みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1229「恋始め」

2022-04-09 17:53:25 | ブログ短編

 わたしは恋(こい)をした。それは、突然(とつぜん)やって来た。もう何年も恋なんかしたことなかったのに。わたしは戸惑(とまど)った。こんなわたしが、あの人に恋をしていいのだろうか? だってあの人は、みんなから慕(した)われていて、わたしなんかが――。
 同僚(どうりょう)の女子社員(じょししゃいん)たちが、あの人のこと噂(うわさ)していた。
「あの人、誰(だれ)とも付き合ってないみたいよ」
「じゃあ…。あたし、告白(こくはく)してみようかなぁ」
「あなたじゃムリよ。だって、受付(うけつけ)のマドンナが告白しても相手(あいて)にしなかったのよ」
「分かった。あの人、美人(びじん)は好(この)みじゃないのよ。ほどほどのあたしだったら――」
 わたしは、そんな会話(かいわ)に加(くわ)わることなく仕事(しごと)に戻(もど)った。途中(とちゅう)であの人が立っていた。なぜ、こんなところに? わたしは軽(かる)く会釈(えしゃく)して通り過(す)ぎる。あの人は、わたしを呼(よ)び止めた。わたしは驚(おどろ)いて振(ふ)り返る。あの人と目が合った。わたしは、思わず見とれてしまった。
 あの人が何か言っているのだが、わたしの耳(みみ)に入るはずもなく――。あの人が、わたしの名前(なまえ)を呼んで、やっとわたしは我(われ)に返った。
 あの人は、「――いいかなぁ? 帰りに外で待(ま)ってるから」
 あの人は行ってしまった。いま、なんて? 何て言ったの!? わたしはあたふたしてしまって、あの人を追(お)いかけることもできなかった。
<つぶやき>これは期待(きたい)してもいいのでしょうか? それとも、何か別(べつ)の用件(ようけん)だったのか。
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