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前田司郎『恋愛の解体と北区の滅亡』

2007-03-05 16:25:16 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の中で、青山ブックセンターHMV渋谷店の店員さんが純文学系の小説として推薦していた前田司郎さんの「恋愛の解体と北区の滅亡」を読みました。題名の長篇と「ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ」という題の短編からなっています。
 長篇は、宇宙人が来襲し、3年後に地球を植民地にすると発表してからの2年後の東京が舞台です。ある教師が帰りのコンビニのレジ前の行列で横入りした男に頭に来て、最終的に殺そうと考えます。男は「ゴールデン・ジム」という会員カードを持ったムキムキマンだったので、教師はゴールデンと名付けます。深夜の五反田で、その男を殺すことを考えながら徘徊するうち、様々なことを自問自答して行きつく先はSMクラブでした。そこの店長と長話をし、店のお姉さんとお互い無理にプレーするのがばかばかしくなって、世間話をしながらテレビを見ると、北区で宇宙人殺害事件が起こった見返りに、UFOが北区をレーザーで攻撃しているところを映していた、という話。
 短編は、スタイリストの彼が車が渋滞している時に便意を催し、必死に我慢するという体験をしてから、臭いも湿り気もない新しい大便ファナモをするようになった、という話。
 長篇の方は、ほとんどが主人公の心の中での会話で、一人ボケ一人ツッコミの激しさに圧倒され、このまま行ったらすごい小説になるな、と思いながらよんでいたら、後半は息切れしたのか、文章のパワーが落ちて、普通の小説のリズムになったのが悔やまれました。ただ独白でこれだけ激しくしゃべりまくる小説というのは珍しく、読む価値は十分あると思います。著者は演劇もやってらっしゃるということなので、この激しい一人ボケ一人ツッコミは演劇から来ているんだと思いました。
 短編は、おまけのようなもので、暇つぶしにはどうぞ、という感じです。