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倉橋由美子『酔郷譚』

2010-03-06 14:34:00 | ノンジャンル
 宮田珠己さんが本「スットコランド日記」の中で言及していた、倉橋由美子さんの'08年作品「酔郷譚」を読みました。祖父がオーナーのバーでバーテンダーを勤める九鬼さんが作る魔法のカクテルによって、そこの常連客であるオーナーの孫・慧君が様々な幻想の世界を訪ねるという内容の短編を集めた本です。
 「桜花変化」は、九鬼さんのバーを訪れた客たちとともに吉野の桜を見に行く話。
 「広寒宮の一夜」は、九鬼さんに死者の住む月の世界に連れていかれ、幼い頃に死に別れた母に会い、愛し合う話。
 「酔郷探訪」は、いなくなった九鬼さんを探して女性バーテンダーの真希さんと知合い、彼女と舟を浮かべて酔郷に遊ぶ話。
 「回廊の鬼」は、真希さんがいたバーの入っている建物を買うと、しばらくして真希さんに招かれて長い回廊の果ての神殿に至り、そこで九鬼さんと真希さんと再会して現世に戻って来る話。
 「黒い雨の夜」は、九鬼さんのカクテルのせいで闇になってしまい、九鬼さんと真希さんの手で盲目の女にされ、好色な一休の子を宿して出産しますが、その直後に夢から覚める話。
 「春水桃花源」は、真希さんのカクテルによって、春の景色の中で若い女性に出会い、ともに川を下っていく話。
 「玉中交歓」は、真希さんと訪れた湖上のホテルの近くで、美女が中にいる玉を見つけ、その中に入って交歓し、美女が子供を産んでしまったので玉を湖に捨てる話です。
 どれも幻想的な風景が魅力的に描かれていて楽しめました。宮田さんが言及していたセックス描写に関しては、それほど過激なものではなく、非常に上品なものだったと思います。桃源郷の世界に遊んでみたい方にはオススメです。