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佐藤多佳子『九月の雨』

2007-03-12 16:44:50 | ノンジャンル
 「一瞬の風になれ」がとっても良かった佐藤多佳子さんの作品をしばらく読んでいこうと思います。まず、読んだのは'93年に書かれた「九月の雨」です。「九月の雨」と「ホワイト・ピアノ」の中編2作からなる本です。
 「九月の雨」は、ジャズピアニストの母と、交通事故で左手を失い片手が義手の16才の僕・広一を中心に話が進みます。サクソフォーン奏者だった父は僕が左手を失った事故で即死でした。母は新しい恋人を連れて来るので、僕に家にいてくれと言います。そして憂鬱な9月の雨の日に「九月の雨」を憂鬱そうに弾く母。
 夏休み、母の友人の別荘で過ごしますが、二人で自然の中で暮らすのは素晴らしい体験です。別荘のオーナーの女性と種田という男がやってきて、僕は種田の相手をさせられます。
 3年前の夏、ある姉弟・姉の佳奈と弟の進と仲良くなり、きれいな姉とは「サマー・タイム」を連弾しました。自転車の練習を彼女としましたが、全然うまくいかず、僕が止めたいと言うと、彼女はいくじなしと言い、それっきり会わなくなります。
 種田は左手用の練習曲の楽譜を持って来ます。母が右手で弾きますが、つっかえます。母が演奏で京都へ行った後、種田が訪ねて来て、一緒に京都へ演奏を聞きに行こうと言います。僕は自転車に乗る練習を彼に手伝わせ、雨の中、乗れるようになります。種田は京都へ旅立ち、僕は左手の練習曲を右手で練習し始めます。
 「ホワイト・ピアノ」は、姉の佳奈と弟の進が二人とも仲が良かった広一が引っ越してしまいます。彼から手紙が来ますが、あまりのそっけない内容に佳奈は腹が立ちます。ピアノの修理業者の令嬢で佳奈の友達の亜紀は、佳奈が童話の「ホワイト・ピアノ」のお姫さまに似ていると言い、雪と氷でできたホワイト・ピアノに似たピアノがある、と見せてくれます。そのピアノは若い調律師の千田の初恋の人に買われてしまうのですが、古くて音が悪いという理由で翌日返品されます。返されたピアノは大切に扱ってあげたいと千田が買い取り、千田のものを大切にする心に佳奈は涙します。そして、広一の手紙の文を思い出し、彼の気持ちを思いやるのでした。
 と、あらすじはこうしたものですが、私が特に気に入ったのは、「ホワイト・ピアノ」で、会話がとても生き生きとしていて、登場人物の元気さが伝わって来て、読んでて元気になりました。話はとてもシンプルなのですが、それだけに無駄な文章が一切なく、活字が大きく行間も大きいこともあって、とても読みやすかったです。まだ読んでない方には、オススメです。