流行(はやり)に乗り遅(おく)れまいと佳代(かよ)はスマートフォンを購入(こうにゅう)した。これで友達(ともだち)からバカにされることは無(な)くなるだろう。佳代は早速(さつそく)電源(でんげん)を入れて使ってみることに。CMでやってるように、スマちゃんに話しかけてみた。
「あたしのこと、好(す)き?」
速攻(そつこう)返事(へんじ)が返ってくる。「好きって言ってほしいのか? うざい」
佳代は一瞬(いつしゆん)言葉(ことば)を無(な)くした。まさかこんな返事(へんじ)が返ってくるなんて。気をとり直(なお)して、もう一度話しかけてみる。「今の天気(てんき)は?」
しばらく間(ま)をおいてスマちゃんが答(こた)えた。「そんなの、空(そら)を見りゃ分かるでしょ」
佳代は呟(つぶや)いた。「何なのよ。何でちゃんと答えてくれないの。もう、使えないヤツ」
次の瞬間(しゅんかん)、スマートフォンがけたたましく鳴(な)り出した。そして、早口(はやくち)でしゃべり出す。
「あのさ、使えないのはアンタでしょ。何よ、しょうもない質問(しつもん)ばっかして。好きな男がいないもんだから、あたしに好きって言わせようなんて。一人でいるのがそんなに淋(さび)しいのか。ハハハハ、いい年した女が笑(わら)っちゃうわよ。これからは、気やすく話しかけないで。いい、今度しょうもない質問したら――」
「もう、どうして…。どうやって止めるのよ。こら、黙(だま)りなさい。うるさいってば――」
佳代は必死(ひっし)になってあちこち押(お)してみた。やっと声が止まると、佳代は荒(あら)い息(いき)をつきながら、「これ、絶対(ぜったい)不良品(ふりょうひん)だわ。何で、こんなのにバカにされなきゃいけないのよ!」
<つぶやき>スマートフォンにスマちゃんと名前をつける。これは淋しい女の始まりかも。
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