みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1307「生まれ変わり」

2022-09-15 17:49:10 | ブログ短編

 祖父(そふ)の臨終(りんじゅう)に立ち合うことになった孫娘(まごむすめ)。病院(びょういん)のベッドで祖父が目を覚ますと、
「おじいちゃん。もうすぐみんな…、父さんも母さんも、隆(たかし)も来るからね。しっかりして」
 祖父は孫娘の顔を見ると、かすれた声で息(いき)も絶(た)え絶(だ)えにささやいた。
「ああ…、好子(よしこ)さん。今度は…わしが…君(きみ)を見つける番(ばん)だな…。待っててくれ、すぐに…」
 好子とは、祖母(そぼ)の名前(なまえ)だ。以前(いぜん)、父親から<若い頃(ころ)のばあちゃんにそっくりになってきたな>と、言われたことがある。きっと祖母と間違(まちが)えてるんだわ。と、孫娘は思った。
 祖父は家族(かぞく)の到着(とうちゃく)を待っていたかのように、みんなに看取(みと)られて息を引き取った。
 ――それから一年後。孫娘の前に素敵(すてき)な男性が現れた。彼女が恋(こい)に落ちるのに、それほど時間はかからなかった。彼女から、会ってほしい人がいると聞かされたとき、両親(りょうしん)の驚(おどろ)きは大変(たいへん)なものだった。今まで男っ気(け)がなかったので、両親はほっと胸(むね)をなで下ろした。
 二人はほどなく結婚(けっこん)した。両親はまだ早いと反対(はんたい)したが、彼女の決意(けつい)は変わらなかった。彼女の実家(じっか)からそれほど遠くないアパートで、二人は暮(く)らすことになった。
 ある朝のこと…。彼女が目を覚ますと、隣(となり)で寝ている彼の寝言(ねごと)が聞こえた。
「よしこ…さん。やっと…あえたね……」
 彼女は思わず飛(と)び起きた。それで、彼の方も目を覚ました。彼女は疑(うたが)いの目で言った。「よしこって、誰(だれ)なの? 誰と会ってるのよ」
 彼は、彼女が何を言ってるのか分からず、きょとんとしているだけだった。
<つぶやき>寝言ですから。彼に責任(せきにん)は…。それにしても、彼が祖父の生まれ変わりなの?
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