徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:海堂尊著、『玉村警部補の巡礼』(宝島社文庫)

2022年01月13日 | 書評ー小説:作者カ行

『玉村警部補の災難』の続編である本作品は四国遍路事件ロードマップのような作品です。
前作で警察庁の「デジタル・ハウンドドッグ」の異名を持つ加納警視正が玉村警部補になにかと「遍路送りにするぞ」と脅していたので、それに対抗すべく玉村警部補が「知れば怖くない」と遍路を発心し、有給休暇を利用して四国へ旅立つことに始まります。
その遍路の旅に加納警視正がなぜか仕事にかこつけて毎回同行し、行く先々で大小の事件を解決していきます。
ちょうど遍路開創1200年の記念の年(2014)で、加納の遍路の目的がこの特別記念スタンプを集めるラリーに成り代わってしまうのはご愛敬です。

目次
阿波 発心のアリバイ
土佐 修行のハーフ・ムーン
伊予 菩提のドラキュラ
讃岐 涅槃のアクアリウム
高野 結願は遠く果てしなく

全編を通して加納警視正が追っている事件は前作「エナメルの証言」でとり逃してしまった「人生ロンダリング」の犯人。「人生ロンダリング」とは指名手配中の犯罪者が適当な死体を見繕い、ネクロ・デンティスト(死体歯科医)に歯型や治療痕を自分そっくりに作り変えてもらい、その死体を水死体として発見されるようにすることで自分が死んだと見せかけて新たな人生を歩めるようにすることです。
加納警視正は、この人生ロンダリング・システムがまた四国で始動したため、今度こそ全システムを一網打尽にするつもりで玉村警部補の遍路を隠れ蓑(?)にたびたび四国に出張するわけです。
阿波編から伊予編まではこの連続事件は伏線として言及されている程度で、讃岐編でようやく本筋となります。

作者自身も作中の玉村警部補のように途切れ途切れの遍路をしていたそうなので、実体験を作中に反映させているみたいですね。

出だしの弘法大師に関する蘊蓄が長すぎて先を読む気を失くしそうになったのがこの作品の難点でしょうか(笑)
南無大師遍照金剛



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