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黒田信一『ルチャリブレがゆく』

2010-03-18 13:11:00 | ノンジャンル
 高野秀行さんが本「放っておいても明日は来る」の中で高野さんと対談していた、黒田信一さんの'96年の作品「ルチャリブレがゆく」を読みました。
 札幌の役所で戸籍係をしているオレは、ある日中学時代の同級生で今は菓子卸しの営業をしているカオルから電話を受けます。彼は青森で正義と愛のために戦う覆面レスラー・オソマキ仮面のポスターを見たと言い、それは正義と愛のためにおそまきながら戦うと中学時代に予告していた猪熊だと思うので一緒に見に行かないかというものでした。オレは家族を置いて仕事も休み青森に出かけますが、カオルには会えず、またオソマキ仮面も既に別に地に行ってしまった後だったのですが、商社の仕事でタイにいた時オソマキ仮面を見て、今では彼の弟子になるため商社も辞めてきたという大瓦と会い、以後行動をともにすることになります。そしてオソマキ仮面を追ううちに彼らは、ハリマオのモデルになった老人や、元暴走族だが現在は絶世の美女のオカマ・鉄太郎や、オソマキ仮面のスポンサーとして3億円を出すという3億円事件の犯人である老人、公道を堂々と戦車で走る現役自衛隊員、テレサ・テンに対抗して中国でデビューさせられた周温来の孫娘、成田闘争に参加しているゲバラの息子などに出会い、ラストでは上海に全員が揃ってオレもオソマキ仮面に会うことができますが、それが猪熊であるかどうかは結局分かりません。そして皆がハッピーになって小説は終わります。
 ストーリーの速さで荒唐無稽な状況を乗り切っているという感じで、次々に展開する状況の不自然さはぬぐいきれず、人物の造形もヤング・アダルト小説に見られるような表層的で不自然なものでした。荒唐無稽な小説なら何でも好きという方にはオススメかも。