みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1429「箱」

2023-11-06 17:49:50 | ブログ短編

 街(まち)の真ん中に大きな箱(はこ)が置(お)かれていた。誰(だれ)が何の目的(もくてき)でここに置いたのか? 箱には何も書かれていないし、誰か人が立っているわけでもない。街をゆく人たちは不思議(ふしぎ)そうにそれを眺(なが)めながら通り過(す)ぎていた。
 その箱には、ちょうど覗(のぞ)きやすい場所(ばしょ)に小さな穴(あな)が開(あ)いていた。それに気づいた人たちが箱に近づき始めた。立ち止まったり、友だちと話しをしたり、写真(しゃしん)を撮(と)る人まで現れた。その中で、どうしても好奇心(こうきしん)を抑(おさ)えられない人がいた。その人は周(まわ)りをキョロキョロしてから、その穴の中をちらっと覗いた。そして、何やらニヤリとして行ってしまった。
 その様子(ようす)を遠巻(とおま)きに見ていた人たちが、まるで吸(す)い寄(よ)せられるように箱に近づいた。そして、次々(つぎつぎ)と箱の中を覗き始める。そして、みんな一様(いちよう)にニヤニヤしながら行ってしまう。とうとう穴を覗こうという人たちが行列(ぎょうれつ)をつくるようになった。
 誰が頼(たの)んだのか、警備員(けいびいん)が行列の整理(せいり)を始めた。どんどん箱の周りに人だかりができた。でも、どういうわけか、箱を覗いた人たちは中に何があったのか誰も話さなかった。ただニヤニヤするだけで…。これはもう、覗いてみたくなるのは人情(にんじょう)だ。まさに、人間(にんげん)の習性(しゅうせい)なのかもしれない。
 人間とは好奇心の塊(かたまり)だ。と、聞いたことがある。それをまざまざと観察(かんさつ)できる場(ば)になった。この騒(さわ)ぎは、いったいいつまで続くのだろうか?
<つぶやき>あなたも覗いてみたくなったでしょ? いったい、中には何があるのかな?
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