みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0053「わがままな天使」

2017-07-20 19:52:33 | ブログ短編

「ねえ、エンジェルのケーキが食べたい。買ってきて」
「今から? 無理(むり)だよ。だって、もう店は閉まってるし」
「どうしても食べたいの。私の言うこと何でもきくって言ったじゃない」
「そりゃ言ったけど…」
「買ってきてくれたら、私、手術(しゅじゅつ)してもいいんだけどなぁ」
「分かったよ。じゃあ、俺(おれ)が作ってやる。たしかケーキの本あったし…」
 くるみは武志(たけし)が本を探し始めると、悪戯(いたずら)っぽい目をして、胸(むね)を押(お)さえて苦(くる)しみだした。それを見た武志は駆(か)け寄ってきて、「くるみ! しっかりしろ。いま、救急車(きゅうきゅうしゃ)よんで…」
くるみは電話をしに行こうとする武志の腕(うで)をつかんで、「その前に、ケーキ買ってきて」
「くるみ…」武志はくるみの肩(かた)をつかんで、「ばか! 心配(しんぱい)させるなよ」
 くるみは武志の真剣(しんけん)な顔(かお)に驚(おどろ)いた。でも素直(すなお)に謝(あやま)れなくて、つい憎(にく)まれ口をたたいて、
「そんな顔しないでよ。どうせ、すぐ死ぬんだから」
「そんなこと言うなよ。先生だって、手術をすれば助(たす)かる可能性(かのうせい)だって…」
「ほんの少しだけね。今まで生きてこれたのは奇跡(きせき)なの。奇跡なんて、そう続(つづ)かないわ」
「くるみ、あきらめるなよ」
「もう、いい。私のことなんか、ほっといてよ」くるみはそう言うと、自分の部屋に駆け込んだ。武志はやるせない思いを押し殺(ころ)して、「今、ケーキ作ってやるから、待ってろよ」
<つぶやき>どうしようもない苦しみと悲しみを、どう乗り越えたらいいのでしょうか。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする