『オーダーメイド殺人クラブ』の語り手は中2女子・小林アン。バスケ部で、クラスの「派手組」の方に属しているけれど、死や猟奇的なものに惹かれることは誰にも言えない秘密。アンは、わがままでクラス内のヒエラルキーの上位に居る芹香と倖とは部活が一緒で仲がいいはずがちょっとしたことで「外され」てしまうという中学生に典型的な不安定な人間関係に悩み、赤毛のアンが好きで「イケてない」母親に苛立ち、何か特別な【事件】を起こすことで特別になりたいと考えます。そして、学校外で遭遇したきっかけとなる些細な事件からクラスメートである徳川勝利に、彼女の希望に沿って殺してくれるように頼み、二人でその計画を練るという物語です。
アンの方の心情はまだ分からないでもないのですが、徳川君の「私を殺して」と言われて「いいよ」と答えるのはちょっと。。。もちろん彼が承諾しなければ話が始まらないのは分かりますけど、「君、かなり変だよ」と突っ込まずにはいられませんね。
アンの思考やクラスや部活などでの出来事の描写は、生き生きと生々しく、そのあまりの臨場感にすっかり埃をかぶって記憶の引き出しの奥深くに忘れ去られていたような中学生時代の感覚が急に取り出されて目の前に突き出されたようで、その埃っぽさに思わずくしゃみをしそうになるような、何とも言えない苦々しい思春期の青臭さのイタさを感じました(笑)
この作品を主人公と同じ中2の時に読んだらどうだったでしょうか。たぶん途中までは「そうそう」とものすごく共感して(猟奇的なものに惹かれるという趣味は別として)、つまんないリストカットなんかじゃなくて、もっと別のことをしようと思ったかもしれませんが、それだけに結末には納得しなかったのではないかと考えられます。小説の中では数ページで3年以上も経過してしまっても、現実の「今」を生きる身にとってはそれは真似できない時間の経過と成長ですので、やはりこの作品はせめて高校生になってから中学時代を思い出として振り返るようになってからじゃないと納得できるお話ではないのではないでしょうか。