それも一方的(いっぽうてき)に――。他に好(す)きな娘(こ)ができたから別れてくれと。まさかそんなことになるなんて、彼女は思ってもいなかった。
後で聞いた話しだが、その彼と付き合い始めたのは、さほど奇麗(きれい)でもない普通(ふつう)の娘(こ)だった。何でこんな娘(こ)に負(ま)けてしまったのか。この憤(いきどお)りが、彼女を歪(ゆが)めてしまったようだ。
――毎日の不摂生(ふせっせい)が彼女を蝕(むしば)み始めていた。肉体的(にくたいてき)にも精神的(せいしんてき)にもボロボロになっている。そんな時、久しぶりに学生の頃の親友(しんゆう)に出会った。親友は彼女を見つめて言った。
「どうしちゃったの? どこか具合(ぐあい)でも悪(わる)いんじゃないの」
彼女は見る影(かげ)もなくやつれていたのだ。そう思われても不思議(ふしぎ)じゃない。
彼女は親友を見て、目を見開(みひら)いた。学生の頃のようにつやつやの肌(はだ)をしている。それに、前は野暮(やぼ)ったい感じだったのに、今は美しくなっている。彼女は思わず訊(き)いた。
「何で? あなた、何をしたの? どうしてこんなに綺麗になってるのよ」
親友はちょっと驚(おどろ)いたが、「ああ、そうかな? 別に、何もしてないんだけど…」
「嘘(うそ)よ。何かしてるはずだわ。でなきゃ、こんなに…。教(おし)えて…。教えなさいよ!」
<つぶやき>今からでも間に合うわよ。生活習慣(せいかつしゅうかん)を変えましょ。そして、恋(こい)をするのよ。
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