『ナニワ・モンスター』を買って読んだのは2015年のことだったのですが、この度海堂氏の最新刊の文庫でこの『ナニワ・モンスター』の続編である『スカラムーシュ・ムーン』を買って読み出したら、どうも話が見えない部分があって、前作の内容をすっかり忘れていることに気づいたので読み直した次第です。読み直してみて、『イノセントゲリラの祝祭』でお馴染の彦根新吾が登場するということ以外は本当に内容をすっかり忘れていたことが明確になりました(笑)うっすらと憶えていたのは検疫官のさえないおじさんの下で働くモヒカン頭のお兄ちゃんだけでした(笑)
第一部の「キャメル」では新型インフルエンザであるキャメルがアジアで蔓延しているという話に始まって、致死率が0.002%と低いにもかかわらずメディアで大騒ぎしていることに違和感を覚えた老医師・菊間徳衛が名誉院長を務める浪速診療所で初のキャメル感染者が出てしまいます。患者は小学生で渡航経験なしということで、感染を確定する検査は渡航者のみに限るという厚生省の発した事務通達の壁に真っ先にぶち当たってしまいます。渡航経験のない国内感染者が出た時点ですでに水際防疫作戦は無意味になっているにもかかわらず、それは大々的に続けられ、メディアではキャメルの専門家として浪速大公衆衛生学講座の講師(後に准教授)の本田苗子がやたらとキャメルの危険性を喧伝し、政府は浪速の経済封鎖を決定します。
第二部「カマイタチ」で話はキャメルが猛威(?)をふるう1年半前に飛び、特捜部のエース鎌形雅史ことカマイタチが浪速特捜部に異動になり、浪速特捜部の暗部にメスを入れ、また浪速府知事村雨の意向で厚生労働省老健局局長を拘束し、霞が関・中央合同庁舎第5号館にガサ入れをするという大胆な行動に出ます。その裏にはかのスカラムーシュ(大ぼら吹き)彦根が居ました。この時点ではまだ彦根の真意は明かされません。しかし本田苗子がどこの回し者なのかが明らかになります。
第三部「ドラゴン」で彦根は村雨を連れ回して、医療立国と地方分権・浪速共和国独立の道筋をつけるために解剖率100%という舎人町町長、道州制を推進しようとする東北の巨人・青葉県知事、財政再建団体に指定された北海道の極北市市長に引き合わせ、「日本三分の計」をぶち上げます。この対談の後に村雨は浪速経済封鎖に対する反撃に出て、事態は(ひっそりと)収束します。
終章「両雄並び立たず」では村雨の知事としての政治的葛藤と決断が描かれています。海堂サーガの中で重要な位置を占める「Aiセンター設置」に関する医療側と司法側の攻防がここでも事件の裏側で繰り広げられます。
こうして粗筋を書いてみて、なぜ本書の内容が記憶に残らなかったのか分かるような気がします。多分に理屈っぽくて、政治的過ぎ、ストーリとしてのまとまりや面白さが今一つなんだと思います。