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『ミシェル・ルグラン自伝 ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモーロウ』その1

2016-09-19 07:49:00 | ノンジャンル
 ‘13年に刊行された『ミシェル・ルグラン自伝 ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモーロウ』を読みました。
 冒頭の言葉をそのまま引用させていただくと、「親愛なる日本の友人たちへ 皆さまが手に取られた本は、時系列に沿った自伝ではなく、人生における色彩のように、失われたり散り散りになったり、楽しかったり悲しかったりした、さまざまな時を一人称で語ったものです。私の愛情の証として、この本を受け取ってください。日本は私の心のなかの大切な国なのです。 ミシェル・ルグラン」となっています。
 彼は’32年2月24日生まれ。以下、本から引用させていただくと、
・「ピアノに早熟な私のために母はピアノ教師をつける決心をした。私は5歳になっていた。最初の先生、マドモワゼル・ピトーは、(中略)“オールド・ミス”を絵に描いたような人だった。(中略)彼女は運指法を厳しく指導し、ちょっとしたミス・タッチや指使いの間違いを見逃さず、そのたびに物差で指を叩いた。しかし私がより高度な指導を望んでいることに気づいた彼女は、次の先生を紹介してくれた。この二番目のマドモワゼルがさらに紹介してくれたのがジュヌビエーヴ・ジョワだ。マドモワゼル・ジョワに会うなり私は夢中になった。(中略)彼女のレッスンでは一瞬たりとも気がぬけなかった。そのおかげで私の進歩は目ざましかった。」
・「ジュヌビエーヴは、彼女が主任復習教師(レペリティリス)を務めていたリュセット・デカーヴのもとに私を連れていった」
・「そのリュセットが早々と私にあることを薦めた。『わたしは今度コンセルヴァトワールのソルフェージュの教授に任命されました。あなたはわたしの授業に出席するといいわ』私はもちろん有頂天になったが、入学試験に受かることが先決だった。この場合は聴音の試験だ」
・「わたしは(中略)コンセルヴァトワール(中略)への入学を許された」
・「この時に至ってコンサート・ピアニストという職業にあまり魅力を感じなくなっていた。すでに和声初級を担当していたアンリ・シャランの作曲法クラスに入っていたためでもあった。(中略)シャランには強烈な発音のクセがあったが、そんなことは気にもならない類まれな才能があった。それは美しいものに気づかさせることだ。(中略)私の音楽を支配する和声の並列はシャランの教育から直接受け継いだものである」
・「彼のクラスで私は四人の気の合う仲間を見つけた。ジャン=ミシェル・ドゥファイ、ロジェ・ブトリ、アラン・ベルノーとアラン・ヴェベール-------彼らはコンセルヴァトワール時代からの生涯の盟友である」
・「奇妙なことに、コンセルヴァトワールの教授たちが教えてくれた知識は、もともと私自身が持っていたもののように思えることがあった。彼らの役目は、あたかも写真を現像するようにそれを浮かび上がらせることだったのかもしれない」
・「コンセルヴァトワールでの四年目に入った頃、アンリ・シャランが私を脇に呼んで言った。『ルグラン君、きみはナディア・ブーランジェのクラスに入るべきだと思う。彼女にきみを紹介しよう』彼女はコンセルヴァトワールが誇る教師として絶大な尊敬を集めていて、彼女の意見には絶対的権威があった(中略)彼女はガブリエル・フォーレ、クロード・ドビュッシー、モーリス・ラヴェルを個人的に知っていたし、ストラヴィンスキーとは深い親交があった」
・「ナディアは(中略)厳格だったが冷たい人ではなく、人情味があった」「彼女の授業を受けて二年が経つと、マドモワゼル・ブーランジェは私の教育を本格的に引き受ける決心をした。(中略)『ミシェル、あなたはまだまだ勉強が足りませんね。(中略)次の学期から、週三回、朝八時に学校にいらっしゃい。あなたは一人っきりで一時間授業を受けられるのですよ』」
・「一つの車両の上からヤンキーの兵隊が私に微笑みかけた。私は彼に喜びの叫びを返した。彼が私に話しかけようとしたその瞬間、閃光とともに彼の頭が飛んだ。血が間欠泉のように噴きあげ、首のない死体が崩れおちた。そのわずか二秒後にドイツの大砲が爆発する音が響いた。それは恐怖の光景だったが、不思議なことに私はそれを悲劇的だとは思わなかった。私にとって、それはまず奇妙な出来事であり、生と死の遊戯のひとつであり、自然の成り行きとして受けとめるしかなかった。実際、戦争は私たちを最悪なことに慣れさせてしまった」
・「私たちは四、五人のアメリカ陸軍兵士とすぐに仲良くなった。(中略)クラシックの曲を弾いてほしいと頼まれ、とくにショパンの〈別れの曲 Tristesse〉をリクエストされた。次はモットが自分の番だと言って私にブルースを弾いてくれた。(中略)数分の間に私のなかで新しい景色が開けてきた」(明日に続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/