みちくさ茶屋

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映画「ノルウェイの森」感想

2010-12-17 | movie
「ノルウェイの森」を観て来ました。
(ネタばれありです)

以下、ざっくりした感想。

・糸井重里が出てきたのでびっくりしてたら、細野晴臣も出てきてまたびっくり。
・直子役に菊池凛子は、生命力が強すぎ。儚げな感じが欲しかった。
・水原希子(緑)は可愛い。原作のイメージではもっと髪が短いほうがしっくりきたと思う。
・直子と緑のキャスティングが逆でも良かったかも?
・突撃隊がハマり役! すばらしい! なのにあっけなくいなくなってさびしかった。
・レイコさんが歩きタバコとポイ捨てをしていたのがショック。
・マツケンの真っ白なブリーフがまぶしすぎる件。
・ハツミさんがよかった。男2人に問い詰めるシーンも迫力があった。
・体張ったな~、マツケン!
・やっぱり小説の映像化ってむずかしいのね……と思った次第。


あれだけ長くて濃い小説を、2時間の映像でおさめるというのが
そもそも無理な話なんだと思うけど、
状況説明もなしに場面がぽんぽん飛ぶので、
原作を知らない人には「???」な映画だと思う。
原作ファンとしては、監督の解釈に首をひねるところが多々あった。
原作にまったく忠実にしろとは言わないまでも、
「そのオリジナル場面、どうなの?」ってところがたくさんあったし。
「深く愛すること、強く生きること」というのがこの映画の
テーマらしいけど、全体を観た感想として、この映画の言わんとするのは
「愛と生」ではなくて「性と死」であったように思う。


私がいちばん納得いかなかったのが、最後のレイコさんとワタナベのシーン。
レイコさんに「魅力的なしわ」がないことは残念だけど、
まあ、しわのある女優さんを探すのは難しかっただろうからそこはのむ。
原作では、2人だけで直子の「淋しくないお葬式」をするんだけど、
映画ではそこがばっさりカット。いきなり訪ねてきたレイコさんが泣いてるだけ。
そして、その淋しくないお葬式のあと、レイコさんが
「ねえ、ワタナベくん、私とあれやろうよ」ともちかけ、
ワタナベが「僕も同じことを考えていたんです」と同意しての性交渉が原作で、
私はこの場面はすごく大切なところだと思うのに、
映画ではレイコさんが一方的に「お願いがあるの。私を抱いて」と懇願。
ワタナベはそう言われて「ホントにやるんですか?」と乗り気じゃないし。
あれじゃあ、レイコさんがあんまりにもかわいそうな扱い。
シャワーのシーンもいらなかったと思う。
このセックスはふたりにとって「再出発」の通過儀礼だったと思うし、
だからこそ、レイコさんが最後に言った「幸せになりなさい」という言葉が
生きてくると思うんだけど。


あと、これも解釈の違いだと思うけど、
ラストで緑が「今どこにいるの?」と言うシーン。
「僕はどこにいるのだ?」とワタナベが自問自答する重要な場面。
ここで緑が、満足気に笑ってるのが「え?」と思った。
笑うとこだっけ? なにかこう、もっと、うかがうような心境じゃないのかな。


それから、直子の自殺シーンはちょっといただけない。
宙に浮いた足、というえぐさは置いておいても、足が汚なすぎ。
あれをやりたいなら、もっときれいに足を撮ってほしかった。
そうか、私は、直子が美しく撮られていないことが気に入らないのかも。


時間的に仕方ないのかもしれないけど、
緑がお父さんの看病でどれだけ力を使っていたか、
それがほとんど描かれていなくてあっさりしすぎなのと、
緑の突飛な感じがあまり出ていないので、
彼女の魅力も半減してたかなと思う。
なんだか、普通に可愛い女の子って感じだった。


全体のトーン、世界観は好きだった。
ビートルズの「ノルウェイの森」もぴったりマッチしていてよかったと思う。
トラン・アン・ユン監督の作品は、私は「シクロ」しか観ていないけど、
やはり「邦画」というより「アジア映画」っていう感じだった。
(それはそれで良かった。)


それにしても!
映画を観るにあたって、本を読み返してみたんですが、
これを最初に読んだのって二十歳くらいの時だったんです。
あれからさらに20年が経っている……ということに愕然としました。
人がひとり、成人するだけの年月なんだなぁと。
当時つきあっていた彼と夢中で読んで感想を言い合ったりしていたので、
その人のこともすごく思い出しました。
彼もきっと、この映画を観るだろうなと思います。
私のことも、少しは思い出してくれるかなぁと、
ちょっとあまずっぱい気持ちになったりも。
そして、20年たってもぜんぜん古臭くなく、面白く読ませてくれる村上春樹って
やっぱりすごい!とあらためて思いました。


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