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『筑摩書房 それからの四十年』永江 朗・著(筑摩選書)

2011-04-13 06:38:19 | 
本は『筑摩書房 それからの四十年』。



創業70年になる筑摩書房の社史。
この出版社は昔『筑摩書房の三十年』という社史を出しているので、その40年後の続編となる。
筑摩は創業者の古田晁と臼井吉見が、「いい本を出したい」という一念でいわゆる「良書」を出し続けてきたが、その後の世の中の変化もあり、1978年に会社更生法を申請している。

この本は、その倒産に大きなスポットを当て、社員の動き、代表的な本の誕生秘話を語りながら現在は自社ビルを持つまでに復活した会社の歴史を綴っている。
社史と言えば、淡々と事象のみが綴られているイメージがあるが、この本は部外者の僕が読んでも面白い。
社史を「お金を払っても読みたい」と思わせる実績が筑摩にはあるが、その期待を裏切らない出来栄え。さすが。

著者は外部のライターなので、あまり遠慮せず、倒産前の会社ががたがたになっている状況も、それに至る経営陣の不甲斐なさも書いているし、スポットを浴びがちな編集だけじゃなく、どんぶりだった営業やゴミ箱のようだった倉庫の状況と、そこからの再生も書かれていて、筑摩復活の理由が良く分かった。

あと、筑摩が出してきた多くのベストセラーについてもそれぞれページが割かれているんだけど、狙って取ったベストセラーもあれば、ひょんなきっかけから生まれたものもあり、自分が読んだ本も多いので、そのエピソードひとつひとつが面白い。
中でも、高校生の時に読んですごく印象に残っている「高校生のための文章読本」、ずっと地味な存在で売り上げも低迷していた教科書編集部が無名の工業高校の先生達を起用して作った本なんだけれど、この本が生み出された過程がよく分かった。
やっぱりプロジェクトXじゃないけど、成功の鍵はひらめきとそれを実行する人の勇気だね。

という訳で、本好きには楽しめる一冊。
社史を読み物として販売しちゃうとは出版社ならではだし、それがちゃんと面白いとはさすが筑摩だと思いました。

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