ノンフィクション作家の黒岩比佐子さんが17日にお亡くなりになりました。
今年の6月に全く偶然ともいえる感じで展示会でお会いしてから、
私には忘れられない人になりました。
その著作には魅せられっぱなしです。
評伝とはこう書くのか、ここまで徹底的に調べつくして、こう表現するのか、と。
完璧な年表、索引と、その参考文献の膨大さに圧倒されます。
お会いしたとき、村井弦斎の評伝を書かれたときのことを話してくださった。
「悪意にみちた評伝を読んで、これは違う、とおもった。
だからきちんとしたものを書きたい。しかし間違った事は書けない。
あとに残るから、という気持ちで出来る限り調べたいとおもった。」
この言葉で彼女のライターとしての矜持とすごい仕事ぶりがうかがえます。
彼女のブログで古書の解説を読んでその博識に驚かされ、どれだけ勉強になったことか。
お会いしたときはすでに病に冒されていたけれど、とてもお元気そうに見えました。
数日後、会場で一緒に撮った写真に自筆の手紙をつけて郵送してきてくださいました。
こんな丁寧な対応をしてくださる作家のかたがいらっしゃるのかと驚きました。
今その写真を見ていたら、涙がでてきて。。。
10月に新刊『パンとペン』刊行記念の講演会があり、行けばよかったととても後悔していました。
これは堺利彦の評伝ですが、各評論家から絶賛されています。
私も今読んでいます。
毎日彼女のブログを開いて一喜一憂していたのですが、あまりの早い逝去に言葉もありません。
7月にブログにこう書いておられました。
「私にあと10年という時間が与えられるなら、あと4、5冊は本を書けると思うのだが……。
10年が贅沢だというならあと5年でもいい。少なくともあと2冊は書きたい。
その構想はすでに、頭の中ではでき上がっている。」
どんなに無念であったでしょう。
書いていただきたかった。
ご冥福をお祈りいたします。