徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:綾辻行人著、『時計館の殺人〈新装改訂版〉上・下』(講談社文庫)~第45回日本推理作家協会賞受賞作

2018年12月19日 | 書評ー小説:作者ア行

『時計館の殺人』(1991、新装改訂版は2012年発行)は館シリーズの第5作で、第45回日本推理作家協会賞を受賞した長編。

「時計館」は古峨精計社前会長の古峨倫典が本シリーズでお馴染の奇矯な建築家中村青司の助けを借りて建てた館で、旧館には数多い時計が保管されています。時計塔のある新館は娘の永遠(とわ)の死後に建て、完成後まもなく古峨倫典は死亡し、養子の由季弥が相続し、実質的な管理は伊波紗世子が請け負っていました。ここには少女の幽霊が出るという噂があり、オカルト雑誌がそこへW**大学超常現象(ミステリー)研究会のメンバーとともに取材に行くことになります。その雑誌の新米編集者は、かつて「十角館」で島田潔と行動を共にした江南孝明で、彼が島田潔こと新進推理作家鹿谷門実にこの企画のことを知らせたため、彼も取材班とは別に時計館を訪ねることになります。最初の訪問では伊波紗世子に断られますが、後で推理作家の推理力を買われ、故古峨倫典が残した不可解な「沈黙の女神」の詩の謎解きを依頼されます。こうして彼が新館で、時計館にまつわる過去と詩の意味を調査している間に、旧館にこもって交霊会をやる予定だった取材班のメンバーたちが霊媒師の光明寺美琴(こと寺井光江)が姿を消したのを皮切りに次々と仮面をかぶった殺人鬼に殺害されて行きます。凶器は時計館にある時計。外へ出るための鍵は光明寺美琴が持っていたため、メンバーたちは逃げることもかなわず戦々恐々としながら時を過ごす羽目になります。最終的な死者数は前4作に比べて多く、犯人も含めて11人という凄まじさ。 もうホラーです。

中村青司の関わった建物なので、当然隠し通路などがあるのですが、仕掛けはそればかりではなく、最後に時計塔が崩れて倒れて行く様は大掛かりな仕掛けでドラマチックです。警察が「犯人」を特定して処理した後、鹿谷門実が「沈黙の女神」の詩の謎解きをする際に真犯人とそのアリバイのトリックを明かすのですが、それは「時計館」という舞台装置ならではのトリックで、驚愕の一言です。館シリーズの館たちはただの舞台ではなく、館自体に意味があるということですね。

それにしても怖かったですね。


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