徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ:3州同時選挙。右翼政党「ドイツのための選択肢」大躍進

2016年03月14日 | 社会

昨日(3月13日)ドイツのバーデン・ヴュルッテンベルク州、ラインラント・プファルツ州、ザクセン・アンハルト州の3州で同時に州議会選挙がありました。メルケル独首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は3州全てで得票率が減少しました。州議会選挙にもかかわらず、争点はどこも難民問題でした。本来州政治とは関係がないのですけど、今ドイツ国民の一番の関心事なので仕方がありません。そしてまさしくこのワン・イシューで多くの票を集め、3州全てで初の州議会入りを果たしたのが右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」でした。ザクセン・アンハルト州(旧東独で伝統的にネオナチが多い)では、24.2%の得票率で、州議会の第2勢力となりました。しかし、ドイツ国民が急に右傾化したと見るのは早計です。なぜなら、AfDに投票した動機として、同党の政治プログラムに共感したということを挙げた人は2割以下にとどまり、7割以上が単なる反発、「ほかの政党に考えて欲しい」ということを動機に挙げているからです。特に旧東独であるザクセン・アンハルト州ではローカル事情無視のEU政策やグローバル化の弊害の被害を多く被り、失業率は高いままのため、単純な民族主義・排他主義ではなく、既成政党に「難民政策やギリシャ救済ばかりに莫大な税金を投入するのはおかしい。もっと自分たちのことを考えて」と訴えてると見るべきでしょう。

ちなみに、AfDに投票した人の4割以上が前回の選挙で投票しなかった人で占められました。ドイツには時々そういう不満票の受け皿となる政党が現れて大躍進することがありますが、長く持った例はありません。大抵は具体的な政策を練る段階で分裂が起きたり、無能さを露呈したりするからです。AfDも恐らく例外ではないでしょう。

以下に各州の選挙結果をZDFから引用してご紹介します。

バーデン・ヴュルッテンベルク州

投票率は70.4%(2011年:66.3%)

キリスト教民主同盟(CDU) 27% (-12)
緑の党(Grüne) 30% (+6.1)
社会民主党(SDP) 12.7% (-10.4)
自由民主党(FDP) 8.3% (+3)
左翼政党(Linke) 2.9% (+0.1)
ドイツのための選択肢(AfD) 15.1% (+15.1)

政党別得票率:

政党別得票率の変化:

政党別得票率の推移:

政党別獲得議席数(トータル143議席):

可能な連立政権は、CDU+緑の党(89議席)、緑の党+SPD+FDP(78議席)、CDU+SPD+FDP(72議席)。

 

「最も重要な問題はなにか?」という質問に難民問題がトップに挙げられています:

難民問題 69%
学校・教育 27%
交通 11%
環境・エネルギー転換 7%

15.1%の得票率を達成したAfDですが、その内実は必ずしも政党支持によるものではないようです。

AfDに投票したのはなぜ?:

党の政治プログラムに賛同したから 18%
他政党に考えるきっかけを与えたかったから 75% 

AfDに投票した人の中で前回の選挙で投票しなかった人は41%にも上ります。 

 

ラインラント・プファルツ州

投票率は70.4%(2011年:61.8%)

社会民主党(SDP) 36.2% (+0.5)
キリスト教民主同盟(CDU) 31.8% (-3.4)
緑の党(Grüne) 5.3% (-10.1)
自由民主党(FDP) 6.2% (+2)
左翼政党(Linke) 2.8% (-0.2)
ドイツのための選択肢(AfD) 12.6% (+12.6)

政党別得票率:

政党別得票率の変化:

政党別得票率の推移:

政党別獲得議席数(トータル101議席):

可能な連立政権は、CDU+SPD(74議席)、SPD+緑の党+FDP(52議席)、CDU+緑の党+FDP(48議席、過半数割れ)、SPD+緑の党(45議席、過半数割れ)。

 

「最も重要な問題はなにか?」という質問で、ラインラント・プファルツ州でも難民問題がトップに挙げられています。:

難民問題 59%
学校・教育 22%
交通 14%
環境・エネルギー転換 8%

AfDに投票したのはなぜ?:

党の政治プログラムに賛同したから 17%
他政党に考えるきっかけを与えたかったから 74% 

AfDに投票した人の中で前回の選挙で投票しなかった人は45%にも上ります。

 

ザクセン・アンハルト州

投票率は61.1%(2011年:51.2%)

キリスト教民主同盟(CDU) 29.8% (-2.8)
左翼政党(Linke) 16.3% (-7.3)
社会民主党(SDP) 10.6% (+10.9)
緑の党(Grüne) 5.2% (-2)
ドイツのための選択肢(AfD) 24.2% (+24.2)
自由民主党(FDP) 4.9% (+1) 

政党別得票率:

政党別得票率の変化:

政党別得票率の推移(旧東独なので統計は統一後の1990年から):

政党別獲得議席数(トータル87議席):

可能な連立政権は、CDU+SPD+緑の党(46議席)、CDU+SPD(41議席、過半数割れ)、左翼政党+SPD+緑の党(33議席、過半数割れ)。

 

「最も重要な問題はなにか?」という質問で、ザクセン・アンハルト州でも難民問題がトップに挙げられていますが、職場が2番目、経済状況が4番目に挙げられているのは同州の失業率の高さを反映しているといえます。:

難民問題 54%
職場 28%
学校・教育 14%
経済状況 13%

AfDに投票したのはなぜ?:

党の政治プログラムに賛同したから 16%
他政党に考えるきっかけを与えたかったから 77% 

AfDに投票した人の中で前回の選挙で投票しなかった人は40%にも上ります。