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川上未映子『乳と卵』

2010-03-10 16:28:00 | ノンジャンル
 川上未映子さんの'08年作品「乳と卵」を読みました。
 離婚して現在は場末のホステスをして生計を立てている姉の巻子が、銀座で豊胸手術を受けるために娘の緑子と上京して来るのを東京駅まで迎えに行きます。緑子は最近巻子と口を聞かず、会話はすべて筆談で行っていました。生理に対し嫌悪感を持つ緑子。自分のアパートに二人を連れてきた後、緑子を残して巻子と銭湯に行きますが、巻子は裸の胸を見せようとしません。夕食は近所の中華料理屋に行きますが、夜寝ている間に自分に生理が始まり、下着とシーツを汚します。翌日巻子は、友人に会った後、銀座のクリニックに寄って夕方に帰ると言って出ますが、深夜になって酔って帰ってきて、別れた元夫に十数年ぶりに会ってきたと言います。緑子は突然声を上げて、自分がこんなにお母さんのことを心配しているのに豊胸手術など受けるのかと言い出し、卵を次々に自分の頭にぶつけ始めます。それを見た巻子も卵を自分の頭にぶつけ出し、二人は割れた卵にまみれます。翌日二人は故郷に帰っていくのでした。
 短編「あなたたちの恋愛は瀕死」は、週末ごとに新宿のデパートの化粧品売り場と紀伊国屋書店に行って、出合い頭のセックスに憧れる女性が、ティッシュ配りの男に声をかけて、衝動的な暴力に会うという話です。
 やはり独特の文体が魅力的でした。例えば、「そんなことは仕方のないことではあるけれども、まあしっかりとした会社に勤めていればそれが安心かといわれればそうやとも一概には云えぬのも最近の事実、色んなこと、わかって、わかってるつもりではいるのやけれども、しかし考えれば考えるだけの億劫と、重くのしかかるものが大阪、母子、を思うと、その字づらからその音からその方角から心象から、いつもわたしの背後に向かって一切の音のない、のっぺりとした均一の夜のようにやって来ては拭いきれぬしんどさが、肺や目をじっとりと濡らしてゆく思い。」といった感じです。たどたどしい(?)語り口が逆に迫力を生んでいるようにも思いました。文句無しにオススメです。